妄想小説Walk2 エピソード34

知念さんがドアを開けた瞬間と、たまたま通りかかった瞬間が同じだったのか、そこにはトレーニングウエア姿の山田さんがいた。

 

「あれっまゆみ・・・さん!知念も!」

「えっ」

 

山田さんが知念さんを”知念”と呼んでいる。

ってことは、山田さん、知念さんと知り合いなの?

 

・・・てか、今、私の事呼び捨てしそうになって慌てて「さん」をつけた?(笑)

だとしたら、すごく可愛い(笑)

 

 

「涼介!来てたんだ!」

知念さんは嬉しそうにそう言うと、山田さんに寄り添う。

「涼介!?」

そんな知念さんが山田さんを「涼介」と呼んでいる事に驚いて、思わず叫んでしまった私。

 

それに知念さんは動揺することもなく、堂々と

「うん。涼介は毎日来てくれてるんだよ。ね?」

と、ものすごく可愛らしいお顔で山田さんを見る。

 

山田さんも笑顔で

「うん」

とうなずく。

 

「えっすごい!」

山田さんが毎日ジムに通っていることに私が驚いていると。

山田さんはものすごく優しい顔を私に向けて言った。

 

「俺はいつでもまゆみさんを守らなきゃいけないでしょ?だから鍛えとかないとね」

「えっ・・・」

「俺のとこ、いつ来てもいいよ。俺がずっと守るから」

「!!」

「・・・って、何言ってんだ俺!」

急に照れくさくなったのか、山田さんはそう言ってはにかむ。

 

 

 

・・・驚いた・・・

突然。あんなにも美しいお顔でそんな事を言われるなんて。

不覚にも、ドキッとしてしまった・・・

山田さんは、有岡くんとは全然違うタイプだけど、でも、やっぱり素敵な人だ・・・

 

 

 

私がはにかんでいる山田さんに見とれてしまっていたら。

「うわ!かっこいい!さすが山!!」

いつ来たのか、中島さんがそう言って目をキラキラさせていた。

 

え。山???

中島さんも山田さんの知り合い?

 

私が本日何度目かの戸惑いを見せていたら、それに気付いたのか、山田さんが

「ゆーてぃとはここで会ってさ。よく一緒にトレーニングしてるんだ」

と説明してくれた。

「そうなんだ!」

 

山田さんは、知念さんと中島さんと、ここで出会って仲良くなったんだ!

「知念」「ゆーてぃ」と呼ぶほどに!!

 

 

 

 

 

私一人が最大限に驚いている中。

山田さん、知念さん、中島さんは3人で何やら楽しそうに談笑している。

 

 

・・・イケメンの談笑。

とても良い眺めですな・・・・

 

 

 

私がそんな風に微笑ましく思って3人を見ていたら。

「ねえ。何で山じゃないの?」

急に中島さんがこちらへやってきてそんな事を聞いてきた。

「え?」

「山の方が絶対イケメンじゃん」

戸惑う私に向かって、まっすぐにそう言う中島さん。

 

前から何度も有岡くんじゃなく、山田さんにしておけ、と言われ続けているけれど、今回もきっとそういうお話なのだろう。

 

「まぁ・・・そうですけど・・・」

「イケメンだし男らしいし。何の不満があるっていうの」

「いやっ不満とか、そんな!恐れ多いですよ!」

「そうでしょ?」

私の言葉に、中島さんは「それみたことか」なお顔で私を見下ろす。

それに私は圧倒されつつも「はい」とうなずく。

 

すると中島さんは

「俺なら絶対、山にする」

と、なぜか胸を張った。

 

「イケメンは正義ですもんね・・・」

「は?何言ってんの?」

思わずつぶやいてしまった私の言葉に、中島さんは真面目な顔でそう言う。

「す、すみません・・・・」

私は慌てて謝る。

 

すみません、ふざけすぎました・・・

 

 

「だって彼氏って、あれでしょ?」

小さくなっている私に、中島さんはちょうど今、到着した有岡くんを目ざとく見つけてそう言う。

 

有岡くんだ♪

 

有岡くんの姿を見つけて、ちょっと嬉しくなりつつも私は中島さんに

「あ、はい、そうです」

とうなずいた。

 

 

「・・・」

 

 

中島さんは何も言わず、有岡くんの事をじっと見つめている。

「・・・?」

何だろう?と思っていると。

 

「山だよ」

中島さんは確信を得たのか、そう言うと

「山の方がイケメン」

とバッサリ切り裂いた。

 

「まぁ・・・そうですけど・・・」

「ゆーてぃ。そのぐらいにしといてあげなよ」

困り果てた私に見かねたのか、知念さんがそう言って中島さんを止めてくれる。

 

「えーだって知念もそう思わない?」

「確かに顔だと大貴に勝ち目はないよ」

 

はっきり言いますね(笑)

 

「だろ?」

知念さんの言葉に中島さんはそう言ってドヤ顔(笑)

 

「でも、大貴は優しいし、まゆみさんは大貴が大好きだよ」

「えっ」

 

さらっと知念師匠はおっしゃるけど、改めてそんな風に言われると何だか恥ずかしい・・・

 

 

 

「何だよ知念!お前もそっち側の人間か!」

今まで黙って成り行きを見ていた山田さんが急にそんな事を言いだす。

「山!俺は山を応援する!」

それに中島さんが全力で乗っかる。

「ゆーてぃ、ありがとう!」

「一緒にトレーニングしようぜ!」

「おう!」

山田さんと中島さん熱血風にそんなやりとりを交わす。

 

そして。

「ぜってー負けねーかんな!」

山田さんがそんな捨て台詞をはくと、中島さんも

「山は負けねーぞ!!」

と言いながら、2人で走り去っていった。

 

 

 

・・・微笑ましい(笑)

 

 

 

「まああれですよ。涼介もゆーてぃもああ言ってるけど、まゆみさんはまゆみさんだから」

今まで山田さんと中島さんのやりとりを笑顔で見ていた知念さんが、その笑顔を私に向けてそう言う。

「ありがとうごさいます」

それに私は、何だか3人がいい関係で、微笑ましい気持ちになりながらうなずいた。

 

 

 

そんな時。

「知念!」

受付を終えた有岡くんがそう言って駆け寄ってきて

「どうした?何かあった?」

と言った。

少し心配そうな顔をしている。

 

急な知念さんからの呼び出しだったから、何かあったのかと心配になってるんだろうな。

 

優しい・・・好き・・・

 

「ここ、僕のお父さんのジムだからさ」

「うんわかってるよ」

「大貴、最近全然通ってくれてないじゃん」

知念さんはそう言って口を尖らす。

可愛いに決まってる。

 

「あーそうだなーごめんなー!それで連絡くれたの?」

「そうだよ」

「そっかー!ごめんなー知念!これからはなるべく2人で通うようにするわ!」

有岡くんはほっとしたようで、明るくそう言うと、「な?」と私を見る。

「うん!」

私は思わず笑顔になってそう言う。

 

”2人で通う”って言ってくれたことがすごく嬉しかった。

 

 

 

「まゆみはもうトレーニングしたの?」

「してないけど、トレーニングウエアを持ってきてないから今日は出来ないんだよね」

「俺も持ってねーや」

「2人ともなにやってんだよ!」

有岡くんと私の言葉に知念さんはわざとぷんすか顔をして言う。

 

「・・・ごめんなさい」

それに有岡くんと私はそう言って頭を下げる。

「次は気を付けてね!」

「はい・・・」

知念さんのぷんすか顔は可愛らしくて本当癒される。

私はそんな事を思いながらうなずいた。

 

「今日はもう2人で仲良く帰ればいいよ!じゃあね!」

知念さんはそう言うと、山田さんと中島さんが去っていった方へと去っていった。

有岡くんと私はそれに手を振ると、同時に出口に向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

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