妄想小説Walk第98話

突然、有岡くんがうちに来てくれてから数日がたった。

自宅謹慎中の私に有岡くんは毎日LINEでお勧めの映画情報を送ってくれるから、私は毎日映画をレンタルして観て、感想を有岡くんに送るのが日課になっている。

 

おかげで気持ちが落ち込み過ぎることもなく一日を過ごせていて、本当にありがたかった。

 

 

 

 

 

今日も有岡くんがお勧めしてくれた映画を観ようとしていたのだが、みゆきちゃんから「話がある」と電話をもらったので、私は今、待ち合わせたカフェでみゆきちゃんの到着を待っている。

 

 

 

みゆきちゃん、どうしたんだろう。

会って話したい、としか言わなかったけど。

何かあったんだろうか。

 

 

そんな風に思いを馳せていたら。

 

「ごめんおまたせ!」

 

みゆきちゃんの声がして振り向くと、みゆきちゃんと圭人くんが立っていた。

 

え、圭人くん?

 

「圭人も一緒にいい?」

「うん!もちろん!」

「よかった!」

 

私の言葉にみゆきちゃんはホッとしたようにそういうと、圭人くんとともに私の向かい側の椅子に座った。

 

 

 

 

 

 

 

「実は・・・話があるの、私じゃなくて圭人なんだ」

 

圭人くんと2人でドリンクを注文した後、みゆきちゃんはおもむろにそう言った。

みゆきちゃんの隣で圭人くんはソワソワしている。

 

「えっ圭人くんが私に?」

「そうなんです。俺がみゆきに頼んで連絡してもらいました」

「そうなんだ・・・」

 

何で圭人くんが・・・?

 

「何でって思いますよね」

「うん」

 

思った。

圭人くんが私に何を話したいのか、全く見当がつかない。

 

そんな私に対して圭人くんが次に発した言葉は思いもよらない言葉だった。

 

 

「まゆみさん、山田涼介を知ってますよね?」

「え・・・?」

「エースコーポレーションの山田涼介と名乗る男がいたと思うんですけど・・・」

 

 

・・・山田さん・・・?

え・・・どうして・・・?

 

「山田さんは知ってるけど・・・」

 

何で圭人くんが山田さんの話をし始めるのかがわからず、私の脳内は軽くパニックを起こし始めていた。

しかし、その謎の答えは次の圭人くんの言葉ですぐに判明した。

 

「山田涼介は俺の幼なじみなんです」

「え!?」

 

山田さんと圭人くんが幼なじみ!?

 

「ごめんまゆみちゃん。自宅謹慎の話聞いた」

 

驚いている私にみゆきちゃんが言う。

 

「ああ・・・うん、そうなんだよね。まだいつ戻れるかもわかんなくて」

 

私は心配かけないようになるべく笑いながらそう言った。

本当は不安でしょうがないんだけど、それを悟られてはいけない。

 

 

「実は俺、まゆみさんの会社で山ちゃん・・・あ、山田涼介の事を俺、山ちゃんって呼んでるんですけど、その山ちゃんを見かけたことがあって」

 

圭人くんが一生懸命説明をし始める。

 

確かに、山田さんは何度か会社に来て頂いていた。

その数回のうちの一回なのだろう。

 

「まゆみさんが・・・その・・・山田涼介のせいで自宅謹慎になったって聞いて、もしかしてって思ったんです」

「もしかして・・・って思ったんだ・・・」

 

なんというか。

山田さんは「人をだました山田涼介」と同一人物なのかもしれない、と思われるような人なんだ・・・。

 

私の知ってる山田さんは普段の山田さんとは別の人格の人物って事なんだろうか・・・。

あの、優しかった山田さんは・・・。

 

「ああ!いや!違うんです!!」

 

私の深読みに気づいたのか、圭人くんが慌てて否定する。

そして。

 

「山ちゃんはそんな人じゃないんです!人をだますような、そんな人じゃないんですけど、そんなにたくさん山田涼介っていないと思うんですよ!だから、山ちゃんはそんな人じゃないけど、もしかして山ちゃんの事なのかなって!」

 

必死で説明をするけれど、いまいちよくわからない。

 

「とにかく、山田くんが何か知ってるかもしれないって思って圭人は山田くんに連絡したんだよね?」

 

みかねてみゆきちゃんが助け舟を出す。

 

「そう!」

 

圭人くんはそう言って私を見る。

 

そんなキラキラした目でこちらを見られても(笑)

 

「何が言いたいかって言うと、俺は山ちゃんと今回の事について話をしたんです」

「えっ」

 

山田さんと連絡がついたんだ・・・。

 

「まゆみさん。山ちゃんと会ってもらえませんか?」

「えっ」

「山ちゃんの話を聞いてあげて欲しいんです」

「・・・」

 

突然の展開過ぎて混乱で言葉が出てこない。

そんな私に圭人くんは一生懸命に話し続ける。

 

「今回山ちゃんがしたことは決していいことじゃありません。山ちゃんに会って欲しいって言うのもひどい話なのかもしれません。でも、俺は、まゆみさんには山ちゃんと直接話してほしいんです」

 

 

 

・・・山田さんと・・・会う・・・

山田さんに、会える・・・

 

会えるのなら、話を聞いてみたい。

私の中で中途半端になっている、山田さんへの想いがなんなのか、会えばわかるかもしれない・・・

 

 

 

「山田さんに会えるの・・・?」

 

 

山田さんに会えるのなら、会いたい。

 

 

「実は今、あるお店で待ってもらってるんです。話せるのなら二人っきりで話したいって山ちゃんが言うから」

 

心臓がドキッと音を立てた。

 

 

山田さんに会える・・・・?

しかも、今から!

 

 

「会ってもらえますか?山ちゃんに」

「・・・会いたい」

 

圭人くんの言葉に私はそう言うとはっきりと言葉を続けた。

 

「会いたいです。山田さんに。」

 

 

 

 

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