妄想小説Walk第20話
翌日。
会社から帰ろうとしたら髙木くんから
「ごめん、まゆみさん、帰りに有岡にこれ届けてくんない?」
と、A4サイズの茶封筒を渡された。
「資料なんだけどさ。出勤するまでに読んでおいてほしいんだよね。体調はもう大丈夫なんでしょ?」
「うん、多分。ゲームしてるとか言ってた気がする(笑) 」
「なんだよあいつー!じゃ仕事させよ(笑) 渡しといて」
「わかった(笑) 」
髙木くんありがとう。
いい口実が出来ました。
とりあえずLINEします。
”おつかれ。仕事の資料を渡してほしいって頼まれたから、帰りにちょっと寄ってもいいかな?”
返信はすぐ届いた。
”うん。ありがとう”
”何か欲しいものある?”
”大丈夫。ありがとう”
よし。
じゃあマスクして乗り込むか。
ピンポーン
有岡くん家のインターホンを鳴らすと、マスク姿の有岡くんが出てきた。
マスク姿だけど、顔が見れてやっぱりうれしい。
「おつかれ!これ。髙木くんから預かった。出勤までに読んでおいてほしいんだって」
「わかった。わざわざありがとう!」
有岡くん、笑顔。
まぁマスクで顔は隠れちゃってるけどね(笑)
「具合どう?」
「もう治った!でも外出禁止だからスゲー暇! 」
本当に元気そうだ。
良かった♪
「そっか(笑) ちゃんと食べてる?」
「コンビニ弁当ばかりで飽きちゃった。おいしいご飯が食べたい。あ!まゆみさんご飯作ってよ!」
え。
「わ、私が?」
「あ、でもうつしたら悪いから家には上がってもらえないもんなー」
「あ、うん、そうだね」
私もインフルにかかるわけにはいかないもんな・・・。
仕事に穴は空けられない。
「そうだ!お弁当は?お弁当作って持ってきて♪ 」
え。
無邪気に言う有岡くんは可愛い。
・・・でもさ。
私にはひとつ気になってる事があるのです・・・・。
「えっと・・・か、彼女さんに悪いんじゃないのかな・・・」
「え?」
ようやく口に出せたのはよいのだが、ものすごく小さい声になってしまったようで聞き返されてしまった。
心臓がバクバクしてる。
我ながら情けない・・・
でもここは頑張って聞かなくては。
「あ、有岡くんの彼女さんに悪いよ。い、いるんだよね?彼女・・・」
「え?いないよ?」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「いないの!?」
「う、うん、いない」
私の剣幕に多少おびえ気味の有岡くん。
「あ!だから私に頼むのね!しょうがないなー!作るのはいいけどおいしいかどうかはわかんないよ?」
やばい。
テンションが変な方向に上がってる。
「作ってくれるの?やったー♪ 」
・・・喜んでくれてる・・・
・・・頑張るよ・・・!!
意地でもおいしいものを作ってみせるよ・・・!!!!!!
「苦手なものとかある?」
「梅干しとしそ」
「わかった。明日でもいい?」
「もちろん!ありがとう!楽しみ!」
「お口に合うかどうかわからないからね!」
「大丈夫だよ」
「じゃあまた明日」
「うん、ありがとう♪ 」
帰り道。
私は無駄に興奮していた。
聞いた?
有岡、彼女いないってよ!!!
彼女いないからって私に振り向いてくれるかどうかわかんないけど、いないってだけでこんなに嬉しいものだとは!
少しだけど希望が見えた気がするもんね!
・・・やべー。
やべーーーーーー!!!!!!!
てかお弁当・・・
何にしようかな・・・。
有岡くん肉好きだからメインはお肉かな。
そんなことを考えながら私はスーパーへと入っていった。