妄想小説Walk第86話

明日は上層部へのプレゼンの日。

私は山田さんの出世に少しでも力を貸すことが出来れば、と思い、仕事の後に残業して資料作りをしている。

 

せっかく山田さんに任されたこの仕事。

私のせいでボツにさせたくはなかった。

 

・・・って。

私が失敗したところでこのプロジェクトは問題なく進んでいくんだろうけど、何となく。

出来る限りの努力をしたかった。

 

 

 

 

 

 

 

「まゆみさん、おつかれ!」

 

私が自分のデスクでパソコンに向かっていると八乙女くんがそう言って声をかけてきた。

 

「八乙女くん、お疲れ!」

「まだやってるの?透けてるイケメンの資料作り」

「うん。どうしてもOKもらいたくて」

「そっかー頑張るねー」

 

八乙女くんはそう言うと「はい、これ」と何かの資料を差し出す。

 

「ん?」

「プレゼンに役立つかもしれない事見つけたからまとめといた。よかったら使って」

「え!?」

 

私は改めて八乙女くんが渡してくれた資料を見る。

・・・すごい。

わかりやすくまとめてある!

 

「ありがとう!!」

「あんまり無理しないようにね」

 

八乙女くんはそう言うと「じゃあね」と言って手を振って帰っていった。

 

 

 

・・・なんて優しいんだ・・・

ありがとう八乙女くん・・・

 

 

 

私は八乙女くんの優しさに震えるとともに感謝しつつ、資料作りを続ける。

 

 

 

 

一時間後。

 

「あーーー疲れたーーーー!!!」

 

と言いながら髙木くんが帰ってきた。

 

「髙木くん、お疲れ(笑)」

「あれ、まゆみさんまだいたの!?もしかして透けてるイケメンの資料作り?」

「うん」

「手伝おうか?」

「大丈夫、もう終わるから。ありがとう」

 

髙木くんの気遣いに私はそう答える。

 

八乙女くんにしろ、髙木くんにしろ、本当に優しい。

私は恵まれている。

 

「お疲れのところ申し訳ないんだけど、ちょっと見てもらってもいい?この資料どうかな?」

「ん?どれどれ・・・」

 

私はほぼほぼ完成している資料を髙木くんに見てもらう。

髙木くんはそれを見ると

 

「いいと思う!」

 

と言ってサムズアップした。

 

「よかった・・・」

 

髙木くんにOK出してもらえると安心する。

 

「もしかして終わった?じゃあ飯食いに行かねー?」

「うん!行こう!」

 

髙木くんの言葉に私はそう言い、デスクの上を片付ける。

 

「早くして!」

 

それを髙木くんが追い立てる。

 

「わかったわかった!ちょっと待ってよ(笑)」

 

私は慌てて片付けカバンを持つと

 

「さ、行こう!」と歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちよこさんと仲良くなったきっかけってなんだったの?」

 

飲食店でご飯を食べながら、私はふと疑問に思ったことを聞いた。

 

「何だよ突然(笑)」

「いや、聞いたことなかったなーって思って」

 

よく考えてみれば「付き合ってる」ぐらいしか髙木くんとちよこさんの事を知らない気がする。

 

「俺が「今度2人でどっか行かない?」って誘ったんだよ」

「それまで2人で出かけたことなかったの?」

「うん。何人かで一緒に遊んでた」

「そうなんだ」

「みんな、俺がちよこの事好きだって知ってたから協力してくれてたなー」

 

何だか嬉しそうな髙木くん。

可愛いな(笑)

 

「それから2人で遊びに行くようになったの?」

「うん。俺が誘いまくっていっぱい遊んだ(笑)」

「えー何か意外!」

「そう?」

「うん」

 

意外と恋愛に積極的なんだな髙木くんは。

 

「一緒にいて居心地がいいんだよちよこは。束縛するタイプでもないし。だから好き!」

「おおー!!!」

 

髙木くんにはっきりと好きって言ってもらえるって、ちよこさん幸せだろうな♪

 

「あいつが他の男としゃべってるとちょっと嫌(笑) 言わないけどね(笑)」

「何それ可愛い!(笑)」

 

髙木くんが嫉妬?

何か本当意外で可愛いんですけど!!

 

なんて思っていたら。

 

 

「お前も早く答えが出るといいな」

 

髙木くんが優しい顔をしてそう言った。

 

「え?」

「焦る必要ないしさ。ゆっくり答え出せばいいよ」

「・・・ありがとう・・・」

 

やっぱり髙木くんは優しい。

私が迷ってる事もお見通しなんだな・・・

 

 

 

「まずは明日のプレゼン成功させないとな」

 

かと思ったら現実に引き戻す髙木くん。

 

「そうだよね。・・・やばい何か緊張してきた」

 

どうしても成功させなきゃって思うと緊張する。

 

「お前なら大丈夫!(笑) じゃあ今日は飯食ったら明日に備えてすぐ帰ろう(笑)」

「そうだね!とりあえずたくさん寝とく!」

 

髙木くんの言葉に私はそう言ってガッツポーズをした。

 

うん。

今日は帰ったらなるべく早く寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

朝から上層部を集めてのプレゼンをこなして会議室を出た私を髙木くんと八乙女くんが迎えてくれた。

 

「どうだった?」

 

髙木くんが言う。

それに私は

 

「出来る限りの事は出来たと思う。後は上層部の判断を待つだけかな」

 

と微笑んだ。

 

「きっと大丈夫だよ。おつかれさま!」

 

八乙女くんがねぎらってくれる。

 

「おつかれ!」

 

髙木くんも。

 

「ありがとう!」

 

すっごい緊張したけど、自分に出来る事はした実感もあるし、これでもう悔いはない!

後は結果を待つだけ!

 

 

プレゼンを終えた私は少しすっきりしていた。

 

 

 

 

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