妄想小説Walk第65話

翌朝。

鏡を見て驚いた。

 

驚くほどむくんで腫れ上がっている私の顔。

 

 

 

 

 

・・・やばい。

こりゃひどい。

 

 

化粧で何とかごまかさないと!

 

私は必死でむくんで腫れ上がっている顔を隠す努力をした。

 

 

 

 

 

 

 

しかし。

 

「どうした?顔めっちゃむくんでない?」

 

出社したらすぐ髙木くんに気づかれた。

 

・・・さすがだ。

 

「バレた?何か起きたらえらいことになってて(笑) メイクじゃ隠れないか・・・どうしよう」

「ん?お前靴下左右違ってるぞ」

「え!?」

 

髙木くんに言われて足元を見る。

見事に左右色の違う靴下を履いている。

 

「・・・本当だ・・・何でだ・・・」

 

不可思議すぎる・・・

いつの間にすり替わったんだろう靴下・・・

 

 

 

 

 

「今日仕事終わったら飲みに行くぞ」

 

そんな私を見て何かを感じとったのか、髙木くんがそういう。

 

「えっ」

「わかった?」

「・・・はい・・・」

 

きっと、髙木くんにはごまかせない。

何かあったんだって気づいてくれて誘ってくれてるんだろう。

本当に優しい人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと見ると、そこに有岡くんの姿が見えた。

 

 

 

 

チクン

 

 

 

 

胸の奥が痛む。

やっぱり涙枯れるまで泣いたぐらいじゃ忘れられない。

 

でも、こんなんじゃいけない。

私が気にしてたら有岡くんが気にしてしまう。

 

私はギュッと拳を握りしめると、有岡くんの所に向かった。

 

 

 

 

 

「有岡くん、おはよ!」

 

自分の中で精一杯の笑顔で私は言う。

心臓はバクバクしている。

 

「・・・おはよ」

 

有岡くんはそんな私に合わせてくれたのか、笑顔であいさつ。

そして、続ける。

 

「まゆみさん・・・顔むくんでる・・・?」

「え!?」

 

しまった!

顔がむくんでた事、すっかり忘れてた!!

 

「そういえばさっき髙木くんにも言われちゃったんだよね(笑) そんなにひどい?」

「うん、結構ひどいよ」

「やばいなーちょっとメイク直してくる(笑)」

 

私は両手で顔を押さえながらトイレに走る。

 

 

 

 

 

 

こんなひどい顔、有岡くんに見せるんじゃなかった・・・・

やっちまった・・・・

 

鏡に映る自分のパンパンな顔を見ているとため息が出てくる。

 

 

ブスがブスを重ねてどうするんだ・・・

しょうもない・・・

 

 

・・・気づかれちゃったかな・・・

気にしちゃ・・・う訳ないか。

私の事なんて。

 

 

私はもう一度深くため息をつくととりあえずメイク直しをしてみる。

が、やっぱりうまく隠れない。

 

 

もう後は開き直るしかないか・・・

 

 

私は覚悟を決めてトイレを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

トイレから出た所で八乙女くんに遭遇した。

 

「うわっ。本当だ。まゆみさんひどい顔してる」

「もー・・・寄ってたかってひどい顔って言わないでよ(笑) メイクでも隠れないし、もうどうしたらいいかわかんないんだから・・・」

「大丈夫。マッサージすればましになるから。」

 

八乙女くんはそういうと

 

「ちょっと我慢してね」

 

と言って私の顔をぐりぐりマッサージし始める。

 

「い、いたい・・・」

「我慢して」

「はい・・・」

 

痛いと訴えても聞いてもらえないことを悟った私は、とりあえず目をつぶって耐える。

 

「はい。これで少しはマシになった」

 

しばらくマッサージをしてくれたあと、八乙女くんはそう言って私の顔から手を離した。

 

「ありがとう・・・」

「どう?少しはマシになった?」

 

そんなタイミングで髙木くんがやってきて、私の顔を見たとたん

 

「わ!すげー!!だいぶマシになってんじゃん!!」

 

と叫ぶ。

 

「だろ?マッサージが一番効くんだって」

 

八乙女くんは誇らしげだ。

 

「八乙女くんがそんな技持ってるとは思わなかったよ!ありがとう!」

「どういたしまして」

 

私の言葉に八乙女くんはそういうと、ドヤ顔で話を続ける。

 

「まゆみさん、昨日めっちゃ号泣する映画見たでしょ?」

「あー・・・うん(笑)」

 

めっちゃ号泣する現実を見ました。

 

「俺も号泣したらまゆみさんみたいになる(笑)」

 

笑いながらそういう八乙女くん。

可愛い(笑)

 

「だからこんな技知ってるの?」

「そう(笑)」

 

なぜか終始笑顔な八乙女くん。

 

「八乙女くんが号泣仲間で助かったよ(笑) ありがとね」

「うん」

 

私がお礼を言うと、八乙女くんは嬉しそうにうなずいて去っていく。

その様子を見て髙木くんは

 

「八乙女は平和だな」

 

と微笑む。

 

「うん、ありがたい」

「ずっとあのままでいてほしいな」

「うん」

 

本当に。

 

 

 

 

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