妄想小説Walk第60話

「あれ、まゆみさん!ここ来てるんだ!」

 

体を洗って湯船の方に行ったら、そこにはともさんとあやかさんがいた。

 

「うん、有岡くんに誘われて。通い始めたばかりだけど」

 

ともさんの問いに私はそう答える。

 

「あー大ちゃんか(笑)」

「ともさんとあやかさんは?」

「私たちは知念くんに誘われて」

 

そっか。

そうだよね。

 

それにしてもともさんはいつも「知念くん」の言い方に愛があふれていてとても可愛い。

 

 

「まゆみさんのお友達?」

 

あやかさんがちよこさんを見てそういう。

 

「あ、うん。うちの会社の髙木くんっていう人の彼女のちよこさん」

 

さっき会ったばかりで「お友達」と言っていいかわからず、私は妙に遠回りな説明をしてしまった。

ともさんもあやかさんも髙木くんの事知らないのに(笑)

 

「初めまして、ともです」

「あやかです」

「ちよこです」

 

そんな私の心配をよそに3人は和やかに自己紹介している。

 

・・・よかった。

特に気にしてないみたいだ。

 

 

 

 

「知念くんと言えば、まゆみさんに意見聞かせてほしい話があるんだけど」

 

突然、ともさんがそう切り出す。

 

「もちろん!私で良ければ」

「私、席外しましょうか?」

 

ちよこさんが気を使ってそう言う。

 

「ううん、もしよかったらちよこさんにも意見聞かせてほしい」

「あ、私で良ければ」

「うん。いい。私、知念くんの事好きすぎて現実見えてないんじゃないかと思うからさ。客観的に、冷静に判断してほしい」

「わかった」

 

すごい。ともさん。

初対面のちよこさんに冷静さを要求してる(笑)

そして、それを普通に受け止めるちよこさん(笑)

この2人も意外と気が合うのかも(笑)

 

 

 

 

 

 

 

「何かね。知念くんが「トンカツ食べたいな」って言ってくるの」

 

どうやら本題に入ったらしい。

 

「うん」

「トンカツかぁ、いいねってなったんだけど、その日は何もなくて」

「うん」

「その日からずっと知念くんは毎日「トンカツ食べたい」って言うんだけど、一緒に行こうとは言わないのね」

「うん」

「結局5日ぐらい言われ続けたから「今日食べに行く?」って言ってみたら、すっごい嬉しそうに「うん!」って」

「うん」

「で、その日はトンカツを食べに行ったんだけど、次の日は「お寿司食べたいな」っていうの」

「うん」

「だから、「今日食べに行く?」って言ったら「うん!」って嬉しそうにうなずくの」

「うん」

「お寿司食べに行ったら次は「お肉食べたいな」って」

「うん」

「これって、純粋にお肉が食べたいのか、私とご飯食べに行きたいのかわかんなくない?どっちだと思う?」

「・・・うーん・・・・」

 

む、難しい・・・・

 

「ともちゃんの事好きなんじゃないかって思うけど、ただご飯が食べたいだけかもしれないよね」

 

あやかさんが冷静に言う。

 

「うーん・・・でも、ともさんとご飯が食べたいんだと思いたいな。指輪も渡してたし」

「そうだよね!?」

 

私の言葉に目を輝かせるともさん。

そんなともさんに

 

「でも違ったら落ち込まない?」

 

とあやかさん。

 

「落ち込む」

「だよね」

 

ともさんとあやかさんはきっと2人でこうやって堂々巡りになってるんだろうな(笑)

何か可愛い(笑)

 

 

でも、何かもどかしいなー。

ともさんはこんなにも知念さんの事が好きなのに。

知念さんもはっきり言えばいいのにな。

 

 

「でも、嫌いな人とご飯は食べたくないだろうから、知念さんはともちゃんの事好きなんだと思う。LOVEなのか、LIKEなのかはわからないけど」

 

そんなことを思っていたら、ちよこさんが確信をついた発言をしていた。

 

そっか。確かにそうだ。

 

「そうだよね?嫌われてはないよね?好かれてるよね?LOVEかLIKEなのかはわからないけど」

「うん!好かれてる!」

「嬉しい!」

 

ちよこさんの言葉に心底嬉しそうなともさん。

 

よかった。

私一人で話聞いてたらこんなにともさんを喜ばせてあげられなかったと思う。

ちよこさん、ありがとう!←

 

 

 

 

 

「で?まゆみさんは大ちゃんとうまくいってんの?」

「え!?」

 

急に話が自分に降りかかってきて私は驚かざるを得なかった。

 

「大ちゃんって有岡くん?」

 

それになぜかちよこさんが乗っかってくる。

 

「う、うん・・・」

「大ちゃ・・・有岡くんと付き合ってるんでしょ?」

 

なぜか「有岡くん」と言い直してから質問して来るあやかさん。

 

「いや、付き合ってません・・・」

「そうなの!?」

「う、うん・・・」

「私たち、付き合ってるんだと思ってたよ」

 

だといいんですけどね・・・

 

「ずっと私の片思いだよ」

 

ともさんの言葉に対して”私の片思い”って言葉が自分の口から出てきてちょっとびっくりした。

今までの私なら有岡くんが好きな事を人に言えなかった。

もしかして私、ちょっと成長してるのかも。

 

 

 

 

「もうすぐ付き合うと思うけどね」

 

ふいに、ちよこさんが言いだす。

 

「えっ」

「手繋いで歩くぐらいなんだから。」

「手繋いで歩いてるの!?」

 

ちよこさんの暴露に驚くともさんとあやかさん。

 

「ちょっちょっとちよこさん!」

「まゆみさんどういうこと?」

「いや、お祭りの時にたまたまちょっとだけ手を繋いだ所を髙木くんとちよこさんに見られてただけでっ」

「でも有岡くんから手を繋いできたんでしょ?」

 

た、髙木くん・・・

ちよこさんに全部しゃべってらっしゃるのね・・・

 

「う、うん・・・」

「じゃあもう付き合ってるようなもんじゃん!よかったね!」

 

 

 

ともさんはそう言ってくれるけど、まだ付き合ってないんですけど・・・

 

 

 

 

 

「あーあ・・・じゃあ私だけかー付き合ってないのは」

 

 

いや、私も付き合ってないんですけど・・・

 

 

「大丈夫!ともちゃんの恋もうまくいく!」

「そうかな?」

「うん!そうだよ!」

「ありがとう!頑張る!」

 

あやかさんとともさん、普段からこんな感じなんだろうな。

本当に仲良しで微笑ましい♪

 

 

 

 

 

 

・・・もうすぐ付き合う、かぁ・・・

本当、そうなったら嬉しいな・・・♪

 

 

 

 

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