妄想小説Walk2 エピソード31
お昼の時間になると。
シャーっと軽やかな音がして山田さんがやってきた。
どうも今日は椅子をシャーシャー言わせるのがお気に入りのご様子。
「まゆみさん、終わった!?」
そして、若干テンション高めだ(笑)
それに私は
「もうすぐ終わる!」
と答え、仕事のスピードを若干上げた。
「大ちゃんは?」
山田さんが有岡くんにも声をかける。
有岡くんの席は私たちの席より少しだけ遠いので、山田さんは椅子に座ったまま背筋を伸ばして、少しだけ大きめの声で言っている。
とても可愛らしい(笑)
そんな山田さんの問いかけに有岡くんは答える前に、椅子をシャーシャー言わせながら、一生懸命移動している。
席が遠めなので、まあまあな距離を椅子に座ったまま移動することになるんだけど(笑)
それでもきっと、やってみたくてチャレンジしたのであろう(笑)
そんな有岡くんが愛おしい(笑)
しかし。
頑張ってシャーシャー移動するのにも疲れたのか、私の席までたどり着く前に有岡くんは
「俺、いつでもいける!」
と叫んだ。
どうやら途中で諦めたらしい(笑)
「よし!じゃあ行こう!」
有岡くんの言葉を受けて山田さんはそう言うと、軽やかにシャーっと自分の席に戻り、椅子を机の下に収める。
そして、可愛らしい”企み顔”をしながら有岡くんの方まで走っていくと、有岡くんを乗せたまま、椅子の背もたれを押し始めた。
有岡くんを、有岡くんの席まで送っていくみたいだ(笑)
「おー!山田ありがとう!」
有岡くんも嬉しそうだし、2人とも、ものすごく笑顔である(笑)
あのー・・・ここ、会社なんですけど・・・(笑)
2人の中学生のような行動に、思わず私はそう思ってしまったものの。
その、無邪気な2人の姿に、つい、頬が緩んでしまう。
そして、私の心が全力で癒されているのを感じながら、私は2人の後を追ったのだった。
「俺、ハンバーグ!」
有岡くんはランチメニューを見て、少しの間悩んだ後でそう宣言した。
さすが、山田さんの気になっていたカフェだけあって、全部おいしそうに見えて。
メニューを決めるのにも悩んでしまう。
「俺、ステーキにしよっと。まゆみは?」
山田さんも注文が決まったらしい。
「んー・・・」
多分有岡くんは色々なものが食べたいだろうから、ハンバーグとステーキ以外にしなきゃ。
そうなると・・・
「私はパスタにしようかな」
どれにするか悩んでいたけれど、おかげさまで決める事が出来た。
「あー!パスタもいいね!」
有岡くんも喜んでくれている(笑)
よかった(笑)
「ドリンクとデザートが決まってるなら注文しようか」
「あ、うん。決まってる」
山田さんの言葉に私がそう答えると、山田さんはスマートに注文を済ませてくれた。
さすがだ。
「まゆみ、パスタとか女の子らしいね」
山田さんが急にそんな事を言いだす。
「だって女の子だぞ。なぁまゆみ!」
それに何故か有岡くんが答える(笑)
「うん(笑)まあたまたまだよ(笑)」
”女の子”とか言われると、何だか照れてしまう。
「え、まゆみは普段料理とかするの?」
「まゆみは料理上手だよ」
山田さんの問いかけに、またまた有岡くんが答える。
それにしても。
今日はやたらと名前を呼ばれてる気がする(笑)
なんでだろう(笑)
「今度俺にも作ってよ」
「いいよ」
「何で全部おめーが答えるんだよ!」
山田さんの問いかけに全て有岡くんが答えるので、とうとう山田さんがキレてしまった(笑)
「あーごめん、つい!」
そう言いながら、有岡くんは”企み顔”だ(笑)
わざとやってるんだなこれ(笑)
「”つい!”じゃねーよ!わざとだろ(笑)」
「え?」
「”え?”じゃねーよ!」
「あーごめんごめん」
「・・・」
有岡くんの様子に山田さんは呆れたのか、目を細めて有岡くんを見つめる。
・・・可愛い(笑)
そんな2人の可愛らしいやり取りのおかげで、料理が運ばれてくるまでの間も楽しめた。
本当、この2人のやりとりは見てて全然飽きないな♪
私はそんな事を思いながら、2人の姿を眺めていた。