妄想小説Walk第7話

「おはよ」

髙木くんだ。

「どした?何か疲れてる?」
「え?」

髙木くんに聞かれてちょっと驚いた。

 

・・・確かに街で有岡くんを見かけたあの日から気持ちは沈みがちなのかも・・・。

 

髙木くんは変化にすぐ気づいてくれる。
でも、今日は気づかれると困る・・・。

 

「そんなことないよ」

私は笑ってそう答えた。

「そう?」
「うん。あー最近テレビの見すぎだから疲れてるように見えちゃうのかも」

精一杯の嘘。

それに髙木くんは「そうなんだ」と笑った後、話を続ける。

「あ、スノボ、来週か再来週はどうかって話になってるんだけど、都合どう?」

髙木くんの言葉に一瞬動揺してしまう。

 

そっか。スノボ。行くんだっけ。
今更断れないし・・・

覚悟決めるか。

 

「私はどっちでも大丈夫よ。合わせる」
「本当に大丈夫?」

何かを察してくれたのか、髙木くんはそう言う。

「うん。」

私が笑顔でうなづくと

「無理すんなよ」

と優しく笑ってくれた。

「・・・ありがとう・・・」

髙木くん、優しいな・・・

 

「おはよー」

八乙女くんが出社してきた。

「おはよー」

「八乙女、まゆみさん来週でも再来週でもどっちでも大丈夫だって」
と髙木くん。
さっきの話だ。

「スノボ?おっけー!じゃあ有岡が大丈夫なら来週にする?」
「うん、私は大丈夫だよ」
「わかった。じゃ空けといて」
「おっけー。あ、八乙女くん、こないだの件なんだけど・・・」

仕事の事で八乙女くんに聞きたいことがあったので私はそう切り出した。
たまには真面目に仕事しないとね。

 

 

 

・・・

 

 

 

その日のお昼休みが終わる頃。

「ねーねーまゆみさん今日誕生日なんだって?」

有岡くんがニコニコしながら近づいてきた。

「え?・・・ああ!言われてみればそうかも 」

普通に忘れてた(笑)

「忘れてたの!?ダメだよー!」
「すみません・・・てか何で知ってるの?」
「実はさっき書類見たら書いてあった 」
「そうなんだ(笑)」

「おめでとう!はい!これ!」

有岡くんが笑顔で差し出してくれたのは菊の花束だった。
えっと・・・・

「あ、ありがとう!」

きっとこの子、菊の事よく知らないんだわ。
そうに違いない。
むしろ知っててプレゼントしてくれてるんだとしたら私は死ぬべきか(笑)

有岡くんは満足そうにニコニコしている。

 

・・・やっぱり知らないんだな。
黙っとこう。
ご厚意だもんね。うん。複雑だけど(笑)

 

「あれ?まゆみさん今日お墓参りにでも行くの?」

髙木くんだ。

「えっいや、あの・・・」
「だってその花・・・」
「あ・・・あのっその・・・」

私が手に持っている菊を指差して言う髙木くんに何も言えず、挙動不審になる私。

「髙木さん、この花って何かあるんですか?」

何かを察したのか、有岡くんがおどおどしながら言う。

「え?菊っていったらお墓参りとかお葬式の時に見るやつだろ?だからお墓参りにでも行くのかと思って」

 

ああ・・・・言ってしまわれた・・・(笑)

 

思わず有岡くんを見る。
やっちゃった・・・っていう顔で口パクでやべぇ・・・って言ってる。

 

 

やだ。可愛い。←

 

 

「まゆみさんごめん・・・俺知らなくて・・・」
「大丈夫!気にしないで!その気持ちだけで十分嬉しいから! 」
「え?この花、有岡からのプレゼント?ウケるんだけど!! 」

髙木くんが笑う。

「そーなんすよ!やっちゃったなーーー・・・まゆみさん、本当ごめん!悪気はないから!」
「あったらやだよ(笑) 本当、気にしてないから(笑) 大丈夫だから(笑)」

有岡くんが必死過ぎて思わず笑ってしまう。

「いや、有岡。これは本当失礼だから。飯でもおごってあげなよ」
「そーですね!」
「いい!いい!いい!いい!逆に申し訳ないからいいよ!!本当、気持ちだけで!」

私は慌てて言う。

 

何なら二人っきりで食事とか今は辛すぎるから!
マジ勘弁!
気持ちが抑え切れなくなっちゃう。

 

「え・・・そう・・・?」

私の迫力にタジタジの有岡くん。

・・・何かごめん・・・。

 

そんな時。
「みんな、何話してんの?」
と陽気な八乙女くん登場。

何かありがとう!

「あれ。まゆみさん、きれいな花だね。誰かにもらったの?」

私が手に持っていた菊を見て言う八乙女くん。

「うん。キレイでしょ?」
「キレイ!よかったねーーー」

猫なで声でにこやかにいう八乙女くんにちょっと癒される(笑)
この子も知らないのね(笑)

髙木くんも有岡くんもニヤニヤしてる。
教えてあげればいいのに。←

 

 

 

 

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