妄想小説Walk2 エピソード11

「あれー?今日まゆみさんなの?めずらしいね」

 

白米商事に着くと伊野尾さんがいち早く私を発見してくださり、そう声をかけてくださった。

 

「山田に急な仕事が入ったんだよ。ごめんな」

 

それに有岡くんが答える。

 

「いや、山田よりまゆみさんがいいよ。何なら大ちゃんじゃなくてもいいし」

「何でだよ!」

「まゆみさん、ようこそ白米へ!久しぶりだから嬉しいでしょ?」

 

伊野尾さんは有岡くんのツッコミを華麗に無視し、私にそう話しかける。

私がそれに「そうですね」と答えると

 

「おい」

 

食い気味で有岡くんがツッコんだ。

 

 

有岡くんと伊野尾さんのやりとりはいつも通りで何だかホッとする。

さっき有岡くんに感じた違和感はどうやら気のせいだったようだ。

よかった。

 

 

「じゃあとっとと打ち合わせしちゃおうか」

「よし!始めよう!」

 

伊野尾さんの言葉を受けて、有岡くんが過剰に大きな声を出しその場を仕切ろうとする。

そんな姿を見て伊野尾さんは声を上げて笑う。

 

・・・微笑ましい♪

 

伊野尾さんと有岡くんの関係性はどんどん微笑ましくなっていってるみたい。

私は何だか嬉しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ今日はここまでにしようか」

 

伊野尾さんがそう言い、打ち合わせは終了した。

 

よかった。

何とかメモすることが出来た。

 

「まゆみさん疲れたでしょ。コーヒーでも飲んでいってよ」

 

伊野尾さんが優しく私を労って下さる。

 

「ありがとうございます」

 

私はそれに素直に甘える事にした。

 

「大ちゃんどうする?」

 

それに引き換え、伊野尾さんの有岡くんへの態度の差(笑)

口調が全然違う(笑)

 

「どうするってなんだよ俺も飲んでくわ!」

「えー飲むの?」

「えっダメ?」

 

伊野尾さんの反応を見て不安になったのか、有岡くんは少し焦りの表情を見せてそう言う。

それに伊野尾さんが笑顔を見せながら

 

「いいよ(笑)ゆっくりしてって(笑) 話でもしようよ」

 

というと、有岡くんは途端笑顔になって「やった!」と言った。

そしてすぐさま

 

「いのちゃん俺コーラ飲みたい」

 

とおねだり(笑)

 

可愛すぎるんですけど(笑)

 

「コーラ?あったかな」

 

伊野尾さんはそうつぶやきながら部屋を出て行った。

 

伊野尾さん優し過ぎる(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして。

コーヒー2つとコーラとお菓子が乗ったお盆を持って伊野尾さんが戻ってきた。

 

「食べて食べてー」

「ありがとうございます!いただきます」

 

私と伊野尾さんがそんなやりとりをしている中。

 

「うめえ!」

 

有岡くんは既にコーラを飲んでいた。

そしてお菓子にも手を伸ばし

 

「かー!うめえ!やっぱコーラ最高」

 

とご満悦。

 

 

有岡くんが美味しそうに食べている姿は国宝だと思う。

こんなに見ていて幸せな気持ちになるものが他にあるだろうか。

 

 

私は有岡くんの姿を微笑ましく見ながら、頂いたコーヒーとお菓子を食べた。

 

 

「で?どうなの?2人はうまくいってんの?」

 

そんな有岡くんと私を見て伊野尾さんはまるでコントのようなゲスい言い方でそう言う。

 

「聞き方(笑)」

「どうなのよ」

 

有岡くんのツッコミにもめげず、ゲスキャラのまま聞いてくる伊野尾さん。

 

わ、私も聞きたいです!有岡くん!

 

「あーまあそれはね、神のみぞ知る、だよ。君」

 

伊野尾さんの視線に耐えられなかったのか、有岡くんは変なキャラをつけてごまかした。

 

そうだよね。

こういうの恥ずかしいよね。

でもね。

そこは答えて欲しかったな・・・

 

そう思ってたら。

 

「答えになってないでゲスよ社長!ちゃんと答えてくださいよ!」

 

伊野尾さんがゲスキャラを加速させてツッコんだ(笑)

 

そうだそうだ!(笑)

答えてくださいよ!(笑)

 

「んー?そんなに知りたいのか?仕方ないなあ・・・」

 

有岡くんがちょっと困った素振りをしつつもそう言い、言葉を続ける。

 

「うまくいってるんじゃないか?なあ!まゆみくん」

「えっあっはい!社長!」

 

急に振られて驚いたが、何とかキャラに乗っかる事が出来たんじゃないかと思う。

 

それにしても。

ふざけてるとはいえ、「うまくいってる」って有岡くんの口から聞けたのはすごく嬉しい!

 

「社長も隅に置けないでゲスね!イシシシシシ」

 

伊野尾さんのコントはまだ続いていたようだ(笑)

しかしとうとう有岡くんも我慢しきれなかったらしく、笑いながら

 

「お前本当そのキャラ何なの(笑)」

 

と素に戻る。

 

「俺もわかんねー(笑)」

 

伊野尾さんもつられて素に戻り、2人は笑いあった。

 

何かよくわかんないけど、伊野尾さんと有岡くんが楽しそうで本当によかった♪

2人が笑いあっている姿は本当に微笑ましい♪

 

「まゆみさん何か嬉しそうだね」

「えっ」

 

伊野尾さんに言われて我に返る。

 

そんなに嬉しそうに笑ってたかな私。

 

「いや、あの、すごく楽しそうだったのでつられちゃって」

 

急に恥ずかしくなって私はついそう言ってごまかしてしまう。

 

「えー大ちゃんと話しても楽しくも何ともねー」

「おい!何でだよ!」

「うそうそ(笑) 楽しいよ(笑)」

「俺も楽しい」

 

またそんな微笑ましい会話を!

なんだかんだで伊野尾さんと有岡くんはものすごく仲良しなんだよね。

本当、有岡くんが笑顔でいてくれるとホッとする。

 

「まゆみさんもたまにはこうやって遊びに来てよ。忙しいとは思うけどさ」

 

笑顔のまま、伊野尾さんはそう言う。

 

「ありがとうございます」

 

私は、伊野尾さんの優しさに感謝の気持ちを込めて深々と頭を下げた。

 

 

 

 

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