妄想小説Walk第37話
「知念!」
有岡くんが知念さんに声をかけ
「薮さん、お疲れ様です」
私が薮さんに声をかけた。
「え!?大貴!?」
「え!?まゆみさん!?」
同じように驚く知念さんと薮さん。
兄弟みたい(笑)
「久しぶりだなー知念!」
嬉しそうに有岡くんが言う。
それに、笑顔ながらも少しほっぺを膨らませ
「うん、大貴、何で最近連絡してくれないの?」
という知念さん。
何だ何だ!?
可愛すぎる!!!!!
「ごめんごめん!最近ちょっとバタバタしてたから!」
「ご飯連れてってよ」
「もちろんだよ♪ 」
有岡くんと知念さんのやりとり・・・
なんて可愛いんでしょう・・・!!!!
有岡くんは知念さんの事が大好きなんだな♪
私もあんな可愛い顔されたらメロメロになっちゃいそうだけど(笑)
「まゆみさん、偶然だね」
薮さんが言う。
「本当、すごい偶然でびっくりしました!お友達とお食事ですか?」
「弟とその会社の子かな。彼女たちとも偶然会ってご飯食べることになったんだよね。今日はすごい偶然が続くな」
「本当ですね(笑) 」
まさか本当に兄弟だとは(笑)
「彼はまゆみさんの会社の子?」
有岡くんを指してそういう薮さん。
「あ、はい。有岡といいます」
「そうだよね、何か見たことあると思った 」
「あると思います(笑) 八乙女くんとも仲良しですし(笑) 」
「光とも仲いいのかー♪ 侑李とも仲良しだなー(笑) 」
「高校の先輩後輩らしいですよ 」
「そうなんだ!」
薮さんは終始笑顔でお話されていたが、ふと、
「まゆみさん、大丈夫?」
と伊野尾さんの方に目を向ける。
伊野尾さんは1人で暇そうにしている。
やばいな。戻らなきゃ。
「あ、そろそろ戻らないと・・・」
私はそう言いつつ有岡くんに目を向ける。
有岡くんは知念さんと楽しそうにお話している。
どうしよう。有岡くんを置いて戻るのもどうなんだろう・・・
そんなことを考えていると薮さんが
「彼の事は気にしなくていいよ(笑) 」
と笑顔。
察してくださったんだろうか!
すごい。さすが薮さん!
「ありがとうございます!ではお言葉に甘えて・・・失礼します」
「はーい」
私は薮さんに頭を下げると伊野尾さんの元に戻った。
「伊野尾さん、お待たせしてすみません!有岡くん、ものすごく話が盛り上がってるみたいで 」
とりあえず、お詫び。
「そうみたいだね(笑) 」
「置いてきちゃいました(笑) 」
「いいよ大ちゃんはほっとけば(笑) 」
伊野尾さんはそう言って笑顔になる。
・・・よかった。笑ってくれた。
「薮さんと知念さん、兄弟なんですって!薮さん以外は同じ会社の方みたいで、偶然会ってご飯食べることになったそうですよ」
「ふうん・・・」
・・・やばい。
また伊野尾さんから笑顔が消えかけてる。
「すごくないですか?今日めっちゃ偶然が重なってません?」
私は慌ててフォロー・・・してるつもり。
「うん、すごいね」
「でしょ?今日は本当すごい!」
無駄にテンションあげてしゃべってしまう。
が。
「・・・。」
伊野尾さんは急に黙り込んでしまった。
・・・どうしよう。
有岡くん。助けて。
私はついつい有岡くんの方を見てしまう。
でも有岡くんは相変わらず楽しそうに談笑してる。
・・・邪魔出来ないな・・・
ここは1人でどうにか切り抜けなくちゃ。
さて。どうしたもんか・・・。
「あいつ、超イケメンの彼氏がいるはずなのに、男と飯食ってちゃダメだよね」
ふと。
伊野尾さんがつぶやく。
何だかいつもの伊野尾さんとは違うトーン。
これが素のトーンなんだろうか?
もしかしたら本当の伊野尾さんはこういう人なのかな、と思わせる何かがある、そんなトーンだ。
「えっ超イケメンの彼氏って・・・もしかして伊野尾さん・・・?」
私はなぜか恐る恐る聞いてしまう。
それに伊野尾さんは
「俺じゃないよ。あやかの会社の背の高いイケメン」
と、どこか寂しそうな目をして言った。
「えっ」
てっきり伊野尾さんとあやかさんは付き合ってるんだと思ってた。
「いや、でも知念さん同じ会社の人みたいだし、偶然ご飯食べることになったって言ってたし。あ、あやかさんさっき友達の付き添いだって言ってたじゃないですか!」
今の伊野尾さん、何だかすごく儚く見えてしまって、どうにかしたくなってなぜだか慌てて弁解してしまう私。
てか、友達の付き添いってどういう意味だったんだろう・・・?
いや、今はそれはいいか。
「・・・」
黙り込んでしまう伊野尾さん。
怒ってるような顔してるけど、やっぱりその奥に寂しさが隠れてる。
・・・ように見える。
これはきっと、気のせいじゃないはず。
伊野尾さんの視線の先にはあやかさんの席。
やっぱり伊野尾さんって、あやかさんの事が好きなんだと思う。
私はふいに有岡くんの姿を探す。
有岡くんはいつのまにかその席の全員と談笑していた。
「有岡くんって誰とでも仲良くなれるんですよね」
「ん?・・・ああ、そうだね」
「本当すごいな・・・」
そういうとこ、尊敬する。
有岡くんがいるだけでその場が明るくなる。
本当、太陽みたいな人。
・・・って、私、伊野尾さんに何言ってんだろ。
伊野尾さんに笑顔になってほしいはずなのに。
お願いです・・・
有岡くん、そろそろ帰ってきて下さい・・・!
「ただいまー 」
私の願いが通じたのか、有岡くんの声が!
よかった!
「おかえり!何か盛り上がってたね!」
私はものすごくホッとしてやたらと笑顔でそう言ってしまう。
それに有岡くんは
「うん、楽しかった!」
と笑顔。
・・・可愛い♪
「いのちゃんなんでそんな怖い顔してんの?」
伊野尾さんの顔を見て言う有岡くん。
は。そうだ。伊野尾さん!!! ←
「怖い顔なんてしてねーよ」
「してるよ!何イライラしてんだよ」
怖い顔をして反論する伊野尾さんに有岡くんはそう言う。
うん。こういうのは有岡くんにしか言えない。
帰って来てくれてよかった。
「・・・あいつ見てたら何か腹立つんだよ」
少しの間黙り込んだ後、伊野尾さんはそうつぶやいた。
・・・それって・・・
「彼氏がいるのに他の男の人と食事してるからですか・・・?」
私は恐る恐る聞いてみる。
しかしそれに答えてくれたのは伊野尾さんではなく、有岡くんだった。
「え?女の子2人とも彼氏いないって言ってたよ?」
もうそんな話してきたのΣ(゚Д゚)
すごいな有岡くん・・・
「え!?あやかにはいるでしょ?」
ものすごく驚いている伊野尾さん。
それに有岡くんは冷静に
「いないって言ってたよ」
という。
「はぁ!?あのイケメン高身長野郎はどうしたんだよ?」
「知らねーよ、自分で聞けよ」
「・・・」
「・・・いのちゃん?」
「帰る」
伊野尾さんはそういうと立ち上がり店を出ていく。
伊野尾さんのあまりの迫力に、有岡くんと私はそれを呆然と見送ることしか出来なかった。