妄想小説Walk第13話
「で?まゆみさんって彼氏いるの?」
「はい!?」
伊野尾さんの言葉に私は面食らう。
「な、何でですか!?」
急に、しかも来て早々の質問がそれとかさ!
しかも有岡くんの前で言わせますか!!
「何でって。気になるから」
しれっと伊野尾さん。
「嘘だー! えーちなみに有岡くんはー?」
「大ちゃんにはさっき聞いたからいいよ」
有岡くんに話を振って逃げようかと思ったら、伊野尾さんに食い気味にさえぎられた。
ちっ。
今日はどうやら逃がしてもらえないみたいだ。
しょうがない。
覚悟を決めるか。
私はとりあえず生ビールを飲み干す。
そして。
「いません!」
とジョッキを置いた。
「有岡くん!おかわり!」
「はい!」
「いいねーまゆみさんやっぱ面白いわー(笑) 」
伊野尾さんはケタケタ笑ってる。
何なら声が裏返り気味だ。
「で?好きな人はいないの?」
「え!?ちょっとどうしたんですかー私に興味深々ですねー」
「うん。いるの?いないの?」
います。隣に。(・_・)
・・・なんて言えるかばーか!!
ここはひとつ大人の対応で。
「酔ってるんですか?もー困った人ですね」
「大ちゃん。まゆみさんにビールを。」
「はい。」
私の目の前にビールが差し出された。
酒を飲めば何でも言うと思ってるのか・・・。
いつもはそうだけどこればっかりはそうじゃないぞ!!
負けてたまるかーーーー!!!
私はビールを一口飲んでそう誓った。
「あれ。黙り込んだ。」
「あ!わかった!まゆみさん好きな人いるでしょ」
「・・・」
黙秘権。
私は黙ってビールを飲む。
頼む。伊野尾。察してくれ。←
「あーこれはいるな。俺の事好きでしょ」
「!?」
伊野尾さんがそんなことを言うもんだからびっくりしてビールを吹いてしまった。
「図星だな」
ドヤ顔の伊野尾さん。
・・・違うよ?
「何でそう思うんですか?」
「俺がまゆみさんの事好きだから」
何で顔色ひとつ変えずにそんなこと言えるんだ?この人。
「伊野尾さん彼女いるでしょ?」
「いたらデートになんか誘わないよ」
「え!?Σ(゚Д゚)」
意外とちゃんとしてる・・・
・・・でも騙されないぞ。
「こんなに顔の綺麗な人が私の事好きなわけない。」
「あはははは!まあLOVEではないけどねー」
私の言葉に伊野尾さんが笑いながら言う。
「ほら!」
「でも好きだよ。俺が好きって事はまゆみさんも好きでしょ?俺の事」
「適当だな!」
伊野尾さんの発言に有岡くんがツッコむ。
もっと言ってやれ有岡!!
「もーじゃ何でデートに誘うんだよいのちゃん」
「これからLOVEになるかもしれないじゃん」
「じゃ本気じゃないのね?」
「まだね」
「ですって」
私に向かってそういう有岡くん。
・・・コントか?
「・・・って言われても(笑) でも、誘われたのは嬉しかったです。そんなことなかなかないし」
本気じゃないにせよ、好きって言ってもらえて、誘ってもらえるのはやっぱり嬉しい。
「じゃあまた誘おー」
「俺もー」
え。有岡くんも?
「何かまゆみさん顔赤い」
有岡くん。君のせいだよ。
とは言えない。
「お酒飲んでるからね!よし!飲もう!乾杯!」
こうなりゃもうやけくそだ。
「で?まゆみさんはLOVEなの?いのちゃんのこと」
「・・・はい?」
有岡くん。君は何を言ってるの???
「こないだ本気でデートに誘われたら行くって言ってたじゃん」
「いやいや。本気で誘って下さるなら考えるって言ったんだよ?本気で誘って下さる方を無下には出来ないでしょ?」
「えーじゃあLikeなんだ」
「まぁ・・・そうだね」
「いのちゃん、いいやつだよ?」
有岡くん。君は伊野尾推しか?
「そうでしょうけど・・・」
何だろう。
私は好きな人に違う男性をすすめられているのか?
有岡くんは私が伊野尾さんの事好きになってもいいの?
・・・なんて言えるかばーか・・・・
「大ちゃんいいやつだな♪ 」
「だろ?」
何だか2人で楽しそうにいちゃついてる。
もう2人で付き合っちゃえよ。
こんな切ない想いさせてんじゃねーよ・・・