妄想小説Walk2 エピソード32

しばらくして、それぞれの料理が運ばれてきた。

山田さんは嬉しそうにナイフとフォークを使ってお肉を切っている。

その横で。

「うめー!」

有岡くんがハンバーグを食べてそう言い、更に口いっぱいにご飯を詰め込む。

 

・・・100点♪

 

「うま!」

山田さんもおいしかったらしく、そう言うとお肉にがっついている。

 

私もパスタを一口食べて。

おいしくて思わず笑みがこぼれる。

 

何か、幸せ♪

 

「ひとくちちょーだい」

最初から私のパスタを狙っていたのか、有岡くんがそう言う。

「うん」

私は一口で食べれるように、スプーンの上でパスタをクルクルして有岡くんに差し出すと、有岡くんはそれをパクっと食べて

「うめー!」

と笑顔。

 

 

か、可愛い・・・可愛すぎる・・・

そんな笑顔見せられたら、ずっと餌付けしたくなっちゃうよ・・・

 

 

そんな事を思っていたら。

 

「まゆみ、俺もちょうだい」

山田さんも可愛いお顔でそうおねだりしてきた。

「うん」

私は有岡くんに差し出した時と同じようにパスタをひと口大にクルクルして山田さんに差し出す。

それをパクっと食べて山田さん。

「本当だ!うめー!!」

と嬉しそう。

 

何ですかその美しいお顔は!

最高ですか。

 

 

「まゆみ、ハンバーグ食べる?」

ふいに、有岡くんがそう言ってハンバーグを私に差し出してくれるので、私は「ありがとう」と言ってそれをいただいた。

「おいしい!」

パスタだけじゃなくてハンバーグもおいしいんだなこのお店♪

 

「だろ?山田も食べる?」

「うん。大ちゃんステーキ食べる?」

「食べる!」

有岡くんと山田さんはそんな会話を交わすと、お互いにひと口大のハンバーグとステーキを差し出し、それぞれパクっと食べ。

「うめー!」

と嬉しそうに笑った。

 

・・・。

 

何ですかこの平和なお戯れは。

 

・・・ありがとうございます。

 

 

「まゆみもステーキ食べる?」

天使2人のお戯れに見とれていると、山田さんが美しいお顔でそう言うので、お言葉に甘えて、「うん」とお肉をいただいたのだが。

本当、おいしくて!

何かもう本当、色々と幸せな気分になった。

 

 

そんな時。

「山田、”まゆみ”って言ってる?」

今までおいしそうにハンバーグを食べていたはずの有岡くんが、急にそんな事を言いだした。

確かに、私もちょっと気になっていた。

 

「うん」

山田さんは普通にうなずく。

それに有岡くんが

「いつから?」

と、つっこんで聞く。

「んー今日?」

山田さんは少し考えてそう言う。

 

それで今日はやたらと名前を呼ばれてる気がしたんだ!

そっか!

 

「何で?」

何となくすっきりした私をよそに、有岡くんはまだまだ気になるようで、更につっこんで聞いている。

「何で??」

「うん」

「名前だから」

山田さんは理由を聞かれて戸惑っていたようだが、シンプルにそう答える。

それに有岡くん。

「”まゆみさん”じゃないの?」

と聞き返す。

どうやら、呼び捨てにしているのが気になったらしい。

 

「別によくね?ここ会社じゃないし」

「会社なら”さん”つける?」

「そりゃそうだろ」

「じゃあいいけど」

「いいの!?」

有岡くんの不可解な受け答えに山田さんは戸惑いっぱなしの様子。

 

一体どうしちゃったんだろう有岡くん・・・

 

と思っていたら。

「・・・やっぱダメ」

と、覆した。

 

「は?何で大ちゃんがダメって言うんだよ。まゆみさんがダメって言うならわかるけど」

山田さんがおっしゃることはごもっともだ。

でも、有岡くんが「ダメ」って言ってくれるの、何かちょっと嬉しいかも。

 

「まゆみさん、まゆみって呼んでいい?」

そんな私に、山田さんが改めてそう聞く。

それに私が

「私はどっちでもいいけど・・・でも、有岡くんがダメって言うなら・・・ダメ・・・かなぁ・・・」

と言うと

「じゃダメ!」

有岡くんは嬉しそうにそう言った。

 

「何だよお前のその立ち位置!!すぐ奪ってやるからな!!」

それがむかついたのか、山田さんはゲームの勇者のようにそう言う。

「お前が奪おうとするなら、俺は奪われないようにするまでだ!」

それに答えるように有岡くんもそう言って腕を組む。

そして

「かかってきなさい」

と、人差し指を山田さんの方に伸ばし、くいくいっとした。

「うるせーよ(笑)」

そんな有岡くんの姿が面白かったのか、山田さんはそう言って笑う。

 

何やかんやで2人は仲良しだ。

山田さんが怒った時は一瞬ヒヤッとしたけど、きっとこういうのが2人の関係性なんだと思う。

何か、良かった。

 

私はホッとしながらも、まだまだ目の前で繰り広げられている、さながら小学生のようなやりとりを微笑ましく見ていられることに感謝していた。

 

 

 

 

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