妄想小説Walk2 エピソード37
散乱したビールとビールジョッキの片付けも終わり、席に戻って談笑していると。
「先ほどはすみませんでした・・・」
とても落ち込んだ様子のひろちゃんがビール3杯を持って現れ、そう言った。
「そんなに気にすることじゃないって!誰だって失敗はあるんだから!」
そんなひろちゃんを有岡くんが明るく励ます。
しかし、どうしても落ち込んでしまうのか、ひろちゃんは
「大ちゃん、ありがとう」
と力なく笑った。
そっかー。
そう簡単には切り替えられないか。
それもしょうがないよね。
そんな日もある!
うんうん!
そんな風に私が心の中でひろちゃんを励ましていたら。
「・・・どした?何かあった?」
ひろちゃんの様子に何かを感じたのか、髙木くんがそう聞いていた。
「・・・!」
それにひろちゃんは驚いた顔を見せたが、すぐに何かを決意したように口を開く。
「あの・・・さっきの話・・・」
「さっきの話?」
「髙木先ぱい、ちよこさんと・・・」
「ああ・・・あれ、聞いてたんだ。うん。別れたよ」
ひろちゃんの言葉に、相変わらずサラッと髙木くんがそう言うと、ひろちゃんは今にも泣きだしそうな顔をして髙木くんを見つめている。
「何でひろちゃんがそんな顔すんの!(笑)」
そんなひろちゃんの顔を見て、髙木くんが笑いながらそう言うと、ひろちゃんは、一生懸命に、言葉をひねり出すようにして言った。
「だって・・・髙木先ぱい・・・絶対寂しいだろうなって・・・」
「!」
ひろちゃんの言葉に、髙木くんは一瞬驚いたような顔をしていたが、すぐに何とも言えない優しい笑顔と、めまいがしそうなほどのイケボで
「ありがとな」
と言う。
「・・・!」
それを合図に、ひろちゃんの涙腺は崩壊した。
「髙木先ぱい!私、いつでもここにいますから!髙木先ぱいが寂しい時はいつでも来てください!私、髙木先ぱいのこと、待ってますから!」
「じゃあ毎日来ちゃおうかな(笑)」
泣きながら訴えるひろちゃんに、髙木くんは笑いながらそう言う。
それにひろちゃんは食い気味に
「来てください!本当に待ってます!髙木先ぱいは、1人じゃないです!」
と言う。
「ありがとう」
髙木くんはひろちゃんの目をまっすぐ見てそう言うと
「もう泣くな。俺は大丈夫だから」
先ほどのイケボを超えてくる最上級のイケボでそう言って、ひろちゃんの頭をポンポンっとした。
「だがぎぜんばーい!!」
それをきっかけにひろちゃん号泣(笑)
「あーあ(笑) もっと泣かせちゃったよ(笑)」
その姿に、八乙女くんは笑いながら言う。
「ひろちゃん、とりあえず座ろうか」
とりあえず落ち着いてもらおうと思い、私はそう促してみる。
「そうだね!座って落ち着こう!」
すると、有岡くんがそれに乗っかってきたので、私はひろちゃんを有岡くんにお任せして立ち上がる。
ひろちゃんのおしぼりとお水を取りに行こう、と思ったのだ。
「どこ行くの?」
それに有岡くんが素早く反応(笑)
「おしぼりとお水を取ってこようと思っただけだよ(笑)」
「!」
私は有岡くんに言ったのだが、ひろちゃんの方が反応してしまって立ち上がろうとしてしまう。
「ひろちゃん、いいって!まゆみさんにまかせとけば大丈夫だから!」
そんなひろちゃんを「まあまあ」と抑えつつ、有岡くんはそう言っている。
何の根拠があってそんな事を言っているのかはわからないけれど、有岡くんのその言葉は何だか嬉しかった。
私は、少しニヤけながら、おしぼりとお水を用意して席に戻る。
その頃にはひろちゃんは少し落ち着いていた。
「落ち着いた?」
私はひろちゃんにおしぼりとお水を差し出しながらそう言う。
「ありがとう。少し落ち着いてきた」
「良かった」
「ごめんね、迷惑かけて」
「全然迷惑じゃないから大丈夫だよ」
「てか、髙木、何で別れたの?」
この流れの中で急に八乙女くんがそんな事を言いだす。
確かに気にはなるけど、それを今聞いていいんだろうか。
私はそう思って、少しだけヒヤッとしたけれど。
髙木くんを見ると、そんなに気にしてはいない様子だったので、少しホッとした。