妄想小説Walk2 エピソード12
「でね!今日の有岡くん本当にイケ散らかしてて困っちゃった!」
仕事が終わり。
私は髙木くんと飲みに来ている。
「イケ散らかすって」
「ふざけてるとはいえ、「うまくいってるんじゃないか?」って言ってくれたし!!」
「・・・」
「朝は何かいつもと違うような気がしたけど、気のせいだったみたいで、よかった!」
「・・・だよなぁ・・・いつもと違う感じしたよな・・・」
私の言葉に髙木くんの言葉のトーンが急に変わった。
「え・・・」
「他に何か有岡と話してない?」
真面目な顔で髙木くんにそう聞かれると緊張する・・・
何か・・・
私、何か有岡くんと話したかな・・・
「・・・そういえば。車の中で変なこと言ってた」
「何?」
「髙木くんに惚れた事ないの?って」
「俺?」
「うん。ないって言ったら、俺が女だったら好きになってるって」
「・・・」
「髙木くんの話してる間、ずっと真顔だったからどうしたのかなって思ってたんだけど、伊野尾さんとふざけてる時笑ってたから、気のせいだったんだなって・・・」
髙木くんが何も言わずに私の話を聞いているので、私はちょっと不安になってどんどん声が小さくなってしまう。
そんな私に髙木くんは一言。
「・・・お前、バカなの?」
「えっ」
「てかお前も変だよな?」
「えっ」
「異常にテンション高いし」
「えっ」
自分では全然そうは思わなかったけど・・・
「そう・・・なのかな・・・」
確かに、考えてみれば今日の私、テンションのメーターが壊れていた気がする。
「お前の感情はなんなの?何があったか言ってみ?」
「えっ・・・何だろ」
急に言われても自分でもわかってないから答えられない。
そんな私の様子を察してくれたのか、髙木くんは
「朝、何かあった?」
と引き出そうとしてくれる。
いつもながら、ありがたい。
「朝は・・・有岡くんに昨日LINEの返事できなくてごめんって謝ってもらえて嬉しかった」
「昨日?昨日何かあったの?」
そっか。髙木くん外に出てたから知らないんだ。
「昨日本当は有岡くんと山田さんと三人でジムに行く予定だったんだけど、有岡くんに急遽仕事が入って行けなくなっちゃって」
「山田と2人でジムに行ったの?」
「うん。でも気になったから途中で有岡くんに”仕事終わった?”ってLINEしたの」
「あいつ、返事しなかったの?」
さすが。察しが早い。
「そう。それを今朝謝ってもらえて嬉しかったの」
「・・・で?」
「一緒に外回りに行けることになって嬉しくて。車の中で髙木くんの話になった時にはどうしたのかなって思ったけど、伊野尾さんとふざけて笑いあってる有岡くん見てたら嬉しくなって」
「・・・」
「有岡くんの笑顔見てると幸せだなーって」
髙木くんは、途中から聞いてるのか聞いてないのかわからないぐらい真剣な表情で黙りこむ。
・・・私・・・もしかしておかしい事言ってるんでしょうか・・・?
私が不安に思い始めた頃、髙木くんは重い口を開いて言った。
「もしかしてお前ら、仕事以外でしばらく会ってなかったりする?」
「え・・・うん・・・まぁ・・・」
どうしてわかるんだろう・・・
「前に飲んだ時もおかしな事言ってたよな?わきまえなきゃいけないとかなんとか」
「えっあ、うん。私が自分の立場をわきまえなきゃいけないから・・・」
私は、神様のような有岡くんとお付き合いさせて頂いてるんだから、しゃしゃりでてはいけない。
有岡くんに迷惑をかけてはいけない。
自分の望むことを要求するなんて、もってのほか。
そう思ってる。
「お前、有岡に会いたいって言ってねーだろ」
「えっ・・・あ・・・えっと・・・」
どうしてわかるんだろう・・・
「今日はもう帰れ」
私の反応を見て、髙木くんはそう言う。
「え?何で?」
「有岡とちゃんと話した方がいい」
髙木くんの瞳は真剣だ。
「今から有岡の家に行ってこい」
「ええ!?」
髙木くんの予想外の言葉に私は驚きを隠せない。
「有岡にお前の気持ち伝えるだけでいいから」
「私の気持ち・・・?」
「すっごい好きなんだろ?」
「えっ」
確かにっおっしゃる通りなのですがっ
そんなにどストレートに言われると何だか恥ずかしい・・・
「いや、でも急に行くとか迷惑だろうからさ!」
私はひとまず抗う。
すると。
「じゃLINEしてからでもいいや」
さらっとそう言う髙木くん。
そして。
「今送って」
「ええっ」
「大貴会いたいよ」
軽くふざけだす。
「むりむりむりむり」
「大貴、好き」
「もっと無理!!!」
「ほら。早く送れよ」
「・・・」
どうやら有岡くんにLINEを送るまで髙木くんは納得してくれなさそうだ・・・
私は仕方なく有岡くんにLINEを送ることにした。
”有岡くん、もう寝ちゃった?”
これなら迷惑にならないだろう。
「会いたいって送った?」
LINEを送ったことを察知した髙木くんがそう言う。
「うん。送った」
とりあえず、嘘をついてみる私。
「嘘つけ」
秒でバレる。
何故だ。
「まあいいけど。じゃ出るか」
髙木くんはそれ以上ツッコもうとはせず、そういうと立ち上がった。