2017 Birthday Story 伊野尾慧
今日は雨。
私は傘をさして1人街を歩いている。
・・・ん?
とあるお店から出ようとしている男女を発見。
伊野尾さんとあやかさんだ。
私は挨拶をしようと2人に近づいた。
が。
私がいることに2人は全く気付いていないようで、仲睦まじくお話をしている。
完全に2人の世界だ。
私は声をかける隙があるかどうかを見極める為に立ち止まり、2人の様子を観察した。
「急に雨降ってくるとか本当困る!服濡れちゃうし、髪も乱れちゃうし・・・」
「そう?俺は雨嫌いじゃないけど」
あやかさんの言葉に伊野尾さんが言う。
「そうなの?」
「うん」
伊野尾さんはうなずきながら自分の傘を差し
「ほら。来い」
とあやかさんの手を引っ張り、自分の方に引き寄せる。
しかし、伊野尾さんにしては勢いよく引っ張ってしまったせいか、あやかさんはよろけてしまった。
そんなあやかさんを伊野尾さんは落ち着いて両手で支えると
「雨の日にしかこういうこと出来ないだろ?」
と微笑む。
「そうだね!私も雨好きかも♪」
伊野尾さんの腕の中で嬉しそうに笑うあやかさん。
「お前すぐ意見変わるな(笑)」
そんなあやかさんに楽しそうに笑う伊野尾さん。
「すぐ変わるよ(笑) 私は慧ちゃん色に染まるんだから」
「そ、そっか」
あやかさんの言葉に照れてしまったのか、伊野尾さんはやや顔を赤らめてそう言うとそれをごまかすかのように
「ほら。行くぞ」
と歩き出した。
あやかさんも伊野尾さんの歩幅に合わせて歩き出す。
なんやかんやいって、あやかさんが濡れないように傘を差しているので、伊野尾さんの左肩は雨で濡れてしまっている。
「あ。そうだ。あやか。今度那須のペンションに行かない?」
「え・・・それって・・・」
伊野尾さんの言葉に何かを感じ取ったらしいあやかさん。
那須のペンションに何かあるのかな??
「うん」
何かを含ませて笑顔でうなずく伊野尾さん。
「行く!絶対行く!」
「よし!じゃあ休みを合わせよう!」
「うん!!!」
よくわからないけど、伊野尾さんもあやかさんも何だかとても幸せそう♪
勝手に見てる私もほっこりしてしまう。
・・・。
声はかけない方がいいな。
目の前を相合傘で去っていく2人の姿を見て私はそう思うと、2人に背を向けて歩き出した。