妄想小説Walk2 エピソード9

今日は山田さんとジムに行くことになっている。

 

本当は山田さんと有岡くんと三人で行く予定だったのだが、急遽今日中に仕上げなきゃいけない書類が出来てしまった為有岡くんは行けなくなり、山田さんと私の2人でジムに行くことになったのだ。

 

 

「いーなー俺も行きたかったなー」

 

山田さんと私が帰ろうとした時。

有岡くんはそう言って拗ねた素振りを見せる。

それもまた可愛い。

 

「大ちゃんはそれやんなきゃじゃん」

 

そんな有岡くんに山田さんがニヤニヤしながらそう言うと

 

「山田やって」

 

有岡くんが山田さんに仕事を押し付けようとする。

 

「やだよ!てかそれ大ちゃんじゃないとわかんないやつでしょ」

「大丈夫だって。山田ならできる」

「無理!お前がやれ」

「あーあー俺も行きたかったなー」

 

山田さんに強めに拒否された有岡くんはそうぼやくと、トボトボと仕事に戻る。

なんて微笑ましいやり取り(笑)

 

でも、そんな有岡くんの後ろ姿を見ていると何だかかわいそうに思えてきて。

 

「私、手伝おうかな・・・」

 

私は気づいたらそうつぶやいていた。

が。

 

「甘やかしちゃダメ!行くよ!」

 

山田さんにそう言われ、強引に連れて行かれてしまった。

 

有岡くん、ごめん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久々に見るジムの玄関。

山田さんの後ろを追う形でジムに入る。

 

・・・ものすごく久しぶりだ・・・

 

私は思わずぐるっと周りを見渡してしまう。

そんな時。

 

「あれ?まゆみさん?」

 

誰かにそう声をかけられた。

声の方を向くと、そこには中島さんが立っていた。

 

「中島さん!お久しぶりです!」

 

あまりに意外な人物だったので私のテンションも上がる。

 

「本当久しぶり!」

 

相変わらずゴールデンレトリバーのような素敵な笑顔!と思っていたら。

 

「やめたのかと思った!」

 

と素直な意見を頂いた。

 

「やめてないです(笑)」

 

まあほとんど来てないからそう思われても仕方がないんだけど(笑)

相変わらず直球な中島さんに思わず笑ってしまう。

 

 

 

そんな中島さん。

山田さんの姿を見つけると

 

「すごいイケメン!彼氏さん?」

 

と笑顔。

 

「え!?そんな!滅相もない!!」

 

私は慌てて否定する。

 

「違うの?こんなにイケメンなのに」

 

中島さんの瞳は真っすぐだ。

 

・・・ていうか。

さっきからイケメンイケメン仰ってますけどあなたも大概イケメンですよ?

 

私はそんなことを思いながら

 

「違いますよ!同僚です!」

 

と答える。

すると中島さんはあからさまにがっかりした顔をして言う。

 

「なあんだ。てっきり乗り換えたのかと思った」

「乗り換えたって(笑)」

「つまんねー」

 

そして中島さんは私の言葉を聞いたか聞かないかぐらいでそう言って去っていった。

 

つまんねーって(笑)

 

「風のように去っていったけど、何かすごく正直っていうか・・・素直な人だったね(笑)」

 

中島さんの去っていった方向を見て呆然としながら山田さんは言う。

 

「うん(笑) 真っすぐな方なんだよね(笑)」

「そっか(笑)」

 

何というか、その真っすぐな所が中島さんの魅力だと思う。

 

「まゆみさん、俺、筋トレするけど一緒に来る?」

「あ、うん」

「じゃあ着替えてここ集合ね」

「わかった」

 

山田さんと私はそう言って一旦別れる。

そして。

お互い着替えを済ませて再会した。

 

 

 

 

「すっごい可愛い!!」

 

着替えた私の姿を見た山田さんはそう言って目をキラキラさせている。

 

「え・・・ありがとう・・・」

 

山田さんに買って頂いたトレーニングウエアを着ていることがお気に召したんだろうけど、自分が褒められたような気がして照れてしまう。

 

「誰がコーディネートしたんだろうね?俺か!」

 

テンションが上がったのであろう山田さんがそう言って嬉しそうに笑う。

そういう所が本当に可愛らしい。

 

何か、こんなに喜んでもらえてよかった♪

 

私は山田さんの笑顔を見ながらそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

筋トレを始めて30分。

私はすっかり汗だくでヘロヘロになってしまっていた。

 

「ダメだ・・・もう限界・・・」

「先にシャワー浴びとく?」

 

ぐったりしている私に山田さんが息を弾ませながらそう言う。

 

「うん、そうする・・・」

 

やっぱりしばらく筋トレしてないからついていけないや・・・

 

「ごめんね。山田さんは気が済むまで筋トレしてね」

「うん、ありがと」

 

私の言葉に山田さんはさわやかな笑顔でそう言う。

 

美しい。

イケメンは汗をかいてもイケメンだ。

そして、汗がまるでダイヤモンドのよう。

 

私はそんなことを思いながらシャワールームに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャワーで汗を流してスッキリした私は、休憩室でスポーツドリンクを飲みながら山田さんを待っていた。

 

・・・有岡くん、仕事終わったかな・・・

 

やっぱり有岡くんの事が気になる私。

 

仕事の邪魔したくないから電話はしない方がいいかもしれないけど、LINEぐらいならしてもいいかな・・・

・・・いいよね。いいって事にしよう。

 

私はそう自分に言い聞かせてカバンからスマホを取り出した。

 

 

”お疲れ様!仕事はもう終わったかな?”

 

 

まだ終わってなかったら会社に戻って手伝いたい、そう思っていたけれど。

その日、有岡くんからLINEの返事が来ることはなかった。

 

 

 

 

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