妄想小説Walk2 エピソード39

私は今、有岡くんのマンションの部屋の前で有岡くんにもらった合鍵を使って家に入ろうとしている。

 

有岡くんの家に来るときはいつも連絡してからくるようにしてるんだけど、今日は何となく、連絡せずに来てみたくなった。

 

 

 

急に来たら有岡くん驚くかな。

 

有岡くんは「いつ来てもいいよ」って言ってくれてるけど、何だかドキドキしてしまう。

 

 

 

 

 

 

・・・ガチャ

 

 

 

 

 

鍵穴に差し込んだ合鍵を回すと、鍵の開く音がした。

 

 

・・・何だかいけないことをしてるような気分になる。

でも。

ちょっとワクワクしてる自分がいた(笑)

 

 

 

私は、音を立てないようにそーっとドアを開けて中に入り、鍵を閉め、靴を脱ぐ。

そして、足音を立てないようにそーっとリビングに向かう。

 

 

 

しかし。

リビングには誰もいなかった。

 

 

 

 

 

・・・有岡くん、出かけてるのかな。

どうしよう。

 

 

 

想定外の出来事に私はどうしていいかわからず。

とりあえず帰ろうかと思い、玄関に向かおうとしたその時。

 

 

「大ちゃん、パンツ借りたよー」

 

という声と共に、下着姿の山田さんがタオルで髪の毛を拭きながら現れた。

 

「!?」

 

山田さんも私も、お互いがそこにいると思ってなかったので相当驚いて。

 

「ご、ごめん!!」

 

2人して慌てて謝り。

山田さんは急いでバスルームに戻って、私は呆然とその場に立ちつくした。

 

 

「2人とも何やってんの(笑)」

 

そんな私たちの姿を見ていたのか、有岡くんがそう言って笑っている。

 

「有岡くん!どこに行ってたの!?」

 

思わず、声が大きくなってしまう私。

 

「え。トイレ。」

 

有岡くんはそう言うと、私の顔を見て吹き出しながら

 

「顔真っ赤にして(笑) 恥ずかしかった?」

 

とニヤニヤする。

 

「びっくりしたんだよ・・・有岡くんだと思ったら山田さんだったから・・・」

 

 

私がそう答えていたら

 

「俺も」

 

洋服を着た山田さんがバスルームから出てきてそう言い、話を続ける。

 

「大ちゃんだと思ってたからパンツ一丁で出て来ちゃったよ。ごめんね。まゆみさん」

「ううん、私こそ見てしまってごめんなさい・・・」

「見てしまってってやめて(笑)」

「あ、そうだよね(笑) ごめん(笑)」

 

 

よく見ると、山田さんのほっぺたがほんのり赤くなっている。

 

 

「山田も顔赤くしちゃって(笑) 恥ずかしかったんだろ(笑)」

 

それを有岡くんは見逃さない(笑)

 

「そりゃ恥ずかしいだろ!バカか!」

 

悪態をついている山田さんも美しい。

 

 

 

 

 

・・・って。

ちょっと待って。

そういえば、私、勝手に来たんだよね。

有岡くんと山田さんが2人で遊んでるところを邪魔しちゃってるんじゃない!?

 

 

私の頭をふとそんな事がよぎる。

 

 

邪魔しちゃいけない。

帰らなきゃ。

 

 

そう思った私が慌てて有岡くんに

 

「急に来てごめんね!私、帰るね!」

 

と言って玄関に向かおうとすると。

 

「何で?せっかく来たんだからいればいいじゃん」

 

有岡くんはそう言って私を引き留めた。

 

「え・・・でも私、邪魔じゃない?」

「邪魔なのは大ちゃんだよ」

 

私の言葉に山田さんが真顔で言う。

それに有岡くんが

 

「何でだよ!ここ俺んちだよ!」

 

すぐさま反論(笑)

 

「そっか!大ちゃんちか!(笑)」

「そうだよ。だからまゆみはここにいて」

 

そんな風にふざけている途中なのに、有岡くんはそう言って、私の目をまっすぐ見つめてくる。

 

「・・・わかった 」

 

有岡くんはさらっとそういうことを言うから、本当、ずるい。

 

 

 

 

「大ちゃん、ゲームの続きやろうぜ」

「よーし!次も俺が勝つ!」

「バカか!さっきも俺が勝ったわ!」

 

2人はそんな事を言いながら、テレビの前に座る。

私は少し離れたところから2人がゲームをしている姿を眺めることにした。

 

 

 

 

2人ともゲームがとても上手で。

ゲーム画面を見ているだけでも楽しいんだけれど。

私は、何よりも有岡くんと山田さんの間に流れている2人の空気感というか、そういうものが大好きだ。

 

ゲームをしている時の2人は本当に子供みたいで。

とても微笑ましくて、癒される。

 

 

 

あんなにはしゃいで(笑)

本当、子供みたい(笑)

可愛いな(笑)

 

 

 

私はそんな事を思いながら、何となくキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。

 

 

・・・何にもない(笑)

 

 

有岡くんの好きなコーラとポークビッツ、買ってきてあげようかな。

 

 

 

 

リビングの方を見ると、何やらとても盛り上がっている。

 

 

・・・邪魔しちゃ悪いな。

 

 

私は2人の邪魔をしないようにそっと玄関に行き、外へ出た。

 

 

 

 

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