妄想小説Walk2 エピソード10

翌日。

いつものように会社に行くと。

 

「おはよう」

 

イケ散らかした有岡くんがそう言って笑顔を見せ、話を続ける。

 

「ごめんな。昨日LINE出来なくて」

「ううん!全然大丈夫!」

 

何だろう。今日はいつも以上に超絶イケメンでドキドキする。

 

「そっか。よかった」

 

そんな浮足立っている私にはおそらく気づかず、有岡くんはそう言うと自分のデスクに戻っていった。

 

 

 

昨日はLINEの返事がもらえなくてちょっと寂しかったけど、気にしてくれてたなんて!

何か嬉しい!

 

私はそう思いながら自分のデスクに座った。

その途端。

 

「おはよ」

 

髙木くんに声をかけられた。

 

「何か嬉しそう。昨日有岡とデートでもした?」

「えっ!してないよ・・・」

 

出来ればしたいですけどね。

 

「してないの?」

「してません・・・」

「ふうん」

 

私の答えに髙木くんはそう言うと、自分のデスクに戻っていった。

 

 

・・・。

 

私、そんなにニヤニヤしてたのかな・・・

恥ずかしい・・・

 

 

 

「まゆみさんおはよ!」

 

山田さんが出勤してきた。

今日も山田さんはさわやかだ。

 

「おはよ!」

「昨日はありがとね」

「えっううん!こちらこそ!久々に体動かせて何だかすっきりしたよ」

 

体を動かすって大事だなって再認識させて頂きました。

 

「そっか。じゃまた行こうね」

「うん」

 

山田さんのキラキラした笑顔に頷く私。

 

また行きたい。

でもね。

今度はやっぱり昨日行けなかった有岡くんも一緒に行きたいな。

 

私はそんなことを思いながらチラッと有岡くんの方を見る。

 

「・・・」

 

何か・・・変?

 

何だろう。有岡くんに違和感を感じる。

 

・・・真顔だから・・・?

いや、でも仕事してる時は大体真顔だよね。

 

じゃあ・・・何?

さっきもやたら滅多イケ散らかしてたけど・・・

 

・・・私の考えすぎ・・・かな・・・

だといいんだけど・・・

 

 

 

 

「まゆみさん」

「は、はい!」

 

真剣に考え事をしている最中に急に名前を呼ばれたもんだから過剰に驚いてしまったけれど。

振り返ると、それには気づいていない様子の髙木くんがそこに立っていた。

 

「お前今日夜空いてる?」

「え?」

 

よかった。

やっぱり気づいてないようだ。

 

「あ、うん」

「飲みに行かね?」

 

何かと思ったら飲みのお誘い!

 

「うん、いいよ」

 

断る理由は特にないので私は素直にOKする。

 

「じゃ終わったら連絡するわ」

「わかった」

 

髙木くんはそういうとまた自分のデスクに戻っていった。

と思ったら。

 

「まゆみさん」

 

髙木くんと入れ替わりで有岡くんが来た。

 

「はい!」

 

思わず声が弾んでしまう私。

 

「急なんだけど今から白米行くことになってさ。まゆみさんも行ける?」

 

そんな私に普通に仕事の話な有岡くん。

そりゃそうだ。

何かごめん。

 

「あ、うん!大丈夫だよ」

「じゃあ用意出来たら声かけて」

「わかった」

 

何だか今朝は慌ただしい。

でも!

有岡くんと外回り出来るの、久しぶりでちょっと嬉しい♪

仕事だけど(笑)

 

私は軽く浮かれつつも自分の仕事の確認をざっと済ませてから有岡くんに声をかけに行った。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなー急で。山田が別件で出る事になってさ」

 

白米商事に向かう途中。

車を運転しながら有岡くんが言う。

 

「ううん、全然大丈夫!」

 

有岡くんのお願い事なら私はどんな事をしても叶えてみせる!

 

「ありがとな」

「ううん」

 

むしろ、私を頼ってくれたことが嬉しいです!

感謝しかないです!

神様!ありがとう!

 

「今日は今から打ち合わせなんだけどさ。内容をメモして欲しいんだよ。ボイスレコーダーの調子が悪くて録音できなくて」

「そうなんだ!わかった!」

 

何だろう!私、テンションがおかしい!(笑)

 

「俺の鞄に資料入ってるからざっと目を通しておいてくれる?」

「はい!!」

 

私はおかしなテンションのまま、有岡くんの鞄の中から資料だと思われるものを探す。

と、同時に。

車が赤信号で停まったのか、有岡くんが鞄の中をさっと探して「これ」とその資料を渡してくれた。

 

「ありがとう・・・・」

 

か、かっこいいんですけど!!!!!!!!!!

イケ散らかしながらイケまくってるんですけど!!!!!!

何だ何だ!?

私、様子がおかしすぎるぞ!?!?!?!?

 

車を運転してる有岡くんの横顔とか指先が大好きだからなのかな

心臓のバクバクが止まらない・・・

 

待て!

落ち着け!私!!仕事中だ!!!!!

 

 

私は自らのおかしなテンションを落ち着けるために一旦大きく深呼吸をした。

 

 

 

・・・よし。

落ち着いた!

 

 

「ねぇ、まゆみ」

 

そんな異常事態に私におそらく気づいていない有岡くんが声をかけてくれる。

さっきとは違う、プライベートモードだ。

ただ、いつもとはちょっと違うトーンな気がする・・・

 

「ん?」

「今日髙木さんと飲みに行くの?」

 

私の方は一切向かず、ただまっすぐ前を見つめて言う有岡くん。

・・・やっぱり、いつもと違う。

 

「あ、うん。そうみたい」

「そっか」

 

有岡くんも飲みに行きたいのかな?

そう思って

 

「有岡くんも行く?」

 

そう聞いてみたけれど。

 

「いや、行かないけど」

 

速攻断られて少し驚いてしまった。

 

「そっか・・・」

 

でも何だろう。

何か言いたいことがありそうに思えてしまう。

そう思っていたら。

 

「髙木さんと仲いいよね」

 

相変わらず前だけを見つめたままそう言う有岡くん。

 

「え?うん。仲いいね」

「まゆみは髙木さんに惚れた事ないの?」

「え!?ないよ!」

 

真顔で前を向いたまま思いがけない質問をしてくる有岡くんに私は驚きが隠せない。

しかし、有岡くんはまだ真顔のまま

 

「一度も?」

 

と話を続ける。

 

「うん。大切な友達だとは思ってるけど」

 

髙木くんは大切な友達であって、恋愛対象だと思ったことはない。

ただの一度も。

多分、髙木くんもそうだと思う。

 

「本当?」

「本当」

「何で?」

 

何で?????

 

「俺が女だったら絶対好きになってる」

「そっか・・・そうだよね・・・」

 

確かに、髙木くんは優しいしかっこいい。

付き合ったら絶対に幸せにしてくれる人だと思う。

でも。

私が好きになったのは有岡くん、あなたです。

私にとっては、あなたが、この世で一番素敵な人なんです。

 

私は、有岡くんの横顔に向かってそう言う。

もちろん。頭の中で。

 

口に何て出せる訳ない。

 

私にとって、有岡くんは一番好きだし、一番大切な人。

でも、有岡くんにとって私はどんな存在なんだろう・・・

 

「まゆみ」

「ん?」

「俺じゃなくて資料見て」

「・・・あ・・・ごめん・・・」

 

しまった・・・

圧が強かったか・・・

嫌な思いさせちゃったかな・・・

 

・・・あーもう本当私ってやつは!!

 

切り替えよう。

切り替えて、仕事仕事!!

 

私は一生懸命気持ちを切り替えて必死で資料を読み込んだ。

 

 

 

 

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