妄想小説Walk第48話
今日は片付けておきたい仕事があるから早めに出勤してきた私。
いつもの時間だとなかなか会えないけど、この時間なら仲良しのみゆきちゃんに会えるかもしれない♪なんて思いながら歩いていたら。
結構な早足でスタスタ歩くみゆきちゃんとそれを必死で追いかける圭人くんの姿が見えて、私は思わずその場に立ち止まった。
「待ってよ・・・」
圭人くんの眉毛は「ハ」になっている。
「・・・」
みゆきちゃんの顔は険しい。
立ち止まりもしない。
ど、どうしよう。
何だか邪魔しちゃいけないとこに遭遇してしまったみたいだ・・・。
とりあえず隠れよう←
私はひとまず柱に身を隠した。
「お願いだから話聞いてよ・・・」
「今仕事中よ。仕事終わってからにしましょう」
一旦立ち止まったものの、圭人くんの事を見ようともせずにみゆきちゃんはビシッとそういうと再び歩き出そうとする。
「待って」
圭人くんはそんなみゆきちゃんの腕をつかみ
「仕事よりこっちの方が大事だから。お願いだから話聞いて」
というと、みゆきちゃんを自分の方に向きなおさせ両手を握り、まっすぐにみゆきちゃんの目を見ながら話を続ける。
「俺が好きなのはみゆきだから。それはずっと変わってない」
「・・・」
「俺が頼りないんだとしたら、ごめん。好きでい続けてもらえるように頑張るから。だから俺の事信じて」
「・・・」
「誰に何を言われたのかはわからないけど、俺みゆきを裏切ることはしないから。だから俺の事信じてついてきて。お願い!」
えーーーーーーー!?
これって2人は付き合ってるって事だよね!?
い、いつの間にぃぃぃぃ!?
「あの2人、うまくいったんだな」
急に後ろから声が聞こえて驚いて振り向いたら、そこにはいつの間にか髙木くんがいた。
「お、おはよ。え。髙木くん2人の事知ってたの?」
「本人から聞いた訳じゃないけど、何となくそうなのかなって」
「へー!」
すごい。さすがだ。
「お前今日早いな」
「あー。あの仕事今日中に終わらせておきたくてさ」
髙木くんの言葉に答える私。
「あーあれかー。確かに早い方がいいかもな」
「でしょ?てか髙木くんも早いね」
「俺は朝イチで会議」
「そうなんだ」
「あ、そうだ。お前、今晩暇?飲みに行かね?」
急だな(笑)
大歓迎だけど(笑)
「いいよ」
「じゃ終わったら連絡する」
「うん」
髙木くんはそう言うと颯爽と去っていった。
私はみゆきちゃんと圭人くんの方に視線を戻す。
・・・誰もいない。
・・・そっか。
みゆきちゃんにはまた今度連絡してみよう・・・。
「お前、俺に言う事あるだろ?」
仕事が終わった私たちはいつもの店で飲んでいるのだが、一杯目のビールを飲んだ途端に髙木くんがニヤニヤしながらそう言った。
「え?言う事????何?????」
全然心当たりがないんですけど・・・・
「ふざけんなよ!わかってんだろ?」
「????」
髙木くんは更にニヤニヤしながら言うけど、本当に何の事やら???
「えっと・・何の話でしょうか???」
私が本当に何の事かわかってないのに気付いたのか、髙木くんは顔面が崩壊するんじゃないかというぐらい笑うとようやく口を開いた。
「見たぞ!お祭りでお前が有岡と手をつないで歩いてるとこ」
「え!?」
「うまくいったんだろ?よかったな!」
髙木くんはそう言うと、私の頭をぐしゃぐしゃにする。
「いや、あの、それがですね・・・」
喜んでもらえてるのは嬉しいんだけど、誤解を解かなきゃだ。
私は、有岡くんとお付き合いが出来てる訳ではない事。
あの日は八乙女くんとゆかさんのデート現場を目撃したり、知念さんとともさんがいい感じだったり、伊野尾さんとあやかさんがうまくいったりして有岡くんのテンションが上がってたであろうことを説明した。
「まぁ有岡のことだからテンションは上がってただろうな(笑) 」
一通り説明を聞いて髙木くんはそう言う。
「うん(笑) 上がってた(笑) 」
「だから手をつないだんだろうな(笑) 」
「うん(笑) そうだよね(笑) 」
「有岡、お前の事好きなんじゃね?」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
髙木くんの言葉に思わず首をブンブン振ってしまう私。
「嫌なの?(笑) 」
それを見て笑う髙木くん。
「いや、嫌な訳ないけども!私のようなものが!そんな!有岡くんに申し訳なさ過ぎて!ねえ!ほら!」
そりゃ・・・
そうだったらいいな、とは思うけどさ。
「やっぱりほら!きっと有岡くんは私なんかよりも若くて可愛い子が好きに決まってるよ!うん!」
「わかんねーじゃん」
「うん、わかんないけど!」
何言ってんだろう私。
素直に「嬉しい、ありがとう」って言えればいいんだけど、何か素直になれない所がある。
それに、今の私じゃまだまだ有岡くんにふさわしい女とは言えない。
「そういえば髙木くん、お祭り来てたの?」
実は気になってた。
私と有岡くんの姿を見られてるって事は、髙木くんもお祭りにいたって事だもんね。
「うん」
「1人で?」
「んなわけねーだろ(笑) 彼女とだよ」
え!?
「彼女いるの!?」
「いるよ。お前知らなかったの?」
「知らないよ!てか大丈夫なの!?私と2人で飲んでて」
「は?何で?」
私の言葉にきょとん顔の髙木くん。
「いや、他の女性と2人きりで遊ぶのとか嫌がる子いるじゃん」
私、結構髙木くんと2人で飲んでる事多いし。
やばいじゃん。
「ちよこはそんなことでウダウダ言う女じゃねーよ」
1人で焦ってる私を鼻で笑いながら髙木くんはそう言う。
「やだカッコイイ」
「は?何言ってんのお前(笑) 」
「そんなこと言えちゃう髙木くんもカッコイイし、どーんと構えてるちよこさんもカッコイイ!」
「そう?ありがと(笑) 」
髙木くんは笑ってるけど、本当に素敵だと思う。
とってもいい関係性というか。
私も有岡くんの全てをどーんと受け止められるような器の大きい女になりたい・・・
「お前の事もちゃんと話してるから」
笑顔で言う髙木くん。
え。そうなんだ。
でも、きっとさ。
「会社にこんなバカな女がいるとか言ってるんでしょ(笑) 」
「うん(笑) 」
「やっぱり(笑) 」
「うそうそ(笑) 」
髙木くんは笑いながらそう言うと話を続ける。
「有岡の事大好きなのに何も出来なくてじれったいって話してんだよ(笑) 」
あ、そんな事話してるんですね・・・
「何かすみません(笑) 」
「ちよこもお前の事応援してる(笑) 」
「え!?」
ちよこさん、いい人だ・・・
「あ、ありがとう・・・」
嬉しい。
それに
「いいなー私も髙木くんとちよこさんみたいになりたいな・・・」
髙木くんとちよこさんみたいにお互いを信頼しあってるような、そんな関係になりたい。
「お前ももうすぐなれるよ」
「そ、そうかな・・・」
優しい微笑みを浮かべて言ってくれる髙木くん。
・・・ありがとう。
髙木くんは本当に優しい人だ。
「私、有岡くんの全てを受け入れられる、器の大きい女になりたいんだよね。今の私じゃまだまだダメで。もっと器の大きい女になれた時には・・・望んでもいいのかなって思ってる」
有岡くんの、彼女という立場を。
「俺、お前の事好きだよ」
髙木くんが言う。
「あ、ありがとう(笑) 」
急にそんなこと言われるとびっくりするけど、素直に嬉しい。
「あ!勘違いすんなよ!そういう意味じゃねーぞ!」
「わかってるよ!(笑) 」
そんなに慌てて否定しなくても(笑)
私が髙木くんの恋愛対象じゃないことぐらいわかってるって(笑)
「まぁとにかく!俺たちお前の事応援してるから!頑張れよ!」
「ありがとう!」
髙木くんもちよこさんも応援してくれてるし!
私も早く有岡くんにふさわしい女になれるように頑張ろう!