妄想小説Walk第6話
帰りの車の中。
「緊張した?」
私は運転しながら助手席の有岡くんに問う。
すると有岡くんは
「うん。緊張したーーー。でも思ってたよりすぐ終わった」
と笑った。
「今日はご挨拶だけだったからねー。伊野尾さんも忙しそうだったし」
本当にご挨拶程度だったな・・・。
伊野尾さんにはまた今度ゆっくりお時間を頂こう。
「まゆみさん」
「ん?」
「伊野尾さんとデートするの?」
???
急に何の話だ???
「しないよ。何で?」
「何回も誘われてるんじゃないの?」
「毎回言ってくれるよ」
「毎回!?え!?じゃデートしたことあるの?」
「毎回」という事に驚く有岡くん。
私はそれに「ないよーーー(笑)」と言ったが、よっぽど信じられなかったのか
「本当?」
と問うてきた。
「本当。」
どこに食いついてるんだ(笑)
「でも伊野尾さん、まゆみさんのこと好きなんじゃないの?」
・・・はい???????
「あはははははははは!!!!!ないない! 」
あまりにも予想外の有岡くんの言葉に私は思わず大爆笑してしまう。
伊野尾さんが私の事好きとか(笑)
そんなのありえない(笑)
「わかんないじゃん」
引き下がらない有岡くん。
何でだ。
「伊野尾さんにも選ぶ権利があるでしょ(笑)」
いやいや(笑)
「あんなに顔の綺麗な方が私なんか相手にするわけないじゃん(笑) リップサービスだよー(笑)みんなに言ってんだよ(笑)有岡くん本気にしたの?」
「したよ」
「ウケる(笑)」
腹よじれる(笑)
「本気だったらどうするの?」
・・・あれ?何か声のトーンが真剣なトーン?
ウケるとか言っちゃったから怒っちゃった・・・??
「え?・・・どした?」
「本気だったらデートするの?」
「えっそりゃ本気だったらちゃんと考えるよ」
本気で言ってくださるならちゃんと考えてお答えするのが礼儀だと思うし・・・。
「伊野尾さんの事、好きなの?」
「えっ。そんな風に考えたことない・・・」
「じゃ他に好きな人いるの?」
「え!?」
突然の有岡くんの問いかけに私は驚く。
「いないの?」
「・・・うん」
気になる人なら隣にいるけど・・・
なんて言えるかばーか!!!!
「顔真っ赤だよ」
真顔で言う有岡くん。
「有岡くんが変な事言うからでしょ」
「俺、変な事言った?」
「言ったよ・・・」
「ごめん」
「いいよ」
もう。何なのこの会話。
全く・・・。
「あ、八乙女さんに聞いたんだけど、まゆみさんスノボとかサバゲーに興味あるの?」
空気を変えようとしたのか、有岡くんが明るい口調でそういう。
「スノボは昔やってた。サバゲーはやったことないけどやってみたい」
私も明るめの口調で有岡くんに合わせる。
「どっち先に行きたい?」
「えーどっちだろ。スノボだったらウエア買い替えたいし、サバゲーは未知の世界だし(笑) 有岡くんはどっちが好きなの?」
「えー?俺どっちも好き! じゃあまゆみさんがやったことあるスノボからの方が行きやすい?」
「まぁハードルは低いかな」
「じゃスノボにしよ。八乙女さんと髙木さんに言っとくね」
「うん、お願い」
そっか。じゃあウエア買いに行かなきゃな。
次の休みの時にでも買いに行こう。
お休みの日。
私はスノボのウエアを買いに街に出ていた。
一人でフラフラと街歩きをしたり買い物するのは割と好きな方だ。
スノボのウエアも買ったし、ちょっと休憩して帰ろうかな。
私は近くにあったカフェに入り、窓際の席に座った。
カフェラテを飲みながらケーキを食べる。
こういうことをするから太るんだよね。
なんて思いながらもやめられない。
あーーー幸せ♪
なんて思いながら、ふと窓の外に目を向ける。
・・・ん?
アリオカくん・・・?
少し弾んだ心が次の瞬間一気に凍り付いた。
有岡くんと一緒に歩いていたのはとってもかわいらしい女の子だった。
・・・そうだよね。
そりゃそうだよ。うん。
早くわかってよかった。
好きになる前で・・・よかった。
私は自分の気持ちに蓋をした。