妄想小説Walk第90話

そろそろ・・・答えを出さなきゃいけない気がする。

 

私はそんな風に思っていた。

このまま、山田さんに甘え続ける訳にはいかない、と。

 

 

 

 

もう我慢できねーよ・・・

 

 

 

 

そう言った山田さんの顔はすごく切なく見えた。

でも、私の心の中から有岡くんは消えてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・正解がわからない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まゆみさん、飯食った?」

 

ふいに、髙木くんがそう言った。

そういえば食べていない。

 

「ううん、まだ」

「食いに行かない?」

「うん、いいよ」

 

髙木くんのお誘いに喜んで乗る私。

私は仕事の手を止めると、髙木くんと一緒に外出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうさ。私、正解がわからなくて」

 

ずっと思い悩んでいるからか、思わず口に出てしまう。

 

「何の話?」

 

そりゃ急に言われた髙木くんはそうなるよね。

 

「えっと・・・有岡くんと、山田さんの・・・話です・・・」

 

改めて言うのはちょっと照れくさいけど、口に出してしまった以上ちゃんと伝えなきゃ。

 

「そっか。確かに正解はわかんないな」

「でしょ?」

「うん。一緒に考えよう」

「えっ」

 

思いがけない髙木くんの発言に私は驚く。

そんな私に髙木くんは言った。

 

「正解はわからないけど、一緒に考えることは出来る」

「髙木くん・・・」

 

何て、なんて優しいんだろう髙木くんは。

ずっと、ずっと思ってるけど、今日は髙木くんの優しさが特に身に染みた。

 

「ありがとう」

 

髙木くん、本当にありがとう。

 

 

髙木くんは私の言葉を聞いて優しく微笑むと

 

「今はどっちが好きなの?」

 

と言った。

 

 

 

 

・・・どっちが好き・・・?

 

 

 

 

 

「自分でも、よくわからないんだけど・・・」

 

私はそう前置きをしてから話を続ける。

 

「山田さんといる時に有岡くんの事を思い出したりしちゃう。」

「そっか」

「でもその事で山田さんを振り回してしまってるんじゃないかって思って」

 

私は、山田さんの優しさに甘えすぎてしまってるように思う。

 

「振り回す?」

「うん。一歩踏み出せないというか・・・」

「うん」

「有岡くんの事をちゃんと忘れて、山田さんとお付き合いしたいって思ってたんだけど、そろそろ答えを出さなきゃいけない気がして」

 

私の話を聞いて髙木くんは「うーん・・・」と悩みだす。

そして

 

「有岡の事忘れる必要ある?」

 

と言った。

 

「えっ」

「毎日顔合わすし、忘れるなんて無理じゃね?」

「・・・確かに」

 

そう言われてみれば、毎日仕事で会う事も有岡くんを忘れられない要因かも。

 

「有岡の事忘れられないのが気になるなら、透けてるイケメンとプライベートで会うのやめたら?」

「んー・・・・・」

 

それはそうなんだけど・・・

 

「会いたいんじゃん」

 

私の様子を見て何かを察したのか、髙木くんが言う。

 

「・・・うん。会いたい・・・」

「好きなんじゃん」

「・・・うん・・・好き・・・」

 

私の口から、ごくごく自然に「好き」という言葉がこぼれた。

 

 

 

 

 

・・・そっか。

私、山田さんの事、好きなんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

「最近有岡と話してないよな?」

 

最近の有岡くんと私の状況を思い出したのか髙木くんがそう問うてくる。

 

「・・・うん。仕事の話以外はほとんどしてない。多分、私、有岡くんに距離を置かれてる」

「そうかもな」

「やっぱり・・・そうなんだ・・・」

 

自分で言っておいて何なんだけど、それは、ちょっと寂しい。

そうなんだろうなーとは思ってたけど。

 

「あいつなりに答えを出そうとしてるのかも」

「えっ」

「距離を置くことが何かの答えになるとか?」

 

・・・何かの答え・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・!

 

 

 

 

 

 

 

「私。山田さんとお付き合いしてもいいのかなって聞いた時の答え・・・?」

 

パッと頭の中に浮かんだのは、その時の光景だった。

 

「まあ、わかんねーけどな」

 

 

 

 

 

・・・そっか・・・

私、有岡くんにも背中押されてるんだ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「髙木くん・・・私、山田さんとお付き合いしていいのかな・・・?」

「いいと思う!」

 

髙木くんは笑顔でそう言うと、とても優しい顔で

 

「いっぱい愛してもらえよ」

 

と微笑んだ。

 

「うん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

私は山田さんにLINEをしようと画面を開いていた。

 

あの日以来、山田さんからは連絡が来ていないし、私も連絡していいのかわからずにいる。

 

今も、何て言えばいいのかわからないけど、とりあえず、会って話がしたい。

 

 

 

 

 

 

”会ってお話がしたいです。時間があるときに連絡ください”

 

 

 

 

 

 

私は意を決してそう送信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

また会ってもらえたら、ちゃんとお話をして。

「私とお付き合いしてください」って言おう。

私は、そう決心した。

 

 

 

 

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