妄想小説Walk第49話

ある日。
仕事を終えて会社に戻ったら、有岡くんと髙木くんと八乙女くんが楽しそうに談笑している姿が目に入った。

 

・・・何か3人のこんな姿見るの久しぶりだな。
すごい楽しそう。
何だかほっこりする♪

 

 

「あ!まゆみさんおつかれ!こっちこっち!」

そう思っていたら有岡くんに全力で手招きされた(笑)
可愛い(笑)

「何?どした?」
「今、八乙女さんとゆかさんの馴れ初め聞いてた!まゆみさんも聞きたいでしょ?」
「聞きたい!」

 

ありがとう有岡くん!
気になってたよ!!

 

「えーー!まゆみさんも聞きたいの?しょうがないなぁー!」

そう言いながらも八乙女くんはとっても嬉しそう。

 

本当は話したくて仕方ないくせに(笑)
可愛いな(笑)

 

「お祭りはどっちが誘ったの?」
「俺」

有岡くんの質問に答える八乙女くん。

 

八乙女くんから誘ったんだ!

 

「何で手つないでたの?」
「つなぎたかったから」
「2人は付き合ってるの?」
「うん」

有岡くんが質問し、八乙女くんが答える。
この構図のままテンポよく話が進んでいく。

「いつから?」
「お祭りの帰り道からかな?」
「八乙女さんが言ったの?」
「ううんゆかちゃんが言ってくれた」

 

え!?

 

「八乙女くんが告白したんじゃないんだ!?」
「うん。俺言えないもん」
「え、告白出来ないけどお祭りには誘うの?」
「うん」
「告白できないけど手は繋ぐの?」
「うん」
「そっか・・・」

と私が考え込んでいたら

「何か俺責められてる?」

八乙女くんが笑いながらそう言ったから私は慌てて

「ううん、違うの!違うよ!責めてないよ!ごめん違うからね!」

と謝り倒す。

「何かまゆみさん必死(笑)」

そんな私を見て有岡くんは笑ってる。

「うん、勘違いさせてたら申し訳ないから必死だよ(笑)」
「勘違いならいいけど(笑)」

八乙女くんも気にしてないみたいだ。
良かった。

 

 

ふと、視線を感じたのでそちらを向くと、髙木くんがニヤニヤしながらこっちを見ていた。

 

・・・きっと私が思ってる事がバレてるな。
髙木くんにはお見通しなんだろうな。
ずるいよ髙木くん。

 

 

 

ちょっとね。
ほんのちょっとだけ。

お祭りのあの日、有岡くんが私の手を握ってくれたことがね。
八乙女くんと同じ理由だったらどんなにいいだろうって。

ほんのちょっとだけ思っちゃった。
ほんのちょっとだけだよ?

 

・・・って。
何で私、髙木くんに言い訳してるんだろう(笑)

 

 

「まゆみさんお昼食べた?」

私が脳内で言い訳をしていると八乙女くんがそう声をかけてくれた。

「まだだよ」
「俺たち今から行くけど一緒に行く?」
「行く!」

よかった。
今日は楽しくお昼御飯が食べれそうだ。

 

そんな訳で私たちはお昼ご飯を食べに出掛けることにしたのだった。

 

 

 

 

 

仕事帰り。
今日は定時で帰れたので街をフラフラして帰ろうと思って歩いてたら。

「まゆみさん!」

と声をかけられ振り向くと、そこには㈱帝王のきえさんが立っていた。

「あ、きえさん!お疲れ様です!」
「お仕事帰りですか?」
「はい、そうです」

きえさんに笑顔で聞かれ、私も笑顔で答える。
そして

「きえさんもですか?」

と聞いたところまではよかったのだが、そのあとのきえさんの答えから私がざわつくことになろうとはこの時は夢にも思っていなかった。

「いえ、私は薮様をお迎えに」

 

・・・薮様・・・?

 

きえさんって薮さんの事を「薮様」って呼んでたっけ???
・・・まあいいか・・・

 

「大変ですね」
「いえ。私は薮様の足なので」
「・・・え?」
「ひれ伏したいのは薮様だけなんです」

 

・・・・。

 

「え?ひれ伏したい?」
「はい。私は薮様の腕の中で死にたいんです」

 

様子がおかしくなってきた。

 

「え?死にたいんですか?」
「いえ。死ぬときに薮様の腕の中で「お慕い申しておりました」って言って死にたいんです」

 

笑顔でそんなこと言われても

「そうですか・・・」

としか言えない・・・

 

 

困ったぞ。
これは困ったぞ。

 

「あれ?まゆみさん?」

 

助かった!!
そう思って振り向くと、そこには薮さんと知念さんがいた。

「あ!薮さんお疲れ様です!知念さんもお久しぶりです!」

私は今ものすごい笑顔に違いない。

「今、帰り?」
「そうなんです。きえさんとばったりお会いして」
「そうなんだ」

きえさんは何事もなかったかのように立っている。

 

・・・あれは幻だったのか・・・?
それとも、気を許して本音を話してくださったのかな?
だとしたら嬉しいけど。

 

「知念さん、こないだはありがとうございました。ともさん、お元気ですか?」
「うん、元気だよ」

私の言葉に笑顔でそう答えてくれる知念さんを見ていたら、お祭りの時におもちゃの指輪をプレゼントしていた知念さんを思い出してほっこりする♪

「よかったです♪ よろしくお伝えください♪」
「うん。まゆみさんも、大ちゃんによろしく言っといてね」
「はい!」
「じゃあまた!」
「はい!また!」

知念さんはアイドルスマイルで手を振ると、薮さんとともにきえさんの運転する車に乗り込んで去っていった。

 

・・・何か色々すごかったな。

 

 

 

 

第50話へ

 

第48~49話 裏話へ