妄想小説Walk第27話

髙木くんのイケメンボイスを発見したその日から、私と髙木くんの間で”イケボの雄也”というキャラが生まれた。

髙木くんはどこかからネタを仕入れてきてるのか自分で考えてるのかはよくわからないけど、ちょいちょい私に仕掛けてくる。
それも、忘れたころにふいに仕掛けてくるので、私は毎回キュンキュンさせられていた。

 

 

 

 

「なぁ、お前疲れてるんじゃない?」

・・・来た(笑) 雄也降臨(笑)

「無理すんなよ。お前が倒れると俺が困るんだから」

 

 

キャー!!!ゆーやーーー!!!!

 

 

心の中ではそう叫んでいるけれど、会社だから口に出すこともできず(笑)
私は口から「ぶほっ」と気持ち悪い音を立てて吹き出し、下を向いてニヤニヤするしかなかった。

そんな私に髙木くんはニコニコして

「今の何点?」

と採点を求めてくる(笑)

「んーーー85点?」
「嘘だろ!?」

私のつけた点数に髙木くんは不満なようだ。

「ニヤニヤしてたじゃん!90点行ったろ?」
「もちろん、カッコよかったよ!でも髙木くんならもっとできるはず!今後に期待するっていう意味で85点(笑) 」
「えーマジかよ!まゆみさん結構辛口だよね」

髙木くんはブツブツ言いながら去っていく。

 

面白いなー(笑)
また雄也が降臨するのが楽しみだ♪

 

 

 

 

 

 

仕事が終わった。

今日は仕事も早く終わったし。
帰ってのんびりしようかな♪

私がそんなことを考えながら帰り支度をしていると、有岡くんがズカズカとやってきて

「ねえ、この後予定ある?」

と仏頂面で言った。

「な、ないよ」

どうしたんだろう?
珍しくものすごく不機嫌だ。

「じゃ来て」

有岡くんはそう言うと私の腕をつかんで引っ張る。
私はつかまれてない方の手でとっさに自分のバッグをつかむと、何も言わずにそれに従った。

 

 

 

 

 

車に乗せられて連れてこられたのは海だった。

何も言わずに車を降りた有岡くんは砂浜に座り、じっと海を見つめている。
私も車を降りその隣に座って有岡くんと同じように海を見つめた。

 

 

 

 

・・・なんだろう。
海を見つめてるだけなのにすごく癒される。

言葉なんていらない。
そう思えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

しばらく2人でそうした後、有岡くんがぼそっとつぶやいた。

「付き合って欲しかったんだ」

・・・え?

「こ、ここに来るのを・・・?」
「そう」

 

 

 

・・・ですよね。

 

 

 

ちょっと期待しちゃった。
バカだな、私。

 

「ちょっと嫌なことがあって」
「そっか・・・。話せば楽になること?もしそうなら、私で良ければ聞くよ?もちろん話したくなければ聞かないけど」
「うん・・・」

何かを考えているのか、有岡くんはそう言ったまま海を見つめて黙り込む。

 

 

 

 

そっか。話したくないんだな。
じゃあ聞かなくていいや。

 

 

 

 

・・・にしても、海って何でこんなに力を持ってるんだろう。
ぼーっと眺めてるだけで落ち着いてくる。
すごい力だな。
この力で、有岡くんの心も癒されてくれるといいな。

 

 

 

 

「まゆみさん」

ふいに、有岡くんに名前を呼ばれた。

「ん?」
「付き合ってくれてありがとう」

そういうと、有岡くんはにこっと笑う。

「いいよ。少しはお役に立てたかな?」
「うん。ものすごく」
「よかった」

有岡くんに笑顔が戻った。
よかった。
笑ってくれるだけで安心する。

 

 

「前に有岡くん私に言ってくれたよね?力になりたいって」
「うん。今でも思ってるよ」
「ありがとう。私も思ってる。有岡くんの力になりたいって」

 

ずっと伝えたかった。
私で力になれるのなら、いつだって有岡くんの力になりたいって。

 

「本当?」
「本当。」
「・・・ありがとう」

 

ぐーーーっ

 

有岡くんがそう言った時、有岡くんのお腹が鳴った。

「安心したらお腹が空いてきちゃった」

有岡くんは顔を赤らめて言う。

 

・・・可愛い・・・♪

 

「何かおいしいもの食べに行こうか(笑) 」
「そうだね(笑) まゆみさん時間大丈夫?」

私の言葉に有岡くんはそう言う。

「うん、大丈夫」
「じゃあ焼き肉食べに行かない?」
「いいよ」

そんな訳でその日私たちは焼肉屋さんでご飯を食べてから家に帰ったのだった。

 

 

 

 

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