妄想小説Walk第85話

「今日はいい話を持ってきたよ」

 

やたらニコニコしながら山田さんはそう言った。

 

ここは会社の会議室。

いつもよりもテンションの高い山田さんの笑顔がまぶしい。

 

「いい話?」

「うん!これ読んで!」

 

山田さんはそう言って私に資料を手渡す。

私はそれにざっくりと目を通す。

 

 

・・・何だかものすごく大きな話だ。

って事は!

 

 

「これってもしかして、この間言ってたでっかいプロジェクト?」

「そう!」

 

山田さんが”でっかいプロジェクトを任せてもらえるかも!”って言ってた話はこれの事だったのね!

 

「すごいじゃん!」

「すごいでしょ!?」

 

このプロジェクトを任せてもらえるなんて、本当すごい!

 

「このプロジェクトを成功させればうちの会社の知名度も上がるし、俺も多分出世できる!」

 

山田さんの鼻息は荒い。

 

「出世!そうだよね!これだけ大きなプロジェクトなら当然か!」

「俺が勝手に期待してるだけだけどね(笑)」

「いや。多分出世できる!」

「そうだよね!頑張る!」

「うん!」

 

山田さん、目をキラキラさせてる。

可愛い(笑)

 

「それでね。今回はでっかいプロジェクトだから、いつもよりも出資金の額が高めなんだよね」

 

山田さんの言葉を聞いて私はうちの会社に割り振られた出資金の額を確認する。

 

 

・・・確かに。

ちょっと金額が高い。

 

「・・・本当だ。」

 

いつもの金額とはケタが違う。

これは部長の了承を得るのに苦労しそうだ・・・

 

「一括じゃなくてもいいんだよ。まず500万預からせてもらえば残りは相談に乗れると思う」

「・・・なるほど。」

 

にしても、ちょっと規模が大きくなるから、プレゼンに気合を入れないと部長はなかなか了承してくれない気がする。

 

「出資金はいつもより高めだけど、成功した際のメリットは大きいと思うんだよ。」

「うん」

 

確かに、成功すればメリットは大きい。

そこを重点的に攻めるか・・・。

 

 

 

私は、山田さんが任されたというこのプロジェクトを成功させてあげたい、そう思った。

 

 

 

 

「部長の了承を得るのに、金額面でも何かしらあるとプレゼンしやすいんだけど、やっぱり初期費用の500万は安くはならない感じ?」

「俺もそう思って聞いてみたんだけど、これが最大限なんだよね。

何ならこれでもあまりいい顔されなかったのを無理やりOKもらった感じでさ。」

「そうだよね・・・」

 

山田さんの事だからきっとうちの会社に最大限の優遇をしてくれてるはず。

じゃああとは私がどうにか部長や上層部を説得するまでか。

 

「・・・わかった。じゃあこれで頑張ってみるね」

「ありがとう!」

 

私の言葉に山田さんは笑顔でそういい、言葉を続ける。

 

「わからない所があったらいつでも連絡してね」

「うん、ありがとう」

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

山田さんはそういうと頭を下げる。

私はそれに

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

と頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

・・・・まずは部長に報告だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回、エースコーポレーションから大きなプロジェクトのお話を頂いたんですが・・・」

 

山田さんが帰った後、私は部長にそう言って資料を見せる。

部長は想像した通り、金銭面でのリスクを懸念していたが

 

「とりあえず、上層部にプレゼンしてみよう。明後日までに用意しとけ」

 

と言ってくれた。

 

 

明後日のプレゼン。

頑張らなきゃ。

 

 

私は自分に気合を入れた。

 

 

 

 

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