妄想小説Walk第74話

ジムでは基本別行動な私。

髙木くん、八乙女くんとは違う運動を軽く済ませた私はシャワーを浴びた後少しのんびりしようと、休憩所のようなところで炭酸飲料を飲んでいる。

すると。

 

「あ!まゆみさーん!」

 

中島さんが何ともさわやかな笑顔で手を振り、近づいてきた。

人懐っこいゴールデンレトリバーのようだ。

 

あんなにイケ散らかしちゃって。

まぶしすぎて困っちゃう。

 

・・・と、心の中で思っているのはひとまず隠して。

 

「中島さん!お久しぶりです」

 

私は素知らぬ顔で頭を下げる。

 

「本当だよ!ずっと気になってたんだからね。あれからどうなった?」

 

イケ散らかしっぱなしでそう言いながら私の隣に座る中島さん。

 

有岡くんの事なんだろうなーとは思ったけど

 

「え?」

 

とりあえず一回そらとぼけてみる。

 

「ほら!手を繋いでた女の子!彼女だった?」

 

・・・ですよね。

 

「あーそれが・・・」

「え、まさかまだ聞いてないの?」

「いや、聞いたんですけど・・・」

 

私は一呼吸置いた後で言葉を続けた。

 

「多分、彼女じゃないそうです」

「多分ってなんだよ」

 

・・・まぁそうなりますよね。

 

「よくわかんないんですけど、多分、彼女じゃないけど、そばにいてあげたいらしいです」

「何それ。だったら彼女でよくない?」

 

さすが中島さん。

ズバッと正論。

 

「は?意味わかんない。はっきり彼女って言えばいいじゃん」

 

中島さんの正論は止まらない。

 

「まゆみさんの事もキープしときたいのかなぁ?最低だわ」

 

・・・そうなのか?

私はキープされてるのか・・・?

 

「マジでやめといた方がいいよ。そんなはっきりしないやつ。ずるすぎるもん。」

「・・・そうなんですかね・・・」

 

正論過ぎて何も言い返せないけど、何だか有岡くんに申し訳ない気持ちになる。

中島さんに有岡くんのいいところも伝えたいけど、なんていえばいいのかわからない・・・。

 

 

 

 

「あれ?まゆみさん?」

 

そんな時に急に声をかけられて、振り返るとそこには山田さんがいた。

 

「え!?山田さん!?どうしたの!?」

「見学しに来たんだよ。体鍛えようと思って」

 

山田さんは笑顔でそう言うと、中島さんに向かって笑顔で頭を下げる。

中島さんも笑顔で頭を下げる。

 

イケメン同士の挨拶は美しい。

 

 

「まゆみさんは?ここに通ってるの?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ俺も通おうっと。そしたら一緒に通えるもんね」

「え?」

「入会手続きしてこよ。じゃあまたね」

 

山田さんはニコニコしながらそう言うと、中島さんに再度頭を下げて、私にバイバイと手を振って去っていった。

 

 

・・・何かすごい偶然だなー

 

 

 

「まゆみさん、あのイケメン誰?」

 

中島さんが言う。

 

あなたも大概イケメンですけど?

なんて思っていることは隠して。

 

「山田さんっていう取引先の方なんですけど、色々なところで偶然お会いすることが多いんですよね。」

 

とりあえず、山田さんの説明。

 

「へー。どんな人?」

 

中島さんは山田さんに興味深々のご様子。

 

「あんなにイケメンなのに、すごく優しくていい方ですよ」

 

イケメンはイケメンに興味持つんだなー♪なんて思っていたら。

 

「山田さんにしとけば?」

 

中島さんに思いもよらないことを言われて思わず「は?」と言ってしまった。

 

「多分付き合ってないとか言うわけの分からない男なんてやめて、山田さんと付き合えばいいじゃん」

「は!?そんな事言っちゃ山田さんにご迷惑ですよ!」

「何で?山田さん絶対まゆみさんの事好きだって」

「ないないないない(笑)ありえないです(笑)」

 

中島さん、ご乱心が過ぎる(笑)

 

「あんなにイケメンなのに何が不満なの?」

「いやいや!不満とかじゃなくて、山田さんが私の事好きな訳ないじゃないですか(笑)」

 

有岡くんの事を諦めさせたいんだとは思うんだけど、だからって山田さんなんて。

不釣り合い過ぎて現実味がなさすぎるよ(笑)

 

「いや。あれは絶対好きだって」

 

何の根拠があるんだかわからないけど、自信満々にそう言う中島さん。

 

決めポーズとかしてる訳でもないのにこんなに超絶イケメンとかマジでビビる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもね。

正直、有岡くんの事は諦めた方がいいような気はしてるんだ。

有岡くんとは普通の同僚のままでいた方がいいのかもしれないな、とは思い始めてる。

 

有岡くんの事は好きだけど、有岡くんとお付き合いするっていうのは、私だけが望んでいたことで、有岡くんは望んでいなかったっていう事なんだと思うから。

 

このままでいた方が、お互いにとっていいのかもしれないなって。

 

 

 

 

 

 

 

「山田さんの事は別として、有岡くんの事は諦めた方がいいのかなって思ってはいます・・・」

「うん。振り回されるだけだよ。やめて正解だよ」

 

中島さんはまっすぐに自分の意見を述べてくれて、清々しい。

 

「・・・そうかも・・・しれないですね」

 

確かに、振り回されてる感は・・・ある。

このまま、まっすぐに有岡くんの事を想い続けていられるのかは・・・わからない。

 

私の想いが、迷惑になることだけは避けたい。

 

 

 

 

 

 

・・・封印するべきなのかな・・・この想い・・・

 

 

 

 

 

「まゆみさん、おまたせ」

 

聞きなれた声が聞こえ、我に返る。

髙木くんだ。

 

「あ、うん」

「じゃあまゆみさん、また」

 

中島さんはそう言うと、髙木くんに頭を下げて去っていった。

 

去り方まで超絶イケメンだ。

 

 

「え、今の超絶イケメン、誰?」

 

髙木くんが言う。

・・・あ、そっか髙木くんは面識ないのか!

 

「えーーっと・・・白米の伊野尾さんの彼女さんの元カレの中島さん」

「ややこしい(笑)」

「確かにややこしいかも(笑) でもまっすぐでいい人だよ(笑)」

 

私の言葉に「ふーん」と言った後髙木くんは

 

「・・・何かお前最近イケメンにモテモテじゃね?」

 

と言い出した。

 

「は?(笑)モテてはいないでしょ(笑) 確かに最近イケメンさんと知り合う機会が多かったけど」

「今何話してた?」

「有岡くんはやめて山田さんにしとけって言われてた」

「え、そこまで知ってんの?」

 

驚く髙木くん。

そりゃそうだよね。

 

「うん、さっき山田さんがいたからさ、何かそんなことになった(笑)」

「え、透けてるイケメンいたの?」

「うん。偶然会って。見学に来てたみたいなんだけど、入会するって言ってた」

「・・・」

 

私の話を聞いていた髙木くんは少しの間考える素振りをした後で言った。

 

「それもいいかもな」

「え?」

「有岡はいいやつだけど、今の有岡ははっきりしねーし。透けてるイケメンの方がわかりやすいかもな」

「・・・え・・・」

 

何だか、髙木くんに言われると・・・・

 

 

「お前がどうしたいかが一番大事だけどな」

 

 

 

 

 

・・・私がどうしたいか・・・

 

私、どうしたいんだろう・・・?

 

 

 

 

 

「ごめんおまたせー」

 

一足遅れて八乙女くんが来た。

 

「じゃあ、帰るか!」

 

髙木くんが言う。

 

「あ、うん!」

 

私はそれに返事をすると2人の後について歩き出した。

 

 

 

 

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