妄想小説Walk第77話

「あ、まゆみさんおかえり。この間話したあの資料って持ってる?」

 

会社に戻ったら髙木くんに話しかけられた。

 

「あ、うん、ちょっと待って取ってくる」

 

私は自分のデスクに戻って髙木くんに言われた資料を探す。

 

 

えーっと・・・確かここにしまったはずなんだけど・・・

あった。

 

 

「見つかった?」

 

ちょうど資料を見つけた瞬間に髙木くんが来てくれていた。

 

「うん。これだよ」

「ありがとう」

 

髙木くんは笑顔で資料を受け取ると、小声で話を続ける。

 

「・・・何かあった?」

 

髙木くんの視線の先にはコーヒーを飲もうとしてアチッ!となってる有岡くんが。

猫舌だから必ずフーフーして飲むはずの有岡くんが無防備に飲もうとして舌をやけどしそうになったようだ。

 

そんな有岡くんの様子を見て髙木くんは何かを感じ取ったってことか。

 

「・・・うん。髙木くん、ご飯食べた?」

「まだ」

「食べに行かない?」

「いいよ」

 

ここでは話せない話だって事をわかってくれたのか、髙木くんはそう言うとすぐに「行くぞ」と歩き出した。

私はそのまま髙木くんに着いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?何があったんだよ」

 

お店に着いて注文を終えてからすぐ髙木くんはそう言う。

 

「あの・・・有岡くんの事はよくわかんないんだけどさ・・・」

「うん」

「私・・・山田さんに、有岡くんじゃなくて俺にしとけって言われたんだよね・・・」

「え!?」

 

驚く髙木くん。

 

「絶対に好きにさせてみせるって。有岡くんよりも自分の方が私の事好きだって・・・」

 

それに構わずに話を続ける私。

 

「・・・マジか」

 

複雑な表情を見せる髙木くん。

 

私も・・・複雑。

 

「・・・どうすんの?」

 

髙木くんに聞かれて、私はさっきの事を思い出す。

 

「・・・有岡くんにね、聞いてみたの。私、山田さんと付き合った方がいいのかなって」

「有岡は何て?」

「・・・何も言ってくれなかった」

 

思い出すと胸が苦しくなる。

それでも私は言葉を絞り出した。

 

「これって、やっぱり有岡くんの事諦めた方がいいって事だよね・・・?」

「・・・どうだろうな。まだわかんねーな・・・」

 

髙木くんはそう言うと少し考える素振りをした後で話を続ける。

 

「まゆみさんはまだ有岡の事好きなんだね」

「うん。好きだよ・・・でも」

 

私は有岡くんが好き。

でも。

 

「好きでい続ける事が辛くなってきた」

 

 

 

 

見てるだけで、同僚として一緒にいられるだけでよかったのに。

いつの間にか私は欲張りになっていた。

 

有岡くんの隣にいられる自分でいたい、と望んでしまった。

おかげで、有岡くんの隣にいられない事が辛く感じてしまう。

 

 

 

 

「・・・お前変わったな」

「えっ」

 

突然の髙木くんの発言に動揺してしまう。

それを感じ取ったのか、髙木くんは笑顔で

 

「いい意味でだよ?」

 

と言う。

 

「いい意味で?」

「うん。今までのまゆみさんだったら、有岡に、山田さんと付き合った方がいいのかな、なんていえなかっただろうし、俺にだって、有岡の事、好きだよってはっきり言えなかったじゃん」

「確かに・・・」

 

ハッとした。

言われてみればそうだった。

 

私、動揺しすぎて感情がおかしくなっちゃってるのかもしれない。

よく考えたら、こんなにさらっと言ってるけど、山田さんに告白されたこととか、有岡くんの事が好きな事とか、おこがましくて言えない話なのに・・・

 

一気に顔が赤くなるのを感じた。

 

 

 

 

「透けてるイケメンのおかげかもな」

「えっ」

 

そんな私に髙木くんは思いもよらない事を言いだした。

 

山田さんのおかげ・・・?

 

「透けてるイケメンがまゆみさんの中の常識をぶち壊したのかも」

 

私の中の常識・・・?

 

「そう・・・なのかな・・・」

 

よくわからない・・・

 

 

 

「まゆみさんは、自分の気持ちとゆっくり向き合いな。焦る必要はないから」

 

伊野尾さんにも焦るなって言われたな私・・・。

 

 

 

「考えて考えぬいて、どうしても辛くなったら、俺のとこに来い」

「・・・え・・・」

 

髙木くんの言葉に一瞬キュンとする私。

そんな私に髙木くんは。

 

「・・・俺じゃダメか?」

 

突然。久々に雄也降臨。

 

「ちょっと(笑) こんな時に雄也降臨させないでよ(笑)」

 

かっこいいけど(笑)

もっと感情が普通の時に聞きたかったな(笑)

 

「俺が参戦すれば三人の男で悩む事になるから、少しは軽くなると思ったんだけど(笑)」

「増やしたら軽くなる?そんな訳ないでしょ(笑) 余計しんどいわ(笑)」

 

とはいえ、笑いに変えてくれたのはありがたかった。

このままだと私、思い悩んで、悩み過ぎて、冷静な判断が出来なかったかもしれない。

 

 

本当に髙木くんは優しいし、いつだって私の気持ちに寄り添ってくれる。

髙木くんの存在は、本当に大きい。

 

 

「髙木くん、ありがとう」

 

私は何となくお礼が言いたくなってそう言った。

 

「おう」

 

髙木くんはそう言って笑う。

 

本当、いつもありがとね。

 

 

 

 

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