妄想小説Walk第42話
お祭り当日。
私は美容院で浴衣の着付けとヘアメイクを済ませて約束の場所に出掛けた。
ちょっと早めに着いちゃったな・・・
・・・あら。
約束の場所に着くとそこには浴衣を着た伊野尾さんが腕を組んで待っていた。
「伊野尾さん!早いですね!」
私は慌てて伊野尾さんの所に行き、声をかける。
「まゆみさんやっときたーーーー1人で浴衣着て待ってるの、結構恥ずかしかったよーーーー」
口をとがらせて言う伊野尾さん(笑)
「ですよね(笑) でもすごい似合ってますよ!」
「そう?まゆみさんも、似合ってるよ」
私の言葉に伊野尾さんがそう言う。
いつもの伊野尾さん節だ(笑)
何かちょっと安心。
「そういえば大ちゃんは?一緒じゃないの?」
「有岡くんともここで待ち合わせてます」
私が言うと伊野尾さんは「あ、そうなんだ」と笑った。
「伊野尾さん、今日は本当に来てくださってありがとうございます。有岡くん、喜ぶと思います」
私は何となくそう言って頭を下げる。
何か、来てくださったことが素直に嬉しかった。
「何でまゆみさんがお礼言うの?(笑) そんなの大ちゃんに言わせときゃいいんだよ(笑)」
「あ、何となく(笑) 来てくださって嬉しかったから(笑)」
「そっか(笑) ありがとう(笑)」
何か変な感じになっちゃったな(笑)
まぁいいか(笑)
その後、私たちがたわいもない話をしていたら、あやかさん、ともさん、知念さんが3人で待ち合わせ場所に現れた。
「あ!慧ちゃん浴衣着てる!」
浴衣姿の伊野尾さんを見てあやかさんは嬉しそうだ。
「うっせーなお前も着てるだろ?」
「うん、着てる(笑) 可愛い?」
「可愛くねーよ」
あやかさんの言葉にそっぽを向いてそういう伊野尾さん。
いや、そこは「可愛い」でしょうよ伊野尾さん・・・
照れてるのかな?
「ごめんみんなおまたせ!」
その時、有岡くんが現れた。
・・・浴衣だ♪
いや、そりゃ浴衣なんだけどさ。
ほら、やっぱりさ。
・・・カッコイイ・・・♪♪♪
「大貴遅いよー」
知念さんが口をとがらせて、まあ何ともかわいらしいお顔でそういう。
「知念!ごめん!」
「今日は大貴のおごりね!」
「うん、いいよ♪」
大貴はいつだって知念に激甘(笑)
きっとこの関係性は昔から変わらないんだろうな(笑)
有岡くん、知念さんにデレデレだもんね(笑)
「みんな揃ったね?じゃあ行こう!」
有岡くんの掛け声でみんなが動き出す。
「まゆみさん」
「ん?」
「待たせてごめんね」
「いいよ」
みんながそれぞれに何となく歩き出した中で声をかけてくれて謝ってくれる。
何だかそれが嬉しい。
「ありがとう」
そして、この笑顔よ・・・♪
いつもこの笑顔にやられるのよ。
悔しいけど好きだ・・・♪
「いのちゃん、ちゃんと来てくれてよかったわー」
有岡くん、嬉しそうだ。
「そうだね!」
本当、来てくれてよかった。
何よりも、あやかさんが本当嬉しそうで♪
「知念とともちゃんもいい感じだよね?」
「うん!」
ともさんも目がハートになってる!
みんな、本当楽しそうで、その姿を見てるだけで幸せな気持ちになる♪
来てよかったな♪
「あ!金魚すくいあるじゃん!みんなで対決しよ!対決!」
有岡くんが大声ではしゃぐ(笑)
「え?対決?」
「そう!6人いるから、3チームだな!」
どうやら対決するのは決定事項らしい(笑)
「じゃあ2人一組だね」
知念さんも意外とノリノリだ(笑)
「ち、知念くんは誰と組むの・・・?」
ともさんがおそるおそる聞く。
それに知念さんは一瞬きょとんとした後、
「僕はともちゃんとだよ?違うの?」
と言った。
「ううん!!!違わない!!!!!」
「だよね♪」
嬉しそうに言うともさんににっこり笑顔の知念さん。
・・・すごい。
きっとこれが巷で噂の小悪魔だな・・・。
あの技、欲しい・・・
「まゆみさん!俺と組も!!」
知念さんがともさんと組んだのを見てすかさず有岡くんがそういう。
そうだよね。
伊野尾さんとあやかさんに組んでもらわなきゃ!
「うん!頑張ろうね!」
「うん!」
伊野尾さんとあやかさんの距離が縮まるよう、お手伝いがしたい!
頑張る!
「慧ちゃん、私と組んでくれる・・・?」
「・・・余ってるからしょうがねーだろ」
あやかさんの言葉に伊野尾さんはそうつぶやく。
「ありがとう♪」
それでもあやかさんは笑顔だ。
「・・・足ひっぱるなよ」
嬉しそうな笑顔のあやかさんを見ようともせずに伊野尾さんがポツリ。
「わかってる♪」
でもそんな伊野尾さんに対してあやかさんは更に笑顔でそういう。
・・・なんて可愛いんだ・・・!!!!!
この恋、絶対うまくいってほしい!!!!!
伊野尾さんのせいでぎこちなくなってしまっている2人の関係を私はどうしても改善したくなった。
「・・・」
ふと、有岡くんを見る。
有岡くんも同じこと考えてくれてたらいいな。
そう思ってたら。
「ん?」
私の視線に気づいたのか、有岡くんがそう言って私を見る。
私は慌てて首を横に振り下を向いた。
「最初は女の子対決にしようか」
「え?」
「1回戦が女の子、2回戦が男。1分間で何匹釣れるかってのはどう?」
有岡くんは金魚すくいの事を考えていたらしい(笑)
「いいと思う(笑)」
「じゃあそうしよう」
有岡くんはそう言うと、みんなに今決まったルールを伝えに行った。
そして、これから私たちの勝負が始まる。