妄想小説Walk第73話

翌日。

私は会社でお土産のいちごをみんなに食べてもらおうと思って用意していた。

 

「わ!いちごじゃん!どうしたの?」

 

いち早く髙木くんがそれを発見し、聞いてくる。

 

「昨日いちご狩りに行ったから、お土産買ってきたよ」

 

私がそういうと髙木くんは何だかテンションが上がったらしく

 

「マジか!ありがとう!うまそう!」

 

とニコニコしている。

 

何だろう?今日はテンション高いな(笑)

やたら可愛い(笑)

 

と思っていたら。

 

「誰と行ったの?」

 

いつの間にか近くにいた有岡くんにそう聞かれたので

 

「山田さん」

 

と答えると、「えっ」と言葉を発して動きを止める有岡くん。

 

「透けてるイケメンといちご狩り行ったの?」

 

そして、私の方に向きなおしてそう問うてくる。

 

「うん」

「他に誰かいたの?」

「え、いないよ?」

「え。透けてるイケメンと2人でいちご狩り行ったの?」

「・・・うん」

 

何だか様子がおかしくなってきたなぁと思っていたら、そこから有岡くんの質問攻めが始まった。

 

「何で?」

「え・・・誘われたから」

「何で誘ってくれなかったの?」

「いや、私も誘われた身だし」

「何したの?」

「いちご狩り」

「何食べたの?」

「いちご」

「いちご?」

「うん、あとソフトクリーム」

「おいしかった?」

「うん」

「いーなー」

 

有岡くんはかみしめるようにそう言った後、もう一度大き目の声で「いーなー!!」と言い

 

「俺も行きたかったなー」

 

とつぶやく。

 

そんなにいちご狩りが好きだったなんて知らなかったな。

 

「とりあえず、おいしいから食べて!ね?」

 

せめて、気分だけでも味わってもらおうと、私は目の前にあるいちごをお勧めしてみる。

すると有岡くんは

 

「次は俺と行こうね」

 

というので私は「うん!行こう!」と全力の笑顔で答えた。

だけど、よっぽど誘ってもらえなかったことが寂しかったのか

 

「・・・いいなーー!!」

 

再度うらやましがる(笑)

 

「有岡うるせー!(笑)」

 

あまりにうらやましがる有岡くんに八乙女くんが笑いながらやってきて

 

「はい、あーん」

 

と言いながらいちごを有岡くんの口元に持って行く。

それに迷いなくぱくっと食いつくと、もぐもぐと食べる有岡くん。

そして。

 

「うめー!」

 

お気に召したのか、そう言って笑った。

 

「でしょ?はい。もっと食べて!」

 

私はいちごを一粒有岡くんの口に入れる。

もぐもぐ食べる有岡くん。

 

「ほら、有岡。あーん」

 

食べきらないうちに髙木くんがいちごを有岡くんの口元に持って行く。

それも受け入れ、有岡くん、もぐもぐ。

 

「あーん」

 

次は八乙女くん。

受け入れる有岡くん。

 

そこからは三人でランダムに有岡くんの口いっぱいになるようにいちごを詰め込んだ。

 

「*△×〇×*△」

「何言ってるか全然わかんねー!」

 

口いっぱいにいちごを頬張りながら何かを訴える有岡くんを見て八乙女くんがものすごく嬉しそうに笑う。

 

「△×*!」

「だから何言ってんの?」

 

髙木くんも笑っている。

 

「有岡くん、食べてからしゃべろう(笑)」

 

可愛いからもっと口にいちご詰め込んじゃいたいという衝動を押さえつつ言う私。

それに有岡くんは「ん。」と声を出すと、素直にいちごをもぐもぐ食べ、飲み込んでから言った。

 

「練乳つけたい」

「練乳はさすがに買ってきてないなー」

「じゃあ後で買ってこよっと」

 

さすが。

甘いもの好きですね。

 

「俺は素材の味をそのまま楽しもう」

 

髙木くんはそう言っていちごを一口食べ、

 

「うまいね!」

 

と笑顔。

 

「本当だ。うまいね!」

 

八乙女くんも気に入ってくれたようだ。

よかった♪

 

 

 

 

 

「まゆみさん、今日こそは一緒にジム行こう!」

 

急に、有岡くんがそんなことを言いだした。

 

「あ、うん!」

 

そういえば、しばらく一緒にジムに行っていない。

 

「今日は俺らも行くからみんなで行こうぜ!」

 

八乙女くんが言う。

 

「うん、そうだね」

 

4人でジム行くの、何だか久しぶりだな。

楽しみだ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事が終わった私たちは4人でジムに向かおうとしていた。

 

 

トゥルルルルル トゥルルルルル

 

 

有岡くんのスマホが鳴る。

画面を見た有岡くんの顔が一瞬曇った。

が、それを悟られないようにするためか、明るめの声で電話に出る有岡くん。

 

「もしもし?・・・・うん・・・・そっか。・・・わかった。・・・うん・・・」

 

そして、電話を切ると

 

「・・・ごめん。・・・行かなきゃ・・・」

 

目線を落としてそう言う。

 

「そっか・・・残念」

 

電話の相手が何となく想像ついてしまって思わずそう言ってしまう。

 

「本当ごめん!・・・また明日・・・」

 

有岡くんも残念だと思ったのか、段々声が小さくなる。

 

「うん!また明日ね!」

 

そんな姿を見ていると、何だか元気づけたいような気持ちになってしまって、私は出来るだけ明るい声でそう言って手を振った。

有岡くんはそれに軽く手を振り返すと歩き出す。

 

 

 

 

 

「・・・何やってんだよ有岡・・・」

 

そんな有岡くんの後姿を見て髙木くんがつぶやく。

 

「用事があるならしょうがないよ。行こうぜ」

 

八乙女くんは空気を変えるかのように明るくそう言うと歩き出す。

私と髙木くんはそれに続いて歩き出した。

 

 

 

 

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