妄想小説Walk第79話

「まゆみさん、絆創膏持ってない?」

 

仕事中。

自分の机に座ってデスクワークをしていたら、有岡くんにそう話しかけられた。

振り返ると、有岡くんの鼻には引っかき傷が。

 

「どうしたの?それ?」

「歩いていたら猫ちゃんがいたのよ。可愛いなーと思ってのぞきこんだら引っかかれた」

「あはははは!」

 

引っかき傷が出来た理由があまりにも可愛すぎて、ついつい笑ってしまう。

それに有岡くんは

 

「笑い事じゃないから」

 

と言いつつも笑ってしまっている。

 

 

本当、可愛いんだから・・・。

 

 

私はそう思いながらカバンの中から絆創膏を取り出した。

 

「貼ろうか?」

「うん、お願い」

 

私と有岡くんがそんな会話を交わした時。

机の上に置いていた私のスマホのLINEの着信音がなった。

 

反射的に画面を見る。

山田さんからだった。

 

「透けてるイケメンとLINEしてるの?」

 

着信画面を見たのか、有岡くんがそういう。

 

「えっうん、してるよ」

「毎日?」

「え?・・・どうだろ?毎日ではないと思うけど・・・」

「・・・ふうん」

「有岡、嫉妬すんなよー(笑)」

 

有岡くんと私の会話が聞こえていたのか、髙木くんがそう茶々を入れてきた。

それに有岡くんは

 

「いや、嫉妬じゃないよ!嫉妬じゃないから!」

 

髙木くんにそう言った後、私に向かって

 

「嫉妬じゃないからね!」

 

と念を押した。

 

 

そんなに否定しなくてもいいのに(笑)

 

 

そう思いながら私は有岡くんに言う。

 

「わかったからじっとしてて(笑) 絆創膏貼れないから(笑)」

「あ、ごめん」

 

私は素直にじっとしてくれてる有岡くんの鼻に絆創膏を貼った。

 

 

 

 

・・・やだ。可愛い(笑)

 

 

 

 

「有岡くん絆創膏似合うね(笑)」

「え?似合う?」

「うん(笑) 小学生みたい(笑)」

 

私が笑いながらそう言った途端、有岡くんの顔が一瞬で曇る。

一緒に笑いあえると思って言った冗談だったから、ちょっとドキッとしてしまう。

 

有岡くんは下を向いてボソッと「子ども扱いすんなよ」とつぶやいた後、少しだけ表情を柔らかくして私に

 

「俺だって男だよ?」

 

と言った。

 

「え、うん、わかってるよ。ごめん、冗談のつもりだった。ごめん」

 

私は慌てて謝る。

 

「あ、ううん、俺も冗談!ごめんね!」

 

有岡くんは引きつった笑顔を見せてそういうと

 

「絆創膏、ありがとう!」

 

と言って去っていった。

 

 

 

 

・・・どうしたんだろう・・・。

子ども扱いされるのがそんなに嫌なのかな・・・。

今後、気を付けなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

有岡くんの後姿を見つめながら私がそう思っていたら、またLINEの着信音がなった。

山田さんからだった。

 

急ぎの用事かな?

 

私はLINEの画面を開いて思わず満面の笑みになった。

 

そこには何とも可愛い犬の写真とともに「実家で飼ってる犬なんだけど、めっちゃ可愛くない?」というメッセージが書かれていた。

 

 

可愛い!!

めっちゃ可愛い!!

たまんない!!

 

動物大好きな私は思わずニヤニヤして写真を眺めてしまう。

 

「なにニヤニヤしてんだよ(笑)」

 

そんな私を見て髙木くんもニヤニヤしながら近づいてくる。

私が髙木くんに写真を見せて

 

「めっちゃ可愛くない?」

 

というと髙木くんも「うぉ!可愛い!」と笑顔(笑)

 

「でしょ?可愛くてついニヤニヤしちゃったよ(笑)」

「確かに可愛いな(笑)」

「うん(笑)」

 

思いがけず癒されてありがたい。

 

「さっきの有岡の絆創膏姿、本当小学生みたいだったな(笑)」

 

ふいに髙木くんがそんな事を言いだす。

 

「やっぱりそう思う?(笑) 似合ってたよね(笑)」

「似合ってた(笑)」

 

髙木くんも似合ってるって思ってたんだ(笑)

 

「あ!そうだ!まゆみさん八乙女から本預かってない?」

「あ!預かってる!」

 

髙木くんに言われるまですっかり忘れてた。

今朝八乙女くんに髙木くんに渡しておいてって言われてたんだった!

 

「はい、これ」

「ありがとう!助かったよ!」

 

私が八乙女くんから預かった本を渡すと、髙木くんはそう言って笑顔で本を受け取り去っていった。

 

 

 

 

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