妄想小説Walk第24話
週明け。
有岡くんが元気に出勤してきた。
「まゆみさん、おはよ」
「あー有岡くんおはよ。もう体調は大丈夫?」
「おかげさまでバッチリ!」
「よかった♪ 」
いつもの元気な有岡くんだ。
ホッとする。
やっぱりいてくれると嬉しい。
「まゆみさん、色々ありがとね。今度お礼させて」
「ありがとう。 でも気にしなくていいよ(笑) 」
私がそう言った時
「いや、お礼しないとダメだよ」
と髙木くんが話に割り込んできた。
「あ、髙木さん、おはようございます!そうですよね!」
有岡くんの声がやたら大きくなる。
「そうだよ。まゆみさん、残業してお前の仕事やってくれたんだぞ」
「ちょっと!それ言わなくていいから!」
髙木くんの言葉を私は慌ててさえぎろうとしたけれどさえぎることは出来ず、言われてしまった・・・
もう・・・そんなこと言ったら恩売ってるみたいじゃん・・・
私が勝手にやったことなのに・・・
「え?そうなの?」
有岡くんは目を真ん丸にして驚く。
「いや、全部は出来なかったし、私だけじゃなくて髙木くんも手伝ってくれたからさ、髙木くんにお礼を・・・」
「バカお前それは言わなくていいよ!」
私の言葉をさえぎって髙木くんが言うので私は
「何でよ。事実でしょうよ」
と髙木くんに詰め寄る。
「お二人とも、ありがとうございます。俺、頑張ります!」
そんな私たちに向かって有岡くんはそう言って深々と頭を下げていた。
「おう!頑張れよ!」
髙木くんはそう言って有岡くんの頭をポンポンっとして去っていく。
「はい!」
それに対して笑顔の有岡くん。
…微笑ましい♪
いい関係性だなぁ♪
「あ、まゆみさん、今日のお昼一緒に食べない?」
笑顔の延長線上で有岡くんが言う。
「うん、いいよ」
「じゃあお昼に。」
「うん」
心が躍る。
何か、こういうちょっとした約束が嬉しい。
・・・今日も一日がんばろ♪
待ち合わせ場所で待っていたら、有岡くんが笑顔で走ってくる姿を見つけて私も思わず微笑んだ。
結局、2人ともバラバラに外出することになったので、時間を合わせて外で待ち合わせることにしたのだ。
「外で待ち合わせするのって初めてじゃない?」
有岡くんに言われて私は記憶をたどってみる。
・・・そう言えば、車で送迎したりすることはあっても、こんな街中で待ち合わせするのは初めてかもしれない。
「うん、初めてかも。」
「何か新鮮だね」
「うん、新鮮!」
私たちはそう言って笑いあい、
「じゃ行こっか」
「うん」
と言って歩き出した。
”俺、行ってみたいお店があるんだけど、そこでいい?”
待ち合わせ場所を決める連絡をしているときにそう言われて”いいよ”と返信していたけれど、どこにいくとかは全く聞いていない。
どんなお店に連れて行ってくれるんだろう♪
ワクワクしながらついて行った先にはナポリタン専門店があった。
「ナポリタン専門店とかあるんだ!!知らなかった!!」
軽く興奮してしまう。
「でしょ?ずっと気になってたんだよね!まゆみさんナポリタン大丈夫?」
え?今?(笑)
ま、いいけど(笑)
「うん、大好き! 楽しみだー♪ 」
「よかった!」
お店に入り、注文をし、出てきたナポリタンにひとしきり大騒ぎした後、有岡くんが
「お休みの日って何やってんの?」
と聞いてきた。
「え。なにしてるかなー?」
あんまり意識して行動してないから、急に言われてもすぐには思い出せない(笑)
「じゃあ今週は何やってた?」
「今週は・・・1人で買い物してたなー」
そういえば、1人で買い物してる事が多いかも。
立派なおひとりさまだわ(笑)
「え?1人?」
「うん」
「1人?」
「・・・う、うん」
やたら”1人”に食いついてくるのは何だろう?????
おひとりさまに引いてるの・・・?
「え?でもさ・・・」
「ん?」
有岡くんは1人でなにやらしばらく考え込んでいたが、小さく「ま、いいや」とつぶやいてナポリタンを食べ始めた。
・・・よくないよね。
気になるじゃん。
な、なんでしょうか・・・?
「食べないの?」
あまりに有岡くんを見つめてしまっていたせいか、目が合ってしまった私にそう言う有岡くん。
「えっ、あ、食べるよ」
私は慌ててナポリタンを食べる。
「うまい?」
「えっ、あ、おいしいよ!」
正直、気になって味はわからないけど。
「一口ちょーだい」
「えっ、あ、どうぞ」
有岡くんは大きめで一口ナポリタンを食べ、「うん、うまい」と言った後、
「俺のも食べていいよ」
と自分の皿を差し出した。
「ありがとう」
私はそれを一口食べて、「うん、おいしい」と言ったけれど、やっぱり気になって味はわからない。
おいしいのは間違いないんだけど。
本当、何なんだろう・・・