妄想小説Walk第46話
「あ。いのちゃんとあやちゃんだ」
有岡くんはミーアキャット状態のままそう言い「え?どこ?」という私に「あそこ」と指差して2人の位置を教えてくれた。
「本当だ」
「こっち来る!隠れて!!!」
ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる伊野尾さんとあやかさんを見て興奮したのか有岡くんはそう言うと、私の頭を押さえる。
「!?」
有岡くんも私の頭の位置と同じぐらいに頭を低くしてるから、2人の距離が近すぎて私のドキドキは止まらない。
・・・だから頭に手を置くとか反則だって!!
そんな私の気持ちにはお構いなしのようで有岡くんはワクワク顔で伊野尾さんとあやかさんを見つめている。
・・・全くもう。
どんだけワクワクしてるのよ(笑)
有岡くんがあまりにワクワクした顔をしてるので私も伊野尾さんとあやかさんに視線を移すことにした。
伊野尾さんが前を歩いてる。
それを小走りで追いかけているあやかさん。
そして。
「慧ちゃん。さっきはありがとう」
あやかさんが伊野尾さんに話しかけたのをきっかけにようやく伊野尾さんは立ち止まった。
ちょうど私たちの目の前だ。
「え・・・ああ」
「慧ちゃん。私、ずっと慧ちゃんが好きだよ」
「・・・」
伊野尾さんは振り返らずにあやかさんのお話を聞いている。
「慧ちゃんが私の事好きじゃなくても、それは変わらないと思う」
「・・・」
「この先、ずっと。」
伊野尾さんの背中にずっと語り掛けるあやかさん。
あやかさんの想いがこちらにも伝わってくる。
というか。
あやかさんには伊野尾さんのさっきの言葉、聞こえてなかったって事か・・・。
「俺は」
あやかさんに背を向けたまま、伊野尾さんがつぶやく。
「俺は、自分がどうしたいのか正直わからない」
「うん」
「冷たい態度を取ってしまうこともあると思う」
「うん」
「お前にだけ、そうなってしまうかもしれない」
「うん、いいよ」
伊野尾さんのお話を聞いているあやかさんの表情はとても穏やかだ。
「あやか」
伊野尾さんが振り向く。
「ん?」
「お前、俺色に染まれる?」
あやかさんの目を見てそういう伊野尾さんにあやかさんは一瞬驚いた顔をしたがすぐに
「・・・うん!」
ととびきりの笑顔でそう答えた。
伊野尾さんはあやかさんの笑顔を見て安心したのか穏やかに微笑み、歩き出した。
「あ、慧ちゃん待ってよ!」
その背中をあやかさんは追いかけて伊野尾さんの腕に自分の腕を絡める。
2人はそのまま歩いて行ったのだった。
2人が去った後。
私と有岡くんは顔を見合わせてこれでもかっていう笑顔を交わしハイタッチ。
これって、伊野尾さんとあやかさんはうまくいったって事だよね??
すっっっっごいいいもの見ちゃった♪
「何か、すごい幸せだね♪」
私は思わずそう言う。
あやかさんのあんなに幸せそうな笑顔見てたら本当嬉しくて、こっちまで幸せな気分になる♪
「幸せ?」
「うん!」
「よかった!」
有岡くんも笑顔。
その笑顔でまた幸せが倍増する♪
「あ!ヨーヨーつりやろうよ!」
突然だけど有岡くん、視線の先にヨーヨー釣りを見つけたらしい(笑)
「いいね!」
「行こう!」
私の言葉に有岡くんは嬉しそうにそういうと私の手を握り立たせてくれる。
そして私たちは手をつないだ状態のままヨーヨー釣りのところまで歩いた。
ど、どうしよう。
手をつないでる。
これはどういう意味なんだろう。
そんなことを考えていたら。
「よし!勝負だ!」
有岡くんは私の手をギュッと握ってそういうと、手を離して腕まくり。
・・・そっか(笑)
やっぱりそうなるのね(笑)