妄想小説Walk第26話
仕事を終えた私と髙木くんは2人で飲みに出掛けていた。
「あの時さ。八乙女、薮さんにこそって何か言ってたろ?」
話題はやっぱり八乙女くんとゆかさんの事。
「え?そうなの?」
ゆかさんの方を見てたから全く気付かなかった。
「うん。八乙女、薮さんにありがとうって言ってたんだと思う」
「マジか!!!じゃ確実じゃん!!!やばいテンション上がる♪ 」
「ね!俺も八乙女の写真送り続けた甲斐があったわ♪ 」
「本当だよね! 髙木くんのおかげかも♪ 」
そうだった(笑)
この人、ゆかさんに八乙女くんの写真を送り付けてたんだった(笑)
「てかお似合いだもんなー2人。いいなぁ・・・」
「お前もこの波に乗っとけよ!」
思わずつぶやいてしまった私の言葉に髙木くんがそういう。
「乗りたいよ・・・乗れたら最高だけど、どうすればいいかわかんない 」
何よりも嫌われたくない。
「押しとけ 」
「いや、怖い(笑) 」
「じゃ知らね」
「ですよね(笑) 」
何かいつもの件みたいになってきたな、これ(笑)
髙木くんの言ってる事は絶対正しいんだけど、どうしても一歩踏み出せないんだよね・・・。
やっぱり、怖くて。
「そういえば」
私はふいに先日の有岡くんとのランチの時の事を思い出してそう切り出す。
「この前、有岡くんに休日何してるか聞かれてさ」
「うん」
「今週は1人で買い物してたって言ったら、やたら”1人”って事に食いついてきたんだけど、何でそこに食いついたのか未だにわからないんだよね」
あの時は本当、不可解だった・・・。
「1人?何で?」
「わかんない」
「え、お前本当に1人だったの?」
「え?うん、だと思うけど・・・」
そう言われると何か不安になる・・・。
あの日は確か、1人で買い物してて・・・
・・・あ。違うや。
「そういえば1人で買い物してたら伊野尾さんにバッタリ会ってお昼ご飯ご一緒させてもらったんだった!忘れてた!!」
ヤバい本当に忘れてた!
有岡くんのこと不可解とか言ってごめん(笑)
「1人じゃねーじゃん。てか何で忘れんの?」
ええ、おっしゃることはごもっともです、はい。
「いや、うっかり(笑) 有岡くんに急に聞かれて驚いたってのもあるけど(笑) 」
「・・・ったく・・・」
髙木くんはそういうと、少し考える素振りをしてから続けて話しだした。
「2人でいる所を見られたとか?」
「うん、私もちょっとだけそう思ったけど、でも2人でいたのってほんの一時間ぐらいなんだよね。それに、見たとしたら声かけてくると思うんだけど・・・」
有岡くんと伊野尾さんは仲良しだから、きっと気軽に声をかけると思う。
「邪魔しちゃいけないと思ったんじゃない?」
「え!?邪魔!?邪魔な訳ないじゃん!?むしろ私が2人の邪魔しちゃいけないぐらいじゃない!?」
「わかったから落ち着いて(笑) 」
どうやら興奮してしまったらしい私は髙木くんに諭されてハッとした。
「ごめん 」
取り乱してしまった(笑)
申し訳ない(笑)
「あのさー。お前俺の事雄也って呼べよ」
「・・・はい?」
何の前触れもなく髙木くんが言った言葉の意味がわからなくて、私は一瞬戸惑ってしまう。
「・・・何で???」
そんな私に髙木くんはニヤッとして
「有岡を嫉妬させようぜ」
と言った。
「え?私が髙木くんの事を雄也って呼んだら有岡くん嫉妬するの?」
「わかんねー(笑) だから試してみようぜ(笑) 」
「しないと思うけどなー」
「わかんねーじゃん。嫉妬する有岡見たくない?」
「・・・見たい」
見たいよ、見たいですけどね。
「でも多分してくれないって」
「いいから。とりあえず呼んでみて」
「え?今?」
「うん。今」
・・・そっか。
髙木くんがそういうので
「雄也」
と呼んでみたら
「何だよ」
と今まで聞いたことのないぐらいのイケメンボイスでそう言われて
「何そのイケボ!!!!」
私は思わず叫んでしまった(笑)
「え?」
「声めっちゃかっこいいじゃん!今まで気づかなかったけど!」
「いや、気づけよ」
「少女漫画に出てきそうなセリフ言って欲しい 」
「どんなセリフ?」
なぜかノリノリな髙木くん(笑)
何かいいセリフないかなぁ・・・
キュンキュン来るやつ・・・
・・・あ!
「さっきの言って!!俺の事雄也って呼べよって 」
私の言葉に髙木くんは一呼吸置いた後、超イケメンボイスで言った。
「お前さぁ。俺の事雄也って呼べよ」
「キャー!!!!!ゆーやーーー!!!!!」
イケメン過ぎて思わず叫んでしまう(笑)
やだ(笑) 私、酔ってるのかも(笑)
でも驚くほど楽しい(笑)
「ばっかじゃねーの!!(笑) 」
髙木くんもいつもの声でそういいながらもとても楽しそうだ(笑)
「その声本当才能だよー! もっといいセリフないかなぁ・・・ 」
・・・
考えてはみるものの、全く思いつかない。
ちくしょー我ながらポンコツすぎる!
私が悔しさをかみしめてたら髙木くんが
「今夜は帰さない」
と言ってきたので、ちょっとびっくりして固まってしまった。
「え?これダメだった?女の子、こういうの好きじゃないの?」
そんな私に髙木くんが笑いながら言う。
「いや、カッコイイんだけど、私には刺激が強すぎた(笑) あーびっくりした(笑) 」
「あ、そっか、まゆみさんはこういうのは有岡に言って欲しいか(笑) 」
「いや! それはそれでどうしていいかわかんないよ! 」
慌てる私を見て、髙木くんは笑ってる。
全くもう・・・