妄想小説Walk第62話

週末。

私は1人で街をブラブラしていた。

 

何となくぼんやり歩いた後、いつものカフェに入る。

ここの窓際の席に座って外を眺めながらお茶をするのを結構気に入っている。

 

 

 

 

 

 

いつものようにカフェラテを頼み、デザートを食べながらのんびり外を眺める。

 

行き交う人々。

その中に。

 

いつもなら見るはずのない光景があって、私は一瞬、私の時間が止まったかのような錯覚を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには。

女の子と手を繋いで歩いている有岡くんの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・あの子・・・。

前、有岡くんと一緒に歩いてた子だ・・・多分。

 

有岡くん彼女いないって言ってたよね・・・?

でもこんな街中で手を繋いで歩くって事は・・・

 

 

 

 

は。

私も有岡くんと手を繋いだことある・・・

 

 

 

 

有岡くんは誰とでも手を繋ぐの・・・?

え、そんな人なの・・・?

 

 

・・・いや、そんな人じゃないって。

有岡くんはそんな人じゃない。

 

 

 

だったら・・・

私と手を繋いだのはただの気まぐれで

あの子は「彼女」なのかもしれない・・・。

 

 

 

 

 

 

受け入れたくない、現実なのかもしれない想像が頭の中を走り抜ける。

ただ、ただ、混乱しかない今の私の頭の中。

一体、何が起きてるの・・・?

 

 

 

 

 

もし、あの子が彼女だとして、あの子の存在があるのに私の手を握ってきたのだとしたら、私は有岡くんの事を許せないかもしれない。

「彼女」という存在を大事に出来ない人なんて、信用できない。

 

 

 

 

 

 

・・・でも、あれは有岡くんじゃないのかもしれない。

よく似た人なのかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ああ・・・・

 

 

 

もう何か、考えれば考えるほど、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直。

私はもう、この恋はうまくいくんだって思ってた。

有岡くんは私の気持ちに気づいてくれていて、いつか付き合えるんだって勝手に思い込んでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当、バカだな。私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ。まゆみさん?」

 

頭の中で色々な感情がぐるぐる回っているときにそんな声で現実に戻され、反射的に声のした方を見る。

 

声の主は山田さんだった。

 

「あ!お疲れ様です!偶然ですね!」

 

頭の中のスイッチが切り替わる音がする。

とっさに仕事モードになる私。

 

「本当、偶然ですね!」

 

山田さんはさわやかな笑顔でそういうと、何か思いついたのか、「あ!」といい更に笑顔で言葉を続ける。

 

「カラオケ行きません?」

「え!?」

 

急に思いもよらないお誘いを受けて混乱する私。

 

「カラオケ。今から。一緒に。」

「今からですか?」

 

今から2人でカラオケ?

え、ちょっと意味が分からない。

 

「はい。・・・あ、もしかしてこの後何か約束が?」

「いえ、ないですけど・・・」

「じゃ決まり。さ。行きましょ!」

「え・・・あ・・・はい・・・」

 

私は山田さんに促されて席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラオケに着いた。

部屋に入ると山田さんは嬉しそうに歌う曲を探し始める。

 

「カラオケ、お好きなんですね」

 

その姿がかわいらしくて、思わずそう声をかけてしまった。

 

「はい♪大好きです♪」

 

にこやかにそう言いながら、山田さんは曲を選択。

ほどなくして流れてきたのは「愛のかたまり」という歌だった。

 

 

 

 

 

 

山田さんの声は甘く、この曲の世界観にすごく合っている。

 

 

・・・何か・・・素敵な歌だ・・・

 

 

 

 

 

パチパチパチパチ・・・

 

山田さんが歌い終わると、私は思わず拍手してしまっていた。

 

「すごい!!お上手ですね!!」

 

こんなにイケメンで歌までお上手なんてずるすぎる。

 

「ありがとうございます。さ、次はまゆみさん歌って!」

 

山田さんは少し照れた素振りでそういうと私にリモコンを渡した。

 

「えっちょっと待ってくださいすぐには無理」

「大丈夫。待ちます(笑)」

「わ。はい。急いで探します!」

 

私は慌てて歌えそうな曲を探した。

 

 

 

 

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