妄想小説Walk2 エピソード22
「まゆみさん」
会社で事務仕事をしていたら、髙木くんに声をかけられた。
「ん?」
「近いうちにひろちゃんのお店に行ってやってくんない?」
思いがけないお話だった。
「え?何かあったの?」
「何か行く度にまゆみさん来ないの?いつ来るの?って聞かれるからさ(笑)」
「そうなの?何だろ・・・」
「わかんねー(笑)」
髙木くんはそう言って笑う。
髙木くんにわからないのなら私にもわかるわけない(笑)
「じゃあ、今日行ってみようかな」
「うん、そうして」
髙木くんはそういうと自分のデスクに戻っていった。
んー何だろう??
気になる。
「まゆみさん、今日晩飯どうする?」
そんな事を考えていたら、有岡くんにそう声をかけられた。
いいタイミング!
「何かひろちゃんがお店に来てほしいみたいなんだよね。だから、今日行ってみようかと思うんだけど、一緒に行かない?」
「いいね!そうしよ!」
私の言葉に有岡くんはノリノリだ。
よかった。
じゃあ、今日は有岡くんと一緒にひろちゃんのお店に行けるのね!楽しみだ!
・・・なんて思っていたのだが。
終業間際。
有岡くんに急遽仕事が入ってしまい。
「ごめん、先に行ってて」
と、しゅんとしていう有岡くんを置いて、私は1人でひろちゃんのお店に向かったのだった。
「あー!まゆみさん!いらっしゃい!待ってたよ!!」
ひろちゃんのお店に着いた途端、ひろちゃんが私の姿を見つけてくれて、熱烈歓迎してくれた。
「こんばんは(笑)」
歓迎してもらえるのはやっぱり嬉しい♪
「1人?」
「ううん、後から有岡くんが来る」
「大ちゃん来るんだ!じゃあこちらへどうぞー!」
今日のひろちゃんはいつも以上に元気がいい気がする。
にこやかにそう言ってくれて、個室に案内してくれた。
「まゆみさん、ビールでいい?」
「うん、お願いします」
「はーいちょっと待っててね♪」
ひろちゃんはそう言うと去っていく。
何かいいことでもあったのかな?
ひろちゃんが何だかすごく楽しそうだったので、こちらも元気になれる。
ありがたいなー♪
しばらくして。
「生ビールお待たせしましたー!」
ひろちゃんが戻ってきた。
そして、嬉しそうに続ける。
「あとね、これ。でじるまきたまご!」
「でじるまきたまご???」
だし巻き卵にしか見えないんだけど・・・
「でじるまきたまご!」
ひろちゃんはダメ押し!とばかりに”でじるまきたまご”を推してくる。
あ・・・もしかして・・・
”出汁巻き”を”でじるまき”って読んじゃってたりするんだろうか・・・
「あの・・・ひろちゃん、あれは”だしまき”って読むんだと思う・・・」
恐る恐る私が言うと、ひろちゃんは
「うん(笑) 私は読める(笑) 読めないのは光くんだから(笑)」
そう言って笑った。
「え?八乙女くん?」
「そう(笑) この前、髙木先輩が光くんと大ちゃんと3人で来てくれたんだけどね」
あ・・・それって・・・「あの日」のことかな・・・
山田さんに告白されたあの日。
八乙女くんが今から3人で飲みに行くって言ってたもんね・・・
「その時に、光くん、”だしまき”が読めなくて(笑)」
ひろちゃんはそう言って笑う。
「あー残念(笑)」
八乙女くんには時々そういう事が起こる。
どうやらひろちゃんはそれが気に入ったようだ(笑)
きっと、私が来たことで”でじるまきたまご”って言えるって思ってニコニコしてたんだな(笑)
「そうそう、その時にね。大ちゃんかっこいい事言ってたよ」
「えっ・・・」
急に有岡くんの名前が出てきて、私はドキッとしてしまう。
「髙木先輩の「何で俺の女に手を出すなって言わなかったんだよ」っていう声がイケボすぎて、私、ついつい吸い寄せられてきたんだけど」
ああ・・・(笑)
ひろちゃんっぽい(笑)
本当、ひろちゃんって”イケボの雄也”が好きだよね(笑)
・・・ていうか。
髙木くん、そんなこと聞いてくれてたんだ・・・
私はそんな事を思いながらひろちゃんの話を聞いていたのだが。
次のひろちゃんの言葉を聞いて、衝撃を受けることになる。
「山田が俺に宣言してきたのって、多分、もう気持ちが抑えられなくなったんだと思うんですよ、って」
「え・・・」
「あいつ、頑固なとこあるから、やめろって言われても無理だと思うしって!」
「・・・」
「まゆみさんのこと、好きになる気持ちは、俺が一番よくわかるからってーーー!!!!」
「・・・!」
「私、本当感動した!素敵過ぎて泣いた!」
有岡くんがあの時「選ぶのはまゆみさんだから」って言ったのは、山田さんの気持ちまで考慮しての発言だったんだ・・・
「あとね!俺、負けないしって言ってたよ!」
「!」
有岡くん・・・!
・・・有岡くんの気持ち、一番わかってなかったのって、私なのかもしれない・・・
「私、今度まゆみさんが来た時に絶対これ言わなきゃって思ってたんだ」
笑顔でいうひろちゃん。
本当、ありがたい。
「あ!それで髙木くんに・・・」
「髙木先輩?」
「うん。今日髙木くんに「ひろちゃんのお店に行ってやってくれない?」って言われたから・・・」
「えー!!髙木先輩ほんとすき!!!」
私の話の途中でひろちゃんの想いが爆発したのか、口元を押さえてそういうひろちゃん(笑)
「伝えとくね(笑)」
私がそう言うと「待って!」と止められた。
「そんな!ドキドキしちゃうから!」
割と本気らしい(笑)
「わかった(笑) じゃあ自分で言ってね(笑)」
「無理ー!」
「無理かー(笑)」
何だろう(笑)
女子だ(笑)
そんな風に楽しく談笑していたら。
「まゆみおまたせ!」
有岡くんがひょっこり顔をのぞかせてそう言った。
「有岡くん!お疲れ!早かったね!」
有岡くんの顔を見てちょっとドキドキしてしまう私。
さっきの話を思い出して、ニヤニヤが止まらない。
そんな私に気づいたかどうかはわからないが
「うん。思ったより早く終わった!」
と笑顔を見せる有岡くん。
可愛い。
好き。
「ひろちゃん、1人追加出来る?」
私がうっとりしている間に有岡くんは、ひろちゃんにそんな事を聞いている。
そして。
「え?うん、大丈夫だよ」
というひろちゃんの返事を聞くと
「よかった!ちょっと連れてくるね」
と言ってお顔をひっこめた。
連れてくる?
誰かと一緒に来たってことなのかな?
私はそう思いながら有岡くんのいた方を見つめていた。