妄想小説Walk2 エピソード4
有岡くんが山田さんと飲みに行って以降。
2人の関係性は徐々に変わっていった。
というか。
有岡くんは基本的に変わってないけど、山田さんが段々有岡くんに心を開いていき。
「有岡さん」と呼んでいたのに「大ちゃん」と呼び始め。
敬語からタメ口に変わり。
山田さんは段々と笑顔でいることが増えて行った。
そして。
最初は警戒していた髙木くんと八乙女くんも、有岡くんを通じて山田さんと仲良くなっている。
有岡くんの宣言通り、2人との橋渡し役を完璧にこなしたというわけだ。
山田さんの心を溶かしたのは、間違いなく有岡くんだと思う。
そんな大きな器を持った有岡くんの事を好きでいられることに感謝というか。
よくわからないけれど。
有岡くんの事を好きでいることに誇りを持てるというか。
とにかく。
私は、有岡くんってすごいなって、日々思わされている。
「大ちゃん本当そういうとこ気を付けた方がいいよ!」
山田さんと有岡くんが取引先から帰ってきた。
2人とも、ものすごく楽しそうに笑っている。
「あ、まゆみさん、ただいまー!」
山田さんが自分の席に座りながら、そう私に言う。
「おかえり(笑) 楽しそうだね(笑)」
あまりにも楽しそうなので、ついそう言ってしまう私。
「楽しくないよ!だってずっと大ちゃんと一緒にいるんだよ?たまにはまゆみさんと一緒に行動したいよ」
「残念でした!山田はずっと俺と行動するんだよ」
「あーうぜー」
「うぜーっていうな」
山田さんと有岡くんの会話は時々子供みたいだ。
でも、2人は本当に仲がいいんだなーって、ちょっと微笑ましくなる。
それにしても。
有岡くんとずっと一緒にいられるなんて。
山田さんがうらやましすぎる・・・
「さっきいのちゃんにもらった資料、目通しとけよ」
有岡くんはそう言いながら自分の席に戻る。
山田さんも「わかってる!」と言いながらも素直にカバンの中からその資料だと思われる書類を出し、目を通し始めた。
なんだかんだ言いながら、2人はちゃんと先輩後輩してる。
何だかいい関係性だな♪
私がほっこりした気分で自分の仕事に戻ろうとした時。
私のスマホが静かにLINEの着信を告げた。
・・・有岡くんだ。
私はすぐさまLINEの画面を開く。
”今日、俺の方が遅くなると思うけど、帰りに家に行っていい?”
断る理由なんてない。
”うん!もちろん!ご飯食べてく?”
”うん”
”じゃあ作っとくね”
・・・有岡くんがうちに来る・・・♪
ご飯何にしよう♪♪
帰りにスーパーに寄って帰らなきゃ♪♪♪
「まゆみさん、何か楽しそうだね」
「えっ」
いつから見ていたのか、山田さんがこっちを見ていてそう言った。
どうやら私は目に見えて浮かれていたらしい・・・
「ああ・・・まぁ・・・その・・・」
山田さんの指摘に、私は何だか恥ずかしくなって下を向く。
山田さんはそれ以上何も言ってこなかった。
「ただいまーーー!!!」
私が家で晩御飯の支度をしていると、そんな元気な有岡くんの声が玄関から聞こえてきた。
そして。
「あーーーー疲れたーーーーーー」
リビングに入ってきた有岡くんはそう言ってそのままソファに寝転がる。
「あーもうそのままで寝たらまたスーツが皺になっちゃうよ!」
「んーーーーーーー」
私の言葉に有岡くんはそう呻きながら、寝転がったままモゾモゾとスーツの上着を脱ぎ
「ん!」
と私の方に上着を差し出した。
私はそれを受け取ってハンガーにかける。
そして、有岡くんの方を見ると、有岡くんは既に目を閉じかけてしまっている。
「ネクタイ、苦しくない?」
ネクタイも外さずに寝てしまいそうになっている有岡くんに私がそう声をかけると
「苦しい。取って」
有岡くんは仰向けに寝たままでそう言って顎を上げる。
「はいはい」
私は有岡くんのネクタイをほどいて、シャツのボタンをふたつ外した。
「ありがとう」
「いえいえ」
有岡くんは本当に甘え上手だな♪
私はそんな事を思いながら、ブランケットを取りに行く。
戻ってきたら既に有岡くんは夢の中に旅立っていた。
私はそんな有岡くんを起こさないようにそっとブランケットをかける。
・・・可愛い・・・
天使みたい。
スースーと音を立てて眠る有岡くんの寝息の音を聞いているだけでも幸せな気分になる。
有岡くんの寝顔って、どうしてこんなにも癒されて、こんなにも幸せな気分にさせてもらえるんだろう。
こんな可愛いお顔を見せてもらえるなんて。
神様に感謝だな。
・・・それにしても。
可愛い。
可愛すぎる。
なんて無防備なんだろう。
そう思いながら有岡くんの寝顔を見つめていると。
あまりにも可愛すぎて心臓がきゅーーーんってしてしまい。
気がついたら私は、有岡くんの頭を撫でてしまっていた。
「ん・・・」
そのせいか、有岡くんはそう言うとうっすら目を開ける。
「あっごめん、起こしちゃった・・・?」
私は慌てて謝る。
「・・・」
それに有岡くんは少しの間じっと私の目を見つめていたが、そのまま無言でぐいっと私の手を引っ張り、私をソファに座らせる。
そして、私の太ももを枕にして、また眠ってしまった。
「えっ」
「・・・♪」
・・・もう。
そんなに嬉しそうな顔で眠られたら私も動けないじゃん。
幸せな拘束時間だ。
私は覚悟を決めると、そのまま有岡くんが目を覚ますまでずっと寝顔を見続けていた。