妄想小説Walk第94話

「いただきます」

 

2人で手を合わせてそういう。

そして、私はまずクレンズジュースとやらを一口飲んでみた。

 

 

どうしよう。おいしくない。

 

 

「まずい?」

 

私の顔を見て察する有岡くん。

 

「いや、あの、えっと・・・」

 

せっかく買ってきてくれたのに「まずい」なんて言えない。

でも、何て言っていいかわからず、ただごにょごにょしてしまう私。

 

「はっきり言えよ。まずいんだろ?」

 

そんな私を見て笑いながら言う有岡くん。

 

「・・・はい(笑)」

 

もう認めざるを得ない(笑)

 

「まずいけど栄養あるから。栄養とったら元気になるから」

「えっ・・・」

 

 

私を元気にさせるために買ってきてくれたんだ・・・

 

 

有岡くんの気持ちがすごく、すごく嬉しかった。

私はとりあえず鼻をつまんで有岡くんが買ってきてくれたクレンズジュースを一気に飲み干した。

 

やっぱりおいしくない。でも。

 

「これで元気になれる!ありがとう、有岡くん」

「いいって事よ!」

 

私の言葉に有岡くんは嬉しそうにそういうと、クレンズジュースを飲んで

 

「やっぱこれまずいな」

 

と笑った。

 

「あ!」

 

そして、急に何かを思い出す有岡くん。

 

「?」

「ビール買ってくるの忘れた!」

 

悔しそうだ。

 

「今日は車じゃないの?」

「うん」

「ビールあるけど、飲む?」

「飲む!」

 

私の言葉に嬉しそうにうなずく有岡くん。

 

可愛い(笑)

 

 

私は冷蔵庫からビールとグラスを取り出して「はい」と有岡くんにグラスを渡す。

そして、グラスにビールを注いだ。

 

「どうぞ♪」

「ありがとう。まゆみさんも飲むでしょ?」

 

そんな風に言われたら飲むしかない。

 

「うん」

 

私が自分用のグラスを持ってくると有岡くんはそれにビールを注いでくれた。

 

「ありがとう♪」

 

そのままグラスを合わせる私たち。

待ってましたとばかりにビールを飲み干す有岡くん。

相当飲みたかったらしい(笑)

 

そんな有岡くんを見ながら私もビールを一口。

 

・・・おいしい。

 

 

 

「いただきます!」

 

有岡くんはお惣菜を口いっぱいに入れ

 

「うめーー!!!!」

 

と嬉しそうだ。

私もお惣菜を頂く。

 

「おいしい!」

 

めちゃくちゃおいしい!

さすが、おいしいと噂のお店のお惣菜!

 

「うまいっしょ?やっぱ一緒に食べるとうまいんだよ!」

 

有岡くん、ご満悦(笑)

 

 

 

・・・・何か可愛いな(笑)

有岡くんと一緒にいると自然と笑顔になる。

 

 

こういうの、何だか久しぶりだ。

彼女の事とか、色々あってずっとモヤモヤしてたけど・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

あ。

 

そういえば。

 

有岡くんはここにいて大丈夫なのだろうか?

 

 

「有岡くん、ここにいて大丈夫?」

「え?何で?」

「いや、彼女は・・・?」

 

彼女から連絡があった時にここにいるって知ったら、彼女が嫌な思いをするんじゃないか、そう思った。

 

「え?」

「有岡くんがここにいたら、彼女は嫌な思いをするんじゃない?」

「大丈夫だよ。彼女じゃないし」

「いや、ダメだって!誤解招くような事をしたら!」

 

何で私は必死に彼女の肩を持ってるんだろう。

自分でも疑問に思いながら私は有岡くんに詰め寄る。

 

「大丈夫だって!俺もうあの子には会わないから」

「・・・え!?」

 

有岡くんの口から飛び出した意外な言葉に私は驚く。

 

 

ちょっと待って。どう言う事?

 

 

「どうした?何かあった?」

「・・・聞く?」

「聞く!」

 

有岡くんの問いかけに食い気味で答える私。

それに有岡くんはうなずくと

 

「じゃあ全部話すね」

 

と言った。

 

 

 

・・・やっと。

やっと何があったのか聞けるんだ・・・。

 

 

 

私は箸をおいて有岡くんの次の言葉を待った。

 

 

 

 

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