妄想小説Walk第87話

今日は久々にジムに来ている。

髙木くんも八乙女くんも有岡くんも今日は来ないというので、私は珍しくプールでひたすら泳いでいる。

 

泳ぐのは得意ではないけれど、無心になれるから割と好きだ。

 

でも。

最近ずっと心の中にあるモヤモヤを吹き飛ばしたくて何度も往復して泳いでいるけれど、今日は全然無心にはなれなかった。

 

 

 

気が付くと、頭の中に浮かんでくる有岡くんの顔。

 

 

 

最近、有岡くんが真顔でいるのを見ることが多くなった。

いつもニコニコ話しかけてきてくれていたから、何だか寂しく思えてしまう。

 

 

でも、これでいいのかもしれない。

今までのようにニコニコ話しかけてくれてたら、いつまでたっても有岡くんの事を諦められない。

 

もしかしたら、有岡くんもそう思って距離を置いてくれているのかもしれない。

 

 

私はいつのまにか、段々と、自分にとって都合のいい解釈をし始める。

そうすることで山田さんの事が気になり始めている自分の気持ちの言い訳を始めているのかもしれない。

 

 

有岡くんじゃなくて、山田さんのそばにいてもいいんじゃないかな・・・

 

私は何となく、そう思い始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プールを出て、お風呂に入り、乾いたのどを潤そうと自販機で飲み物を購入してフリースペースに向かうと、そこには知念さんとともさんがいた。

 

「トンカツ食べに行こうよ」

 

知念さんがともさんに言う。

 

「トンカツ?」

「うん。ともちゃん今日疲れてるでしょ?」

「あ・・・うん」

「僕が元気がない時はトンカツとともちゃんがいれば元気になるよ。だから、ともちゃんも僕とトンカツ食べれば元気になるでしょ?」

 

何だかすごい理屈だけど、可愛い。

さすが知念さん。

 

「ありがとう知念くん!私は知念くんがいてくれるだけで幸せだよ」

 

ともさんは笑顔。

本当にこの2人は微笑ましい。

 

「じゃあ一緒にトンカツ食べに行こう!」

 

知念さんはそう言うとともさんの手を握り歩き出す。

 

そこで私に遭遇。

せっかくの2人の世界をお邪魔して申し訳ないけれど。

 

「こんばんは!」

 

私は慌ててお二人にご挨拶をした。

 

「あーまゆみさん!久しぶり!」

 

ともさんが笑顔でそう言ってくれる。

 

「久しぶり!」

「最近大ちゃん見ないけど元気?」

 

急に有岡くんの名前を出されてちょっとドキッとしてしまう。

けど。

 

「うん!元気だよ!」

 

なるべく普通に、を心がけてそう言えた・・・と思う。

 

「そっか!よかった!」

「あーお疲れ!」

 

そんな会話をしていたら、中島さんがどこかから現れて笑顔で手を振っていた。

 

「ゆーてぃ!お疲れ!」

 

知念さんが笑顔で答える。

 

「あれ。まゆみさんもいる!久しぶりだね!」

 

何だかテンションの高い中島さん(笑)

 

「お久しぶりです」

「じゃあ僕たちそろそろ。」

 

いいタイミングだと思ったのか、知念さんがそう言って去ろうとする。

 

「あ、はい!また!」

「大貴によろしくね」

「はい、伝えときます」

 

私はそう言って去っていく2人に手を振った。

 

 

 

 

「まゆみさん、あれからどうなったの?」

 

中島さんが2人に手を振った笑顔のままでさらりと聞いてくる。

 

「えっ」

「山田さんと付き合ってる?」

「いやいやいやいや!付き合ってないです!」

「でも好きって言われたでしょ?」

「え、あ、はい・・・」

 

え。何でそこまで知ってるんだろう?

私、中島さんに言ったかな・・・

と思いながらうなずくと。

 

「ほら!やっぱり好きだった!俺の思った通り!」

 

中島さんは嬉しそうにそう言った。

そして、言葉を続ける。

 

「え。何で付き合わないの?・・・あ!まだ好きなの?優柔不断な男の事」

 

相変わらずどストレート(笑)

清々しい(笑)

 

「ああ・・・まあ・・・そう簡単にはいかないですよね(笑)」

「やめといた方がいいって!振り回されるだけだから!てか山田さんの何がダメなの?あんなにイケメンなのに!」

 

なぜか山田さん推しな中島さん。

 

「いや、全然ダメなところはないです!本当に優しいし、すごく素敵な方で、私にはもったいなさすぎるんです!だから、ちゃんとしたいんです!」

「ちゃんとしたいって?」

「えっと・・・有岡くんへの想いを断ち切ってから、山田さんの想いに答えたいというか・・・」

 

そう聞かれると何だか恥ずかしくなり、私はごにょごにょしてしまう。

 

「へー。何か真面目だね。あ、そっか!まだ好きだからか!でも山田さんだったら幸せになれると思うけどなー。まだ好きならしょうがないか」

 

1人で納得している中島さん。

かと思ったら。

 

「じゃあ俺帰るね!また話聞かせてね!」

 

と言って風のように去っていった。

 

「あ、はい!お疲れ様です!」

 

 

・・・何かパワフルだったな(笑)

私も帰ろう(笑)

 

 

私はそのままジムを後にした。

 

 

 

 

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