妄想小説Walk第35話

「着いた」

すっかりテンションが上がってしまっている有岡くんが車を止めた所はとあるビルの前だった。

「ごめん、荷物運びたいんだけど手伝ってもらっていい?」
「うん、いいよ・・・」

車を降り私は有岡くんの後をついて行く。

 

 

 

 

まだ気持ちの整理がつかない私は、有岡くんの背中を見ながら、どうしていいかもわからない気持ちとため息を必死で抑え込んでいた。

 

 

 

 

ほどなくしてある部屋の前で立ち止まる有岡くん。

「ここだよ」

部屋の鍵を開けドアを開ける。

中に入るとそこには昼間見た羽まみれの空間と伊野尾さんが・・・!

 

 

「え!?」

 

 

「サプラーーーーイズ!!!!」
「全部嘘でしたーーー!!!」

羽が舞う中、嬉しそうに叫ぶ伊野尾さんと有岡くん。

 

 

「!?」

 

 

全く理解できない・・・

 

 

 

「あれ?大ちゃん、まゆみさんわかってないよ」
「そうだね(笑) まゆみさん、俺、いのちゃんと付き合ってないよ」
「・・・え?」
「全部嘘。サプライズを思いついたんだけど、それを試してみただけ」
「そうなんだよ。サプライズの模様を動画撮って結婚式で流したらどうかって大ちゃんが言うから試してみた」
「やっぱり無理があったかな?男と付き合ってるなんて。でも他の女の子と付き合ってるって言うよりはいいかと思ったんだけど」

有岡くんと伊野尾さん、楽しそうに話してる。

 

 

 

 

・・・え?
どういうこと・・・?????

 

嘘・・・?

 

有岡くんと伊野尾さんは・・・
付き合ってない・・・??

 

 

・・・え・・・????

 

 

「・・・まゆみさん?」

2人の姿を見て固まってしまっていた私に気づいた有岡くんが私の顔をのぞきこみながら言う。
そんな有岡くんの顔を見たらなぜか涙があふれてきた。

「え!?あ、ごめん!まゆみさんごめん!泣かないで!」

あからさまにオロオロする有岡くん。

「あ、ごめん!ちょっとびっくりしちゃって(笑) 心が状況の変化についていけてないみたい(笑) 」

私は慌てて弁解するけど、2人の動揺は止まらない(笑)

「もー!大ちゃん!まゆみさんなら冗談だってわかってくれるって言ったじゃん!」
「そう思ったんだよ!本当にごめんまゆみさん」

有岡くん平謝り(笑)

「いや、大丈夫(笑) 急展開過ぎてびっくりしてるだけだよ(笑) 本当、大丈夫だから(笑) 逆にごめん驚かせて(笑) 」

泣きながら笑ってる私を見てホッとしたのか、有岡くんは

「本当ごめんね」

と言いながらも笑顔だ。

 

「この企画、ボツだな(笑) 」

動揺していた伊野尾さんも笑顔で有岡くんをいじる。

「うん、ダメだな。」
「うん。刺激が強すぎる」
「あははははは」

私の言葉に笑う2人。

 

 

 

 

・・・笑い事じゃないんですけどΣ(゚Д゚)
急にフラれて、しかも伊野尾さんと付き合ってるとか言われて私、感情の持って行き方が分からなかったんですけどΣ(゚Д゚)

 

しかもなぜ私で試す!?
そんなに鈍感だと思われたの!?Σ(゚Д゚)

 

 

 

 

・・・ま、いっか。

 

 

 

本当は怒りたかったけど、2人があまりに楽しそうに笑ってるからもうどうでもよくなった。
全く。
本当、いたずらっ子なんだから。

 

 

「お腹空いた・・・」

激しく感情を揺さぶられた所から解放されたせいか、急に空腹感が襲ってきた。

「俺おごる!何食べたい?」

私の言葉に有岡くんが食いつく。

お詫びのつもりなのかな?
可愛いやつめ(笑)
じゃあ、お言葉に甘えて♪

「今日は洋食かな」
「俺、うまい店知ってる!!」

伊野尾さんも食いついた(笑)

「よし!そこにしよう!」
「大ちゃん、先走り過ぎだよ! まゆみさんの意見聞かなきゃ(笑) 」

食い気味で言う有岡くんを諭す伊野尾さん(笑)

「そっか! まゆみさん、どう?」
「うん(笑) いいよ(笑) 」
「よし!いのちゃん予約して!」
「おっけーーー」

伊野尾さんに予約させるのね(笑)

 

 

にしてもやっぱりこの2人、仲がいい。
2人が付き合ってるって言われた時、私、疑いもしなかった。

 

 

 

「まゆみさん、本当ごめんね。怒ってる?」
「怒ってないよ(笑) 」

心配そうにいう有岡くんの言葉に私はそう言って笑った。

そんなに可愛い顔されたら怒るに怒れないよ(笑)

「よかった♪」

ホッとしてる笑顔ももう可愛い。
やっぱり私、有岡くんの事嫌いになんてなれないや。

 

 

 

 

ほどなくして。

「予約取れたよーいこーーー」

と、伊野尾さんののん気な声が。

「ありがといのちゃん!」
「ありがとうございます」

 

そして私たちはおいしいと噂の洋食屋さんに向かったのだった。

 

 

 

 

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