妄想小説Walk第23話
休日。
今週は何だかいろいろあったなーなんて思いながら一人で買い物をしていたら
「あれ?まゆみさん?」
と声をかけられ、振り向くとそこには伊野尾さんが立っていた。
「あら!伊野尾さん!お疲れ様です!何やってるんですか?」
「ご飯食べようと思ってフラフラしてた。あ、まゆみさんご飯食べた?一緒に食べない?」
「いいですよ」
ちょうどお腹が空いていた。
「何食べたい?」
「伊野尾さんのおすすめが食べたいです。伊野尾さんおいしいご飯屋さんたくさん知ってそうだから教えて欲しい」
「そう?じゃあおいしい和食屋さんに行こうか」
「はい♪ 」
やった。おいしいご飯が食べられる!
和食屋さんなんて一人で行けないし、期待値上がるわー♪
・・・にしても、やっぱり私服姿の伊野尾さん、キレイだな。
顔がきれいな人は何着ても似合うんだよね、やっぱり。
「にしても偶然だよねー」
「本当に!びっくりしました!」
私たちはそんなことを言いながらお店に向かった。
お店では真面目な話や楽しい話もしつつ食事をした。
伊野尾さんが教えてくれた和食屋さんの料理はどれも本当においしくて、私の胃袋は幸せで満たされた。
「でも何か意外でした」
「何が?」
私の言葉にきょとん顔の伊野尾さん。
「伊野尾さんって適当な人なんだと思ってたら、すごく芯のしっかりした人なんですね」
伊野尾さんの考えを聞かせて頂いたことで感じた自分の気持ちを私は伊野尾さんに伝えたくなってそういう。
「え?そうかな?」
「はい。高校は行かなくてもよかったって思ったけど、行ったことを無駄にしたくなかったから大学への進学を決めた、なんて、私には思いもよらないことでした。すごいと思います」
「そんな風に褒められることでもないと思うけどな」
「いや、尊敬します!意外と女性に対しても誠実みたいだし。」
顔の綺麗な人は裏に何かあると思ってたけど、伊野尾さんは顔だけじゃなく心も魅力的な人みたいだ。
そんな人っているんだな・・・。
「ねぇ、俺の事どんな風に見てたの?(笑) そんなにダメなやつに見えてたの?(笑) 」
「はい(笑) てっきり女性にだらしないのかとばっかり(笑) それだけ顔がきれいだったら女の子には困らないだろうから」
「まゆみさん、俺の顔の事ばかりいうよね(笑) 」
私の言葉に伊野尾さんは笑いながら言う。
「だってきれいなんだもん。実際モテるでしょ?」
「うん」
「やっぱり。でも当然です。伊野尾さん優しいし」
適当な発言にちょいちょい騙されるけど、本当はすごく優しい人な気がする。
「じゃ俺と付き合う?」
出た。適当発言(笑)
「それとこれとは話が違う(笑) てか言ったでしょ?本心じゃないことはバレバレですよ(笑) 」
「えー(笑) 」
「何なら絶対YESって言わないってわかってて言ってるでしょ(笑) 」
「何だバレてるんだ(笑) 」
「バレてます(笑) 有岡くんは騙せても私は騙されません(笑) 」
「騙されないかー(笑) そう言えば大ちゃん元気?」
思い出したように言う伊野尾さん。
実際思い出したんだろうけど(笑)
「おかげさまで元気になりました!その節はご迷惑をおかけしました」
「看病してあげた?」
え?そう来る?
「しないですよー(笑) 」
「しなかったの?してあげればいいのに」
「いやいや、インフルだし(笑) 」
彼女でもないし。
という言葉はとりあえず飲み込んでおいた。
「あ、インフルなんだ。じゃあ次はしてあげなよ」
「え?あ、はい・・・」
出来る事ならしてあげたいけどね・・・・
私、そんな立場じゃないんです・・・・
てか、何でしょうか。
何なんでしょうか。
「あ。俺もう行かなきゃ」
時計を見て伊野尾さんがそう言ったので、私たちはお店を出て解散することにした。
「じゃあねーばいばーい」
「ごちそうさまでした!ありがとうございました!」
伊野尾さんに頭を下げ、私は歩き出す。
・・・伊野尾さん、最近何か含んだような言い方するよね。
・・・。
いや、気にしないことにしよう。
伊野尾さんの言葉は気になりつつも私はそれを振り切るようにただただ歩き続けた。