妄想小説Walk第16話

数日後。
会社で仕事をしていたら、見慣れない女性に声をかけられた。

「すみません、㈱帝王のものですが、や、八乙女さんは・・・?」

あ。薮さんのとこの方か。

「えっと・・・あ、あそこにいますね」

髙木くんと談笑している八乙女くんの姿を見つけたのでそれを伝えると、彼女は軽く「キャッ!」と声をあげた。

 

 

・・・え?(笑)

 

 

そして、モジモジしながら「どうしよう。どうしよう」と繰り返してるので「呼びましょうか?」と声をかけると食い気味で「お願いします」と言われた。
目が力強い(笑)

「八乙女くーん!お客様だよー!」
「ん?・・・ああ!!」

私の声に振り返って彼女を認識した八乙女くん。
笑顔でこちらにくる。

と、ともに彼女の周りの温度が心なしか上昇している気がする。
目は完全にハートになっている。

「ゆかちゃん!どうしたの?」
「あの、薮さんから荷物を預かってまして・・・」
「ん?」

”ゆかちゃん”と呼ばれた彼女は緊張のせいか驚くほど声が小さくて。
何を言っているのか聞こえなかったらしい八乙女くんはそう言って彼女に耳を近づける。

「ひぃ!!!あのっ!やぶ!!やぶ!!!」

彼女は顔を真っ赤にして「薮」と繰り返す。

「ああ!薮に頼まれたの?あいつも人使い荒いなー。わざわざごめんね。ありがとう!」
「い、いえっ し、失礼します」

彼女はそう言うと走り去っていった。

・・・可愛い♪

 

 

「まゆみさん、彼女、薮のとこの子だよ」

八乙女くんがニコニコしながら言う。

「そうみたいだねー」
「可愛いでしょ?」
「うん。可愛い」

私が同意すると八乙女くんは満足げにうなずいて去っていった。

・・・何か八乙女くんも可愛いな(笑)

 

 

 

 

・・・あれ?
ふと気づくと机の上に見慣れぬスマホ。
あ。もしかして彼女の?

私は確認しようと八乙女くんの姿を探したが見当たらなかった。

間に合うかな?

私はスマホを持ってエレベーターホールへと走った。

 

 

 

 

エレベーターホールに行くと、エレベータを待つ彼女の姿があってひと安心。
したのだが。
一人で何かをブツブツつぶやいている。

「ヤバい。どうしよう。カッコよすぎてはげる。ありがとう!って言い方とか。好き。今日の酒絶対うまい」

 

聞くつもりなかったけど聞こえてきちゃった・・・
そんなに八乙女くんの事好きなんだ!
愛されてるなー八乙女くん♪

 

「あの」

私が声をかけると彼女はさっきの独り言はなかったかのような顔をして振り向いた。
心の声がだだ漏れだって気づいてないのかも(笑)

「スマホ、忘れてませんか?」
「あ!!ありがとうございます!!」

私の問いかけに彼女はそう言ってスマホを受け取った。
大きい声、出るじゃん(笑)

そして、何気なく目がいってしまったカバンの中にうちわのようなものが入っていて、そこにはいつ撮ったのか八乙女くんの写真が貼ってあった。

いつ、何に使うんだろう??(笑)

「八乙女くんの事、すごい好きなんですね」
「はい。そうなんです。逆に何でみんな好きにならないのかが不思議でしょうがないです」

すごい。
迷いがない。
清々しい!!

「あなたも八乙女さんの事好きなんですか?」
「え!?」

キラキラした目で言われてびっくり。

「いや、私は同僚としか思った事がないです・・・」
「そうなんですか?えー何で好きにならないんだろう???」

本当に不思議なんだ(笑)
逆にその感情が不思議だ(笑)

私が衝撃を受けている間にエレベーターが到着したので、彼女は「失礼します」と言って乗り込んだ。
私も頭を下げて彼女を見送る。

 

・・・薮さんのとこには面白い方ばかりいらっしゃるな・・・

 

私はそんなことを思いながら自分のデスクに戻った。

 

 

「まゆみさん、どした?不思議な顔してるよ(笑) 」

すると、よっぽど気になったのかそう髙木くんに言われた。

「不思議な顔って(笑) いや、今薮さんの所のゆかさんって方にお会いしてさ。」
「あーいたね!あの子八乙女のファンでしょ?」
「ファンなんだ(笑) 」

てか髙木くんも知ってる方なんだ(笑)

「何かうちわに八乙女くんの写真貼ってるやつを持ってらしたんだけど」
「あー俺が送った写真でしょ?」
「え?髙木くんが送ったの?(笑) 」
「うん。欲しがってたから。」

結構仲良しなんだな(笑)

「八乙女もノリノリで決め顔してた(笑) 」
「そうなんだ(笑) 」
「また送ってあげようかな♪ 」

髙木くんはそう言うと嬉しそうに去っていった。

 

・・・髙木くん、本当にいい人だな(笑)

 

 

 

 

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