妄想小説Walk第18話

「おはよう」

会社に着いた時、髙木くんの姿を見つけた私はいつものようにご挨拶。

「あーまゆみさんおはよ。ねぇ、今日白米商事行くよね?」

何だか髙木くんの様子がいつもと違う。
何かあったのかな?

「その予定だけど」
「有岡が体調悪いみたいで今から帰らせようと思うんだけど。送っていってもらえない?」

えっ有岡くん具合悪いの・・・?
大丈夫かな。
そういえば有岡くんが具合悪そうな所なんて見たことない・・・。

「もちろんいいよ。有岡くん大丈夫なの?病院に連れて行こうか?」
「あーその方がいいかも。お願いできる?」
「もちろん」

そっか。
白米商事と有岡くん家が同じ方向だから私が頼まれたのかな。
てか、自力で帰れない状態って・・・
本当に大丈夫?
心配だ・・・

 

私は急いで白米商事に行く準備を済ませると有岡くんのデスクへ。
有岡くんは自分の机にうつぶせていた。

 

 

「有岡くん、大丈夫?」
「うん・・・ダメかも」

有岡くんはうつぶせたままそう答える。
本当に具合が悪そうだ。

「動ける?病院行こう」

動いてもらうのには気が引けたけど、少しでも早く病院に連れて行ってあげたかった。

「うん・・・ありがとう」

そう言って有岡くんは少しの間じっとしていたがゆっくりと立ち上がった。
その時に少しふらついていたので私はすぐさま脇から支える。

「しんどかったら寄っかかっていいからね」
「ありがとう」

少しフラフラしてるけどかろうじて歩けるようだ。
しかしこんな状態でよく出勤出来たな・・・

「会社に着いてから具合悪くなったの?」
「そうなの。急に。大丈夫だと思ったんだけどな・・・」

いつもの元気な有岡くんの声じゃない。
具合悪いんだな・・・

 

それから私は有岡くんに負担をかけないようになるべくしゃべらないようにして彼を病院に連れて行った。

診察に少し時間がかかるというのでとりあえず近くのコンビニでスポーツドリンクや消化によさそうですぐに食べられそうなものを片っ端から買って待機。
診察が終わった有岡くんを連れてマンションに送り届けた。

 

そっか、ここに住んでるんだ。有岡くんは。

 

「とりあえずすぐ食べれそうなものを買っといたから、食べれるようになったら食べな」
「ありがとう」
「ゆっくり休むんだよー。何かあったらLINEして。欲しいものあったら届けるから。お大事にね」
「本当ありがとう」
「気にしないで。おやすみ」

私は半ば強制的にドアを閉めた。
早く寝た方がいいはず。
ゆっくり休んで早く良くなってもらわないと。

 

病院にも行ったし、きっとすぐに良くなるはず!
心配だけど、とりあえず仕事を終わらせてから私に出来そうなことを考えよう。

 

さて。白米に行かなくちゃ。

 

 

 

 

 

「えー大ちゃん風邪なのー?」

白米商事に着いた私は伊野尾さんに事情を説明していた。

「そうなんですよ。いつも元気な有岡くんがすごく静かでした」
「そっかーじゃあまゆみさん心配だね」
「そうですね」

・・・って。え?
いや。まさかね。

「病院にも行ったし、ゆっくり寝てればきっとよくなると思います」
「えっ病院にも連れて行ってあげたの?やさしー!」
「いやいや、その方が早く良くなるでしょ?きっと」
「いやー愛だね、愛。」

 

 

・・・。

 

 

いつもの茶化しだよね。
私が有岡くんの事好きだって気づいてて言ってるわけじゃないよね。
うん。そりゃそうだ。
と、思ってたら。

「仕事終わったらまた大ちゃん家に行くんでしょ?」

と伊野尾さん。

「え?行かないですよ?」
「行かないの?ご飯作ってあげればいいのに」
「いやいや、迷惑でしょ?呼ばれてもないのに」

何か様子がおかしくなってきた。

「そーかなぁ?喜ぶんじゃない?大ちゃん一人暮らしでしょ?」
「・・・多分。」

 

よ、喜んでくれるの・・・?
え、マジで?
あんなに伊野尾さん推してきたのに?

 

「え。伊野尾さん、有岡くん本当に喜んでくれると思います?」
「どうだろう?わかんないけど」

 

どないやねん・・・
ふりまわすなや・・・

 

「とりあえず、仕事終わったら連絡してみます」

気になるしね。

「じゃあお大事にって伝えて」
「はい」
「これ資料作っといたから目を通してもらえる?終わったら会議を始めようか」
「はい」

私は渡された資料に目を向けた。
まずは仕事をこなさなきゃ。

 

 

 

 

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