妄想小説Walk第81話

「あれ?まゆみさん今日帰るの早くね?」

 

翌日。

帰ろうとしたら髙木くんにそう言われた。

 

「今日ちょっと約束があるのよ」

 

今日は山田さんに食事に誘われている。

 

「それってもしかしてデート?」

 

通りすがりの八乙女くんが急に絡んできた。

隣に有岡くんもいる。

 

「違う違う(笑) 食事に行くだけだよ(笑)」

「え!もしかして透けてるイケメンと!?」

 

私の言葉に髙木くんが過剰に反応する。

 

「・・・うん」

 

髙木くんの過剰反応と、この場に有岡くんがいることで思わず声が小さくなる私。

 

「やっぱデートじゃん」

 

それに構わずに八乙女くんが言う。

 

「え、デートになるの?」

 

私が言うと、髙木くんが「なるだろ(笑)」とニヤニヤし始めた。

 

髙木くんが私の事をからかおうとしているのは明白だ(笑)

しょうがない。

乗っかっておこう。

 

「マジで?どうしよう。そんなこと言われたら緊張しちゃう(笑)」

「じゃあ行くのやめたら?」

「え・・・」

 

ふざけ始めた私の言葉にそう言った有岡くんの顔がいつもの顔ではなくて一瞬固まってしまう私。

 

「今日は行くのやめて、まっすぐ家に帰ればいいよ」

 

そんな有岡くんの発言を聞いて、髙木くんと八乙女くんも顔を見合わせてる。

 

「そんな・・・ドタキャンなんて出来ないよ」

「体調がすぐれないからって言えば大丈夫だって」

「いや、そんな。嘘ついてまで断るなんて・・・」

「じゃあ今から俺とご飯食べに行こ」

「え・・・?」

 

有岡くんの様子がおかしい。

どうしよう・・・

 

「透けてるイケメンとじゃなくて、俺とご飯食べればいいじゃん」

 

いつもの有岡くんとは違う発言。

・・・どうしたんだろう・・・

 

「・・・有岡くん どうしたの・・・?」

「え、別にどうもしないよ?まゆみさん、俺と行こ?ね?」

 

有岡くんはそう言うと私の手首をつかんで引っ張っていこうとする。

 

「有岡、やめろよ」

 

それを八乙女くんが制す。

 

「八乙女さんには関係ないじゃん」

「うん。俺には関係ない。でもまゆみさん困ってるぞ?」

「そんなことないでしょ。まゆみさん、行こ」

 

八乙女くんの言葉に有岡くんはそう言うと私の手をぐっと引っ張って連れて行こうとする。

 

「おい、ありお・・・」

「有岡!」

 

見かねた髙木くんが優しく制そうとした時。

八乙女くんが強めにそう言い、言葉を続ける。

 

「そもそもお前がつないだ手を離したのがいけないんだろ?」

 

八乙女くんの言葉に有岡くんは一瞬ハッとした顔をしたが、すぐに

 

「・・・でも!」

 

と反論しようとする。

 

「有岡!・・・今はやめとけ」

 

それを髙木くんが制す。

 

「・・・」

 

一瞬。有岡くんはとても悲しそうな顔をしたが、グッと口を閉じ、下を向いて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・有岡くん・・・

 

 

 

 

 

 

「あいつずるいな」

 

八乙女くんがぽそっと言う。

 

「え・・・?」

「あんなことされたら気になっちゃうよね」

「・・・うん」

 

八乙女くんの言う通りだった。

ものすごく、気になってる。

 

「気にしなくていいよ。今日はきっと感情が暴走しちゃってるだけだから。落ち着いた時にまたゆっくり話した方がいい」

「・・・そう・・・だね・・・」

 

八乙女くんの言葉に、うなずく私。

 

「有岡、本当はいいやつだから。許してやってよ」

「えっ・・・あ、うん・・・」

「あ、いいやつなのはまゆみさんが一番よく知ってるか!」

 

八乙女くんはそう言っていつものくしゃっとした笑顔を見せてくれた。

 

どうしたんだろう。

今日の八乙女くんは何だか頼もしい・・・。

 

「時間大丈夫?」

 

いつもと違う八乙女くんに若干の戸惑いを隠しきれない私に髙木くんが言う。

 

「あ、やばいかも」

 

そうだった。

約束してるんだった。

 

「気を付けて行ってこい!」

「ありがとう!行ってきます!」

「行ってらっしゃい!」

 

髙木くんが明るく送り出してくれる。

私はそれに答えるように明るく言うと小走りで会社を後にした。

 

 

 

 

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