妄想小説Walk第72話
それから私たちは全ての種類のいちごを食べて、それぞれのNo.1いちごを発表しあった後、売店に立ち寄った。
「あ!ソフトクリームじゃん!食べよ!」
いちごを見た時と同じテンションで山田さんはそう言い、私の返事も聞かずに嬉しそうに走り出す。
そして、ソフトクリームを二つ持って帰ってきた。
「はい♪」
嬉しそうに笑顔でソフトクリームを渡してくれる山田さん。
私はそれを「ありがとう!」と言って受け取った。
「♪」
山田さんはすぐさまソフトクリームを食べて「うっま!」と言う。
私も一口。
「うん。おいしい!」
思わず笑顔になる。
実は私、ソフトクリームが大好きだ。
「まゆみさんもソフトクリーム好き?」
そんな私の様子を見て山田さんはそう問うてくる。
それに私が「うん!」と言うと
「俺も大好きなんだよね!」
山田さんはキラッキラの笑顔でそう言った。
はい。
卑怯です。
安定の卑怯です。
だいぶ慣れてきたけど、やっぱり美しすぎます。
そして可愛いとか何事ですかけしからん。
・・・というか、なんですかそのソフトクリームを食す早さは!!
山田さんはあっという間にソフトクリームを完食していた。
「早!!」
「大好きだからね!!」
私の驚きに山田さんはそう言うとなぜかドヤ顔。
その上、
「もういっこ食べようかなー♪」
と、もう一つ買いに行こうとする。
「お腹壊すからやめときなよ(笑)」
「壊しちゃうかな?じゃあやめとこうかな・・・」
意外と素直に私の忠告を受け入れてくれる山田さん。
何か、本当、今日の山田さんはかわいらしさが溢れている。
スーツの破壊力もさることながら、こういうかわいらしい一面もあり、とても優しく、色々なことに気づいてくれ、更に透けている。
こりゃもてないわけがない。
山田さんはもはや存在が罪なレベルだな。
そんなことを考えていたら私もいつの間にかソフトクリームを完食していた。
「お土産買う?」
私が完食したのを見計らったのか、山田さんがそう聞いてくれる。
「うん!」
”お土産”という言葉を聞いて、すぐに有岡くん、髙木くん、八乙女くんの顔が浮かんだ。
いちごがすごくおいしかったから、みんなにも食べてもらいたい。
明日すぐに食べてもらえれば買って帰っても大丈夫だよね。
私は検討と吟味を重ねた結果、いちごを箱買いした。
その後。
さあ帰りましょうということになったので私はいちご畑を後にする前にトイレに行ってきた。
山田さんは「その間にお土産を車に持って行っとくね」と言っていちごの箱を持って行ってくれている。
山田さんは本当に見た目も中身も透けてるイケメンだ。
素敵過ぎてクラクラする。
こんなに素敵な方といちご狩りをすることが出来るなんて奇跡だな。
・・・・ん?
そんなことを考えながら歩いていたら、目の前のベンチに知念さんとともさんが座ってお話をしている姿が目に入った。
え♪もしかして2人で遊びに来てるのかな?
どうしよう。声をかけるべきなのだろうか?
私がどうしようか悩んでいたら。
「知念くんは私と遊んでて楽しい?」
ともさんが不安そうな顔で知念さんに問うた。
「楽しいよ?どうして?」
それに知念さんはともさんの顔をのぞきこむようにして見つめながらそう言う。
「私はもちろん楽しいけど、知念くんが楽しめてなかったら申し訳ないなって思って・・・」
・・・。
しまった。
完全に声をかけるタイミングを失った。
そんでもってとても気になる展開だ。
私はとりあえず、その辺の木陰に身を隠した。
「ともちゃん、最近よくそう言う事言うね」
「えっそうだっけ・・・?」
「うん」
「何か不安になっちゃうんだよね・・・ごめんね。うざいよね?」
「・・・」
知念さんはともさんの問いかけには答えずに下を向く。
そして、そのままの姿勢で「ともちゃん、あのね・・・」と言って顔をあげる。
目と目が合う2人。
「えっと・・・」
目が合った途端、急にモジモジし始める知念さん。
「あの・・・」
え、これ、もしかして・・・
と、思っていたら。
「僕の彼女になってくれる?」
恥ずかしがりながらも知念さんはそう言った。
知念さんの言葉を聞いたともさんは驚きと喜びが入り混じったような顔をして
「えっ私でいいの・・・?」
と言う。
そんなともさんを見てYESという答えを確信したのか、知念さんはいつもの小悪魔顔に戻り
「うん。ともちゃんが僕の彼女だよ。嬉しいでしょ?」
と微笑む。
「嬉しい!嬉しいに決まってるよ!!!」
「よかった!」
本当に嬉しそうに目をキラキラさせているともさんの姿を見て知念さんはホッとしたようにそう言うと言葉を続ける。
「ずっと一緒にいてくれるんでしょ?」
「うん!知念くんが嫌がってもずっとついて行く!」
「それじゃストーカーだよ(笑)」
「あ、そっか」
・・・可愛い・・・(笑)
「今度一緒に指輪買いに行こうね」
「・・・うん♪」
知念さんがともさんが着けていたおもちゃの指輪を見てそういうと、ともさんが本当に嬉しそうにうなずく。
・・・よかった!!本当よかった!!
私は見つめ合い微笑む知念さんとともさんの姿を見て感激していた。
ともさんは「私だけ付き合ってない」とか言ってたから気になってたんだけど。
今、目の前で(盗み見だけど)繰り広げられている光景を見て涙が出てきそうだ。
知念さんとともさんの幸せそうな笑顔を見ているだけで何だかほっこりする。
知念さんに振り回されてるともさんも可愛くて好きなんだけど、やっぱり幸せそうな笑顔は最高に素敵だ。
よかった!
本当、良かった!!
そう思っていたら、後ろから肩をたたかれ、振り向くとそこには山田さんがいた。
・・・そうだった!山田さんを待たせてしまってたんだ!
しまった!!
「ごめん!待たせちゃったよね?本当ごめん!」
私は慌てて謝る。
「え、どした・・・?」
が、私の目に涙がたまっていることに気づいたのか、山田さんは急に真剣な顔になってそういう。
「・・・あ、ごめん。嬉しくて、つい」
それに私はそう言うと、知念さんとともさんに視線を移し話を続ける。
「友達なの。幸せになってよかったなって思ったら涙が(笑) だから心配しないで(笑)」
「そっか」
山田さんはそう言うと、私の頭をポンポンッとして微笑み、ポケットからハンカチを取り出して私に差し出す。
「あ・・・ありがとう」
・・・いい匂い・・・
山田さんのハンカチはとてもいい匂いがした。
本当。何から何までイケメン過ぎる。
「行こうか」
「うん」
私たちはいちご畑を後にすることにした。
「今日は本当楽しかった。ありがとう」
車を私のマンションの前に止めて山田さんが言う。
「私も本当楽しかった!ありがとう」
「まゆみさん、これ。」
山田さんはそう言うと私に小さいおしゃれな紙袋を差し出す。
「えっ何?」
「あげる」
「あ、ありがとう」
「開けてみて」
山田さんに言われるがままに紙袋を開けると、いちごの香りのアロマキャンドルが入っていた。
「キャンドル!」
「そう。それ見て俺の事思い出して」
「え・・・あ、うん」
甘い。
いろんな意味で。
「また誘ってもいい?」
「うん」
「じゃあ・・・またね」
「うん、また」
私は車を降りると笑顔で手を振る。
山田さんはそんな私に向けてさわやかに白い歯を見せて微笑み、去っていった。