妄想小説Walk第53話

数日後。

 

「まゆみさん、電話だよ。2番ね」

 

と八乙女くんに言われ、電話に出たら。

 

「あの、山田です。数日前にお会いしたんですが、覚えてらっしゃいますか?」

 

と言われ、私は驚かずにはいられなかった。

 

数日前に貧血を起こした私を助けてくれた、あの透けてるイケメン、山田さんだ。

 

「もちろんです!あの時は本当にお世話になりました!」

「あれから体調はいかがですか?」

「おかげさまでもうすっかりよくなりました」

「それはよかった!」

「本当、ありがとうございました!」

 

私の体調を気にかけてくださるなんて、なんてお優しいんだろうか。

国宝級のイケメンなのに!

 

「じゃあ・・・あの時の約束、果たしてもらおうかな」

「えっ?」

「営業に行かせてもらう約束。忘れちゃいました?」

 

 

そういえばそんなことおっしゃってたような・・・

あれ、本気だったんだ!

 

もしエースコーポレーションと取引出来たとしたら、うちの会社にとってはプラスにしかならない。

そんな願ったり叶ったりな仕事が降りかかってくるなんて!

なんてありがたいの!

 

 

「いえ!覚えてます!ぜひお願いします!」

「よかった。じゃあ今日の午後に伺ってもよろしいですか?」

 

今日の午後か・・・

私一人で対応するより部長を通した方がいいよね。

 

「えっと…部長に聞いてみますね」

「いや、出来れば担当はまゆみさんがいいんですが・・・ご都合悪いですか?」

 

え。

ご指名!?

 

「いえ、私は大丈夫ですけど・・・」

「では13:00に伺いますね」

「はい、よろしくお願いします」

 

私一人で対応するの、プレッシャー・・・とかいってらんないな。

うまくいけばすごく大きな仕事になるかも!

頑張ろう!

 

 

 

 

 

山田さんとの電話を切った私がいきさつを部長に報告し自分の席に戻ってきたら、何故か髙木くんがニヤニヤしながら近づいてきた。

 

「まゆみさん、透けてるイケメン来るの?」

 

言い方(笑)

確かに私がそう説明したけれど(笑)

 

「そうみたい」

「え、何しに?」

 

何しに?って(笑)

言ってなかったっけなー?

 

「営業?あの日、うちに営業に行ってもいいですかっておっしゃってて」

「そうなんだ!マジかー!透けてるイケメン見れるんだー!来たら教えてね!」

 

とても嬉しそうにいう髙木くん。

髙木くんは時々子供みたいだ(笑)

 

「わかった(笑)・・・でもちょっと緊張する(笑)」

「大丈夫だよお前なら」

「ありがとう。頑張る」

「おう」

 

さ。

山田さんが来られるなら少し調べものをしとかないと。

 

私は軽く気合を入れパソコンに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

13:00。

当たり前だけど、本当に山田さんは現れた。

 

「お久しぶりです」

 

変わらないイケメンっぷり。

クラクラする。

 

「お久しぶりです!あの時は本当にお世話になりました。」

 

まずは改めてお礼。

そんな私に山田さんは軽く下を向きながら照れた素振りで「いえ」と首を振り

 

「元気そうでよかったです」

 

と微笑んだ。

 

 

 

 

・・・美しい・・・・

 

 

 

 

「今日は急にご連絡したにも関わらずお時間作って頂いてありがとうございます」

「あ、いえいえそんな!こちらこそわざわざご足労頂いてありがとうございます!どうぞ、こちらへ」

 

頭を下げる山田さんに私は慌ててそういうと、会議室へとご案内する。

 

 

 

 

・・・さあ。

勝負はここからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ですので、うちはこういったプランをご提案します」

「はい」

 

会議室に移動して山田さんの説明を聞いているのだが、とてもわかりやすい。

そのうえとてもいいお話だ。

 

「コスト面でも本来ならもう少し頂かないといけないんですが、せっかくのご縁ですので、上司に無理を言ってこの価格にしてもらいました」

「確かに、うちにとってもすごくいいお話ですね」

「でしょ?」

 

今まで真剣な顔でお話されていたのに、急にそう言ってにっこり笑う山田さん。

 

 

なんてこった。

美しいだけじゃなく、こんなかわいらしい笑顔まで。

イケメンの引き出しの多さよ。

恐ろしい・・・

 

 

・・・って。

いかんいかん、仕事中だ。

仕事しなくては。

 

 

「すぐにでも取引させて頂けるといいんですが、私の一存では決められなくて・・・。上司と検討させて頂いた上でこちらからご連絡させて頂いてもいいですか?」

「もちろん」

 

私の言葉にうなずく山田さんだったが

 

「・・・あ」

 

と何か思いついたような顔で私を見てこう言う。

 

「でも、担当はまゆみさんがいいな」

「えっ」

「もしわがままを言わせてもらえるなら、担当はまゆみさん1人がいいです」

 

 

・・・え?

・・・なぜ????

・・・まあ・・・じゃあとりあえず・・・

 

 

「では、それも上司と相談させて頂きますね」

「お願いします」

 

山田さんは私の目をしっかり見てそういうと、言葉を続ける。

 

「今日は貴重な時間をさいて頂いてありがとうございました。いいお答えを期待しています」

「はい、なるべくご期待に副えるよう頑張ります」

「お願いします。では、失礼します」

 

深くお辞儀をする山田さん。

私はそんな山田さんを先導し、会議室のドアを開ける。

 

「ありがとうございます」

 

山田さんはそういうと、出口まで送ろうとした私の動きを察したのか

 

「あ、ここで大丈夫です。失礼します」

 

と言って去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

山田さんの姿が見えなくなった頃、会議室の近くで3人そろってこちらの様子をうかがっていた有岡くん、髙木くん、八乙女くんが楽しそうにわちゃわちゃしながら近づいてくる。

 

「いやーあれはイケメンだわ!」

「うん、思った以上だわ!」

「確かに透けてる。」

 

髙木くん、有岡くん、八乙女くんの順でそういうと山田さんの去った先を見ながらうなずく3人。

 

髙木くん、有岡くんはわかるけど、八乙女くんまで山田さんに興味津々だったんだな(笑)

 

「で?エースの条件は?」

「ああ、これ」

 

髙木くんに言われて私は山田さんに渡された資料を見せる。

有岡くんと八乙女くんもそれをのぞきこむ。

 

 

 

「・・・すげぇいい条件・・・」

 

有岡くんがそうつぶやくと

 

「エースがうちにこんなにいい条件を提示して来るんだ・・・」

 

髙木くんが驚き交じりにつぶやき

 

「これ取れたらすごいね」

 

八乙女くんが笑顔でそういう。

 

「うん。すごいよね!頑張らなきゃなー」

 

本当、頑張らなきゃ。

とりあえず、山田さんとのやりとりを部長に報告しよう。

取引成立するといいな。

 

 

 

 

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