妄想小説Walk第45話

射的を終え、私たち6人はぶらぶらと歩いていた。
・・・のだが。

私の前を歩いていたあやかさんが急に立ち止まったので、私はあやかさんの背中にぶつかってしまった。

「あ、ごめん・・・」

私は慌てて謝ったのだが、あやかさんは前を見たまま全く動こうとしない。

「?」

私があやかさんの視線の先を見てみると、そこには背の高い超絶イケメンな男性が。

「あやか」
「裕翔・・・」

 

・・・え!?
裕翔って!!!!
イケメン高身長野郎さん!?

 

 

ファーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!

 

 

確かに超絶イケメンな上に背も高い!

 

・・・なるほど。
伊野尾さんがすねるのもわかるな・・・

 

 

「ちょっと話がしたいんだけど」

裕翔さんは真剣な表情でそう言った。

「え・・・?」
「行こ」

裕翔さんは困惑気味のあやかさんの腕をつかむと歩き出した。

 

い、伊野尾さん!

私は思わず伊野尾さんを見る。

 

「・・・」

 

すると、伊野尾さんはとても小さな声で何かを言い、小走りで2人を追いかけると裕翔さんの腕をつかむ。
そして。

「困ってるみたいだからまたにしてもらえませんか?」

と、まっすぐに裕翔さんの目を見つめて言った。
伊野尾さんと裕翔さんはしばらく見つめ合っていたが、そのうちに裕翔さんが

「・・・わかりました」

といい、

「じゃあ、また会社で」

と、あやかさんにさわやかな笑顔を残して去っていった。

 

 

 

 

「慧ちゃん、ありがとう」

あやかさんがまだまだ困惑の残る表情で伊野尾さんにお礼をいう。
それに伊野尾さんは顔を背けて

「おう」

と一言だけいい、歩き出す。

「・・・・」

その姿をあやかさんは少しの間だけ見つめていたが、すぐに後を追って歩き出した。

 

「・・・」

有岡くんと私も顔を見合わせたが、すぐに伊野尾さんとあやかさんの後ろを歩いてついて行く。
おそらく、知念さんとともさんも同じだったと思う。

 

 

 

 

・・・あやかさん、聞こえたかな・・・。

 

私は歩きながらそう考えていた。

祭りの喧騒に紛れてちゃんと聞こえたわけではないけれど、あの時、とても小さな声で言ってた伊野尾さんの言葉。

 

 

 

 

「俺のだから」

 

 

 

 

きっと伝わってるよね・・・?
伝わってるといいな・・・・

 

 

 

 

・・・ん?
あれは!!!

 

そんなことを考えながらふと見た方向に見覚えのある顔を見つけて、私は軽く興奮していた。

 

見間違いじゃなければ、あれは八乙女くんとゆかさん!!
2人して浴衣着て、仲良さそうに手をつないで歩いてる!!!

「有岡くん!!あれ!!見て!!!」

私は思わず有岡くんの腕をつかみつつ、八乙女くんとゆかさんの歩いている方向を指差す。

「!」

2人の姿を見つけた後に振り向いた有岡くんは、それはまぁなんとも嬉しそうな笑顔で目を見開いていた(笑)

「え!あの2人、付き合ってんのかな!?とうとう付き合ったのかな!?」

テンションが上がった有岡くんは可愛い(笑)

「わかんないけど、こないだ八乙女くん、ゆかさんとご飯食べに行った話をまぁ嬉しそうに話してたよ!」
「マジで!?わぁー♪すげー♪♪♪」

何か知らないけどものすごく嬉しそうだ有岡くん(笑)

 

と、その時。

「やべ!見つかる!隠れて!!」

急に有岡くんにそう言われ、茂みの中に連れて行かれた。
別に隠れる必要はないはずなんだけど(笑)
でも楽しい(笑) こういうの(笑)

 

2人で頭を低くして茂みに隠れる。
ほどなくして、目の前を八乙女くんとゆかさんが通り過ぎた。

八乙女くんとゆかさんはものすごく笑顔で、きっと普通に私たちとすれ違っても気づかなかっただろうなって思うぐらい楽しそうだった。

 

 

 

・・・何だろう。
見てるだけで幸せだ・・・♪
いい光景を見させてもらったわー♪♪♪

 

 

「いいなぁ・・・八乙女さん・・・」

隣にはミーアキャットのような風貌で2人を見送りつつそうつぶやく有岡くん(笑)
何ともかわいらしいその光景に、私は更に幸せを感じていた。

 

 

 

 

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