2017 Birthday Story 中島裕翔

「まゆみさんまゆみさん!!」

 

ジムに行くと、いつもよりはしゃいでいる中島さんが、さながらゴールデンレトリバーのごとく駆け寄ってきた。

 

「あ、中島さん、こんにちは」

「こんにちは!」

 

やたらテンションが高く、ぴょんぴょん飛び跳ねている。

 

「何かいいことでもあったんですか?」

 

しかし、私がそう聞いた途端、中島さんは飛ぶのをピタッとやめて

 

「そういえば別に楽しいことないや」

 

と言った。

そして

 

「それよりあれからどうなったの?そろそろ山田さんと付き合い始めたんじゃない?」

 

とニコニコしている。

 

 

「えっと・・・」

 

とても、とても言いづらい・・・

 

「え、なになに?まだ付き合ってないの?早く付き合っちゃえばいいのに」

 

そんな私に中島さんは容赦なくグイグイ来る。

 

「いや、あの・・・」

 

そして私にお構いなしに中島さんの妄想は暴走する。

 

「どうせまゆみさんが渋ってるんでしょ?あ。やっぱり「多分付き合ってない」男の方がいいとか思い始めたとか?やめといた方がいいって。え!?もしかしてそっちと付き合ってる!?」

「いや、そういうわけではないんですけど・・・」

 

今日の中島さんはやたらと突っ込んでくる・・・

困ったな・・・

 

と思ってたら。

 

「なに。さっきから。はっきりしないな。はっきり言いなよ。どうしたの?」

 

今度はそう詰め寄られた。

 

 

 

・・・しょうがない。

本当の事を言おう。

 

 

 

「実は、山田さんと急に連絡が取れなくなりまして・・・」

「へ?何で?」

「山田さん、詐欺師だったみたいで・・・」

「は!?何それ!?詐欺師!?」

「あははははははは・・・・・」

 

驚いている中島さんに私は乾いた笑いを提供することしか出来ない。

だって、一番驚いてるのは多分私なのだから・・・

 

「え。まゆみさん詐欺られたの?」

「・・・そうみたいです」

「マジで!?え、そんな事ってある!?」

「ね。私も驚いてるんです」

「すげー!俺、詐欺られた人初めて見たー!!!」

 

中島さんはなぜか大興奮。

 

「私も初めてです・・・」

 

何か、すみません・・・

 

「え、何された?金取られた?」

「・・・まぁ・・・そんな感じです」

「マジかー!ウケるー!!」

 

中島さんはなぜかそう言って大笑いしている。

 

 

 

私は何とも言えない気持ちになって

 

「もう!笑わないでください!」

 

と叫んだ自分の声で目が覚めた。

 

 

 

 

 

 

・・・夢か・・・。