妄想小説Walk第21話
「どうもー弁当屋でーす」
有岡くん家のインターホンに向かってそう言ったら
「あははは!ご苦労様です!」
笑い声と元気な声が聞こえてきた。
声聞くだけでもホッとする。
ほどなくしてマスク姿でニッコニコの有岡くんが出てきた。
うん。やっぱり元気な姿見たら安心する。
昨日、スーパーで散々悩んだ挙句に買い物しまくって、レシピ見まくって、あーでもないこーでもない言いながら決めたおかず。
病み中の有岡くんが元気いっぱいの有岡くんに戻れるように、願いを込めて作った。
料理は得意じゃないけれど・・・
有岡くんにお願いされたらなるべく期待に応えたくなるのです・・・・
「お口に合うかどうかわかりませんが。精一杯作らせていただきました!」
私はそう言いながら作ってきたお弁当を差し出す。
そう。これが今の私の全力です(笑)
「わぁ♪ ありがとう♪ すげー楽しみ♪♪ 」
・・・やばい。目キラキラしてる。
何それ。可愛すぎなんですけど。
どうしよう。
どうしよう!!!!←
「まゆみさん、本当ありがとう!本当嬉しい!!いやー楽しみだなぁ♪ 」
何かものすごく喜んでくれてる・・・!!!!!
「そんなに喜んでくれて私も嬉しいよ!じゃあ私、会社行くね。お大事にね」
「うん、ありがとう!!」
私はそのまま歩き出した。
・・・んだけど。
ふと、振り返ってみると。
お弁当を持って笑顔で手を振ってくれる有岡くんが。
・・・やばい。
嬉しすぎて泣きそうだ。
私はなるべく気づかれないように笑顔で手を振りエレベーターに乗り込んだ。
会社に着いたのはいつもより1時間早い時間だった。
さすがに早すぎたかな(笑)
でも、やっておきたいことがあるからいいか。
なんて思いながらエレベーターを降りた。
どんがらがっしゃーん!!
その時、廊下の方からすごい音が聞こえて、そして
「もー!!圭人!!」
「sorry,Miyuki・・・」
という声が聞こえてきた。
私がそっと廊下をのぞいてみるとバケツがひっくり返っていて、その水をかぶったであろう男の子と、手に持ったタオルで男の子を拭いてあげているみゆきちゃんがいた。
「あーみゆきちゃんおはよー♪ 」
「まゆみちゃんおはよ♪ 」
みゆきちゃんはうちの会社に入っている清掃業者の方で、私が入社した時から仲良くしてもらっている。
私の出勤時間には他のフロアに行ってる事が多いのでなかなか会えないけど。
「すごい音がしたけどどうしたの?」
「圭人がバケツひっくり返しちゃって。」
私の質問にそう答えるみゆきちゃん。
「やっぱり?(笑) 」
そうじゃないかとは思ってたけど(笑)
「圭人、ここの会社のまゆみちゃん。ご挨拶して」
みゆきちゃんは傍らにいる男の子にそう言う。
「初めまして!けーとです!」
水浸しだけど可愛い笑顔。
「あ、まゆみです(笑) よろしくお願いします。新入りさん?」
私は圭人くんに頭を下げ、みゆきちゃんに問う。
「うん。社長の息子さんで今、一応研修中って事になるのかな。帰国子女だから日本語が不自由なんだけどね(笑) 」
「そうなんだ(笑) 」
日本語不自由って(笑)
「まゆみちゃん今日早いね。仕事大変?」
「そういうわけじゃないんだけど、1人インフルでしばらく来れないからフォローしとこうかなって思って」
「インフルかー大変だね。まゆみちゃんも気を付けてね」
みゆきちゃんはいつだって気遣ってくれる。
優しい子だ。
「ありがとう♪ みゆきちゃんもね」
「うん、ありがとう♪ 」
「じゃあ、また♪ 」
「うん、またね♪ 」
みゆきちゃんはそう言って圭人くんとともに去っていった。
圭人くんが私にペコペコ頭を下げながらみゆきちゃんについていく姿は笑っちゃうぐらい可愛い(笑)
何かいいコンビだな(笑)
朝からほっこりと癒された気分♪
さ。仕事がんばろっと♪
お昼時。
LINEに着信が。
・・・有岡くんだ。
お弁当の事かな?
お口に合ってるといいんだけど・・・
私はちょっとドキドキしながら画面を開く。
そこには。
ご飯を頬張ってる有岡くんの写真があった。
”待ちきれなくて早めに食べちゃった(笑)
すっごいおいしかったよ!ありがとう!
また作ってね♪ ”
・・・感無量!!!!
頑張ったかいがあります!!!!!
全て報われます・・・!!!!!!!!
”お口に合ったみたいでよかった!
早く復帰してね♪ 待ってるよ♪ ”
”はーい”
良かった。お口に合ったんだ。
本当よかった。
改めて写真を見る。
・・・可愛い・・・
こんな可愛い顔が見れるなら何度でも作らせて頂きますとも・・・!
もうこの顔が見れるだけで幸せだ・・・♪
私はそんなことを思いながらしばらく写真を眺めていた。
髙木くんも八乙女くんも外出してたからよかったけど、もしこの姿を見られていたらさぞかし気持ち悪がられたであろう。